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2020年夏祭り…妖怪に変装して祭りに紛れ混んじゃおう!

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第7章 小さな少女座敷わらしと遊ぼう

「ねねねーちゃん!どうして本物の妖怪が集まっているの!?」
 四方八方どこを見ても妖怪だらけの状況に、夏菜はブルブルと震える。
「怯えるなって。ばれなきゃ何もしてこないんだから」
 隠れ身の術で闇に紛れ、光条兵器の光で送り提灯に化けて傍にいる禰子が、彼女の傍で言う。
「そうそう、妖怪が来てるってことは、あの座敷わらしも来てるってことだよな?」
 枕返ししてきた妖怪の少女も来ているはずと広場内を探す。
「座敷わらしちゃん?」
「あぁ、ちょっとお礼がしたくってさ。どこにいるんだ・・・結構混んでるし、よく見ないと傍を通り過ぎて見逃しそうだぜ」
「ねーちゃん、あそこ。おはぎを売っている子じゃない?」
 夏菜の視線の先を見ると、座敷わらしが美羽たちとおはぎを売っている。
「おはぎー、美味しいおはぎー食べにおいでー。あっ、小豆洗いちゃんお客さん来たよ」
「いらっしゃい。3種類あるけど、どれにする?」
「黒ゴマときな粉をくださいな」
「(骨女さん!?あわわっ怖いです、怖すぎます!)」
 着物を着た女の骸骨を直視してしまったベアトリーチェはガタガタと震える。
「出来たてよ」
「そうなんですか。ところで御代はどこに置けばいいんです?」
 美羽から受け取ると骨女は袂に入れる。
「ベア、御代を受け取って」
「へっ!?あっ、はい!」
「はい御代です」
「(ひぃぁああっ!!?)」
 骨の手がベアトリーチェの手に触れてしまい、今にも叫びそうになる悲鳴を飲み込む。
「あぁっ美羽さん、手が・・・。手がぁああー・・・!」
「手?お金に触ったのよね、そのバケツに水が入っているわよ」
「は・・・はい」
 妖怪に触れられた恐ろしさにベアトリーチェの身体は硬直寸前で、ギーッギーッとロボットのような動きをし、柄杓で水をすくって手を洗う。
「なぁ、もしかしてその子、社に住んでいる座敷わらしか?」
 禰子は客を呼んでいる少女がその妖怪の少女なのかと美羽に聞く。
「えぇそうよ」
「キミだろ?あたしにあんな夢を見せたのは。いっぺんお礼してやらないといけないと思ってたんだよな」
 美羽に確認すると禰子は少女に話しかける。
「お礼・・・?何で、怒らないの?」
 怒られるようなことをしたが、礼を言われるようなことをしてないようなと、座敷わらしは首を傾げる。
「いや怒るどころか、あのおかげでもっと力をつけなきゃダメだと再確認できたぜ。さんきゅーな!」
「そうなの?」
「あぁそうだ。だから怒ってないぜ」
 その言葉に安心した座敷わらしはニコッと笑顔になる。
「ちょっと連れて行ってもいいか?この子にちょっとしたお礼がしたくってさ」
「お礼?いいわよ、ちょうど休ませてあげたかったし。行ってらっしゃいわらしちゃん」
「さて俺たちも行こうかコレット」
「うん行こう」
「行ってくるー」
 休憩時間をもらい座敷わらしはずっと待っていてくれた一輝とコレット、禰子たちについていく。



「妖怪さんはコワイのかなぁ、でも座敷わらしちゃんとあそびたいからガマンです!」
