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2020年夏祭り…妖怪に変装して祭りに紛れ混んじゃおう!

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2020年夏祭り…妖怪に変装して祭りに紛れ混んじゃおう!
2020年夏祭り…妖怪に変装して祭りに紛れ混んじゃおう! 2020年夏祭り…妖怪に変装して祭りに紛れ混んじゃおう!

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第1章 ドロロン妖怪に変装してお祭りへ行く支度

 葦原の長屋の広場で今宵、年に1度だけ妖怪たちが祭りをするらしいという手紙を、ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)からもらったエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)は嬉しそうに目を輝かせる。
「単なる噂だけかもしれないと書かれてますけど、きっと妖怪さんたちはいますよぉ~。こんな楽しそうなお祭り参加しない手はないですぅっ!」
「時間は深夜なのじゃな。美味しいものがありそうだから私も行こう」
 猛暑でへばっているアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)は尺取虫のようにくねくねと動き、彼女が手にしている手紙を覗き込む。
 衣装を作っているエリザベートたちを見て、祭りの存在を知った生徒たちは自分たちも行こうと何の妖怪に変装しようか考える。
 時を同じくして葦原明倫館にも、ハイナがその手紙に書いた祭りの内容を貼った掲示板の周りに生徒たちが集まり、参加してみようと衣装を選び始める。



「私の衣装はこれでばっちりですね」
 祭りに参加しようと神代 明日香(かみしろ・あすか)は超感覚で白猫の耳と尻尾を生やし、もう1本手作りの尾をつけて猫又の変装をする。
「エリザベートちゃんは用意出来ましたー?」
「まだですぅ」
「この縫い目じゃばれちゃうかもしれませんね」
「うぅ、どうしましょう~
「縫い直せば大丈夫ですよー。私が直してあげます」
 泣きそうなエリザベートの衣装の糸を取り、明日香は葦原明倫館の家庭科室にあるミシンを借りて縫い直してやる。
「わぁ~、かわいいですぅ♪」
 明日香とお揃いの出来上がった白猫の猫又の衣装を見て、ガタガタッと机を揺らして大喜びする。
「着せてあげますね」
 和室に連れて行き、手直しした衣装を小さな校長に着せる。
「ちょっと尻尾のところを直しますね」
「くすぐったいですぅ~っ」
「少しだけ我慢しててくださいね。はい、直しました」
「ありがとうございますぅ明日香さん。はうっ何を!?」
「だってエリザベートちゃんが可愛すぎるんですっ」
 あまりの可愛さに明日香はエリザベートをぎゅっと抱きしめる。
「私のことは出来れば・・・呼び捨てで呼ん欲しいです」
「うーん・・・じゃあ明日香って呼びますねぇ」
「はい♪もうそろそろ出かけましょうか」
 準備を終えた明日香はエリザベートと一緒に長屋の広場へ向かう。



「樹様、もう少しじっとしていてくださいね」
 ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)はメイク道具を使い、マスカラを使って林田 樹(はやしだ・いつき)に化粧をする。
「こうすると、ぱっちり瞳になるんですよ」
「そうなのか?」
「えぇ、このワタチがもっともーっとキレイにしてあげます。はい、これで完成です」
 にこにこ微笑みながらジーナが樹に手鏡を渡す。
「私は狐メイクじゃなくてもいいのか?」
「この妖怪は顔がキレイなのが特徴なんです、樹様!」
 鏡を見ながら妖怪のメイクとは違う感じがし、首を傾げる樹にそれがベストなビューティーメイクだと言う。
「―・・・あ、ああ、そうか。了解した」
 そこに写っている自分の顔を見て、樹は思わず照れ笑いする。
「メイクもお姿もばっちり!ワタシなんて化け狸の狸顔もばっちりですっ」
「ちょっと待て。完成度はいいけど、何で僕だけのっぺらぼうなの!?」
 のっぺらぼうに変装させられた緒方 章(おがた・あきら)が抗議の声を上げる。
「簡単すぎるっていうか、顔がないじゃん!顔がぁあーーっ!!」
「はいはい、あんころ餅はだまりやがれなのです。その鬱陶しい顔を見なくてせいせいするのです!」
「前も見にくいし、こんなの被って歩いてたら転んじゃうじゃないか」
「あ、マスク脱ぐと妖怪に化かされますよ~。それはそれで楽しそうですけどね。あんころ餅が妖怪たちにどうやって化かされるのか見てみたいです・・・フフフッ」
「―・・・くっそー、カラクリ娘め覚えてろー!」
 悔しそうに歯をギリギリと噛み締めながら、樹の手を引き広場へ向かうジーナの後を追いかけていく。



「変装完了!と言うほど、変装はしてませんが・・・」
 ちぎのたくらみで10歳頃の小さな姿になった風森 望(かぜもり・のぞみ)は、座敷わらしに変装した気になれず姿見をじっと見つめる。
「たしかこの辺りに・・・ありました!サイズもピッタリですね」
 これではばれてしまうかとしれないと、持って来た小紬をバッグから取り出して着替え、雪駄に履き替える。
「もう準備出来たかのう?」
 先に着替えを済ませた伯益著 『山海経』(はくえきちょ・せんがいきょう)が望に声をかける。
「えぇ、お待たせしました」
「額に目玉に見える飾りを付ければ、とりあえず三つ目小僧に見えるじゃろう?」
「こうすれば、もっとそれらしく見えますよ」
「なんじゃ、主?そのバッテン字の大きな絆創膏は?額につけてしまったら、せっかくの三つ目が隠れるじゃろうに・・・」
 目に似せた額につけたやつに、貼られた山海経は眉を潜める。
「アーデルハイト様を誘って一緒に行きましょう。えーっと・・・もう先に行ってしまったんでしょうか。あっ、いました!アーデルハイト様ー!」
 望は広場へ向かうアーデルハイトを見つけて駆け寄る。
「よかったら私たちと一緒に行きませんか?」
「うむ、大勢の方が楽しいからのぅ」
「では参りましょう!」
 アーデルハイトを誘い祭りの会場へ行く。



「へぇー、広場で祭りをやるのか」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は葦原明倫館の掲示板に貼ってある紙を見つけた。
 読んで見るとそこには丑三つ時に妖怪たちが年に1度、広場で祭りをやるという内容が筆で書かれている。
「ほう・・・参加条件は妖怪に仮装することか。面白そうだな、わらわたちも行くぞ!唯斗、睡蓮」
 彼の後ろからひょいっと顔を出し、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が祭りのことが書かれている紙を覗き込む。
「はーい、行きますー!!うーん、どんな妖怪にしましょう・・・。あっ、座敷わらしなんかいいですね!」
 先に変装する妖怪を決めた紫月 睡蓮(しづき・すいれん)は、衣装になる着物を取りに行こうと自宅へ走る。
「わらわはどうするかのぅ。うむ、