 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は座敷わらしと遊ぼうと、水色ベーズのミニデフォルメオバケ柄のミニ浴衣を着て猫又に変装して探し歩く。
「いました!」
 とたたたっと少女の元に駆け寄っていく。
「ボクもごいっしょしていいですか?」
「送り提灯ちゃん。いいかな?」
「あぁ、大勢の方が楽しいしな!」
 座敷わらしの方に振り返り、禰子は光条兵器を傾けて頷いた仕草をする。
「ボクの名前はなにゃにゃ、じゃなくて・・・にゃなにゃ。あれ?言いにくいにゃ・・・」
 夏菜は座敷わらしに名前を覚えてもらおうとするが上手く言えない。
「猫娘のななにゃ!」
「猫娘のななお姉ちゃんだねぇ?」
「そうにゃっ!」
 やっと通じた夏菜がこくりと頷く。
「お菓子好きなんだろ?」
「うん、大好きー」
「そっか、じゃあ林檎飴とかどうだ?」
「わぁい!あのねぇーここの林檎飴、すっごく美味しいよー。その、のっぺらぼうのお店にあるよ」
「そうなのか。この子に林檎飴をあげてくれ」
 座敷わらしに買ってやろうと禰子が御代を払う。
「ほら、お食べ」
「嬉しいなぁ、1年ぶりに食べるねぇ」
 のっぺらぼうから渡され、ぱくつくと林檎飴が“ウギャァアアー!”と絶叫する。
「げっ。その林檎飴、生きてるのか!?」
 驚いた禰子が店主に聞く。
「生き物だからさ、生きてるよ。ほら顔があるだろ?」
「ちょっと見せてくれ。―・・・うわっ本当に顔があるぜ」
 かじられた林檎飴を見ると、目から涙を流している。
「わーっ、なんですか。林檎飴におかおがありますーっ」
 絶叫や顔があったりするそれを、びっくりした目で見る。
「蜜がたっぷり入った林檎みたいな味だよ」
「そ、そうなのか?そう聞くと美味そうに見えるけど・・・」
 身体に害がなくて美味いと聞いても、禰子は食べてみようか迷う。
「茶坊主のお兄さんはどうだい?」
「え?」
 その言葉で一輝へ女子の視線がいっきに集まる。
「あぁ、じゃあ食べてみるか。(害は無いらしいから大丈夫だよな、座敷わらしは食べたんだし)」
「うぅー食べちゃうのぉ?」
「(そっそんな俺を目で見ないでくれ!)」
 えぇーんと泣きそうな顔をする林檎飴の顔を見ないようにして食べる。
 ギャヒィイイと断末魔の後、それは息絶えてしまった。
 その光景をコレットが悲しそうな目で見つめている。
「なかなかいけるな」
「美味しいの・・・?」
「その辺のよりは、すっきりとしていていやなすっぱさや、妙に甘すぎなかったりするな」
「そ、そうなの」
「普通の林檎飴はないのか?」
 安心して食べられそうなやつがないか禰子が聞く。
「おや普通のでいいのかい」
「ねーちゃん、・・・・・・ボクも欲しい・・・・・・にゃぁ」
 顔のない普通の林檎飴があると聞いて、夏菜が欲しそうな顔をする。
「まったく仕方ないな、ほら」
「えへへ・・・・・・、おいしいにゃぁ」
 猫の真似して手を丸めてにゃーにゃーと欲しそうな仕草をし、禰子に買ってもらった林檎飴を食べる。
「あたしも普通の方をちょうだい」
「この林檎飴っておいしいです〜」
 コレットとヴァーナーも食用の生き物じゃない普通の方を買って食べてみる。
「あ、座敷わらしちゃん舌が真っ赤ですよ」
 傍で食べている少女を見てニコニコと微笑む。
「猫又のヴァーナーちゃんも真っ赤ー」
「ほんとうですか?」
「真っ赤だにゃ」
 夏菜も彼女を見てコクリと頷く。
「陣くん、座敷わらしちゃんいたよ!」
 妖怪の少女を見つけたリーズが陣の裾を引っ張る。
「数日ぶりだね!」
 猫又の格好をした彼女は、少女の手を握り嬉しそうな笑顔になる。
「なぁちょっと座敷わらしちゃんを借りてもいいか?」
 屋台を一緒に見て回りたいと陣が夏菜たちに言う。
「どうせなら一緒に遊ぶです」
 ニコニコとヴァーナーに微笑みかけられる。
「行こうー」
 リーズは座敷わらしと手つなぎ、屋台の方に引っ張る。
「オレらが変装してることはナイショにしといてくれな」
「うん、わらし言わないー。烏天狗のおじちゃん」
「お兄ちゃんが何かやってやろっか?」
 翡翠たちの焼きトウモロコシ屋に連れて行く。
「いくついります?」
「んー、3つもらおうか」
「御代はこっちな」
 陣は天狗姿のレイスに代金を渡す。
「焼けましたよ、熱いですから気をつけてくださいね」
「美味そうやね。ほれリーズ、座敷わらしちゃん」
 熱々のトウモロコシを翡翠から受け取り、少女たちに渡してやる。
「どう?座敷わらしちゃん」
「うん美味しいよ、猫又ちゃん」
 リーズと座敷わらしは美味しそうにトウモロコシを食べる。
「ふぅ、次は焼き鳥を食べるか。18本くれ、半分は塩な」
 今度はイベタムたちが作る焼き鳥を買ってみる。
「はーい。出来たての焼き鳥だよー」
 焼き鳥を詰めた袋をイペカリオヤシから受け取る。
「皮もパリパリして美味いな」
「そうだねぇ烏天狗のおじちゃん」
「さぁてお兄ちゃんはもう1本食べるか」
「茶坊主のお兄ちゃんは美味しい?」
「焼きすぎてないし、ちょうどいいな」
「(そっちはお兄ちゃんで、オレはおじちゃんかっ!?)」
 お兄ちゃんと飛ばれた一輝に陣がほんのり嫉妬する。
「そういう時もあるわよ」
 パートナーに肩車してもらっているコレットが陣を憐憫の目で見る。
「こっちにわざと炎かましてるだろてめぇえ!」
「あぁあ?てめぇが避けねぇの悪いんだろ」
「わーっまた始まった!お客さん火の粉が飛んできたら危ないから早く逃げてー」
 ふらり火とイベタムがまた喧嘩を始めてしまい、イペカリオヤシに早く逃げるように言われて店から離れる。
「ふぅー、妖怪同士の喧嘩って壮絶やね。おっ、綿飴が売ってんな」
 陣は女郎蜘蛛の店から綿飴を買ってやる。
「ボクのは葡萄味だねぇ美味しい」
「わらしは林檎味ー」
「喉が渇いてきたな、探すか」
「こっちにね、面白い飲み物があるよ。烏天狗のおじちゃん」
 さりげなく訂正しても、陣はおじちゃんと呼ばれてしまう。
「よーしお兄ちゃんが買ってやろうな。色を選ぶのか、味じゃなくて。変わった店やね」
「わらしは橙色がいいー」
「ボクは黒にしようかな?」
「おじちゃんはミックスしてみたら?」
「そうやね。座敷わらしちゃんが烏天狗お兄ちゃんに勧めてくれるならそうすっか。赤色と黄色と緑色にすっかな」
 白粉婆から正体不明の飲み物を買う。
「あたしは水色がいいわ」
「分かった、俺もそれにするか」
 一輝とコレットは水色を頼む。
「送り提灯のねーちゃん、茶色が欲しいにゃん」
「茶色?ココアみてーな色だな。それにするか」
 禰子は夏菜と同じ色の飲み物を頼む。
「最初に陣くんが飲んでみてよ」
「大丈夫なんかこれ!?」
 カップの中で渦を巻いているような色合いに、陣は思わず顔を顰める。
「コーラみたいな味やね?おわぁああ!?な、なんやこりゃぁあっ、オレの身体の色が変わっていく!」
 赤色と黄色と緑色の縞々色になってしまい大騒ぎする。
「陣くんー、はいーこっち見て」
「あぁあっリーズ、ちょっ・・・おま・・・っ!何撮ってんだ!」
 その姿を写真に撮られてしまい、ぎゃぁぎゃぁと怒鳴る。
「ボクはガン黒肌♪陣くんその信号機色、流行の最先端ー?超ヤバイッて感じーっ、かな?」
「わらしは橙色ー」
「肌の色が水色になっているわよ」
 コレットは肩車してもらったまま一輝を顔を見て言う。
「スカイブルーハートとかいうネタじゃないよな?色の選び方」
「どうかしら?フフフッ」
「わぁーボクたちは茶色になったにゃん!」
「なんか小麦色に日焼けしてみたいだな」
「こっこれ、一生このままなんかぁあ!?」
「数分経ったら戻るぞ」
「そうなんか・・・はぁ、よかった・・・」
 白粉婆の言葉に陣はほっと息をつく。
「ていうかどっかの部族みたいだったよね」
「うっさい!」
「ボクたちは頼む前に座敷わらしちゃんに聞いてたから黒にしたけどね。メロンソーダみたいな味で美味しかった♪」
「わらしのはパイナップル味ー」
「梨味だったわね」
「ミルクティーみたいだったにゃ」
「くっそぉう。何でオレには教えてくれないんだっ」
「あっちにね、水風船魚があるよ」
「へぇー面白そう。行ってみよう」
 悔しがる陣を置き去りに、座敷わらしとリーズが走っていく。
「オレを置いていくなっつーの、もうっ」
「あ、陣くん来た。ねぇ釣って」
「釣る?水風船をか?」
「ううん。水風船魚だよ」
「魚なんかあれ!?―・・・このっ、魚のくせにバカにするんかっ!」
 水の中で泳いでいる魚が後ろを向き、尾鰭をふりふりとふり釣れるものなら釣ってみろと挑発する。
「見てろーっ、釣ってやる!」
 店主の海坊主から釣竿を借り、椅子に座って釣りを始める。
「かかった!よーし・・・なっ、餌だけ持っていかれた!?―・・・ふぶっ」
 べしっと尾鰭で魚に顔を叩かれ、逃げられてしまった。
「あー残念、烏天狗のお兄さんしょっぱなから魚にバカにされるなんて滅多にないよ」
「最近こんなんばっかだマジで」
 少女2人にふりまわされたり、なかなかいいところを見せられない陣はしょぼんとする。



「つぎはどこにいきます?みんなで遊べるところがいいですよね」
 ヴァーナーは出店を見ながら、どこか遊べそうなところがないか探す。
「射的はどうかにゃ?」
「むー、わらしは射的台まで届かないよ」
「ななたちがてつだうにゃ」
「いいよね陣くん?答えは聞かないけどね」
「えっ?あ、またオレを置いていくのかっ、まったく!」
「祭りだしはしゃぐのは仕方ないって」
 背中をぽんぽんと軽く禰子に叩かれ宥められる。
「なかなか当たらないね」
「こうやってコルクをおくまでつめると、とびやすいにゃ」
 夏菜が銃口にコルクを詰めてやる。
「座敷わらしちゃんもうちょっと台の前へじゅうをだしても大丈夫ですよ」
「ひだりはなながささえるにゃ」
「もうちょっとこっちを狙った方がいいよ」
 少女の身体を夏菜とヴァーナーの2人で支え、銃の向きはリーズが調節してやる。
「落とせた!」
「やったです♪」
「わぁーい、けいひんゲットにゃ!」
「こんどはこっちにあわせるですよ」
 大きな菓子箱を狙い、コルクを当ててトスンッと箱を地面へ落とす。
「上手です座敷わらしちゃんっ」
「えへへ〜」
 残りの2つも落とし少女たちの分を全部ゲットした。
「落とさないように、バッグに入れておくです」
 ヴァーナーたちはお土産を入れるバッグにしまっていた。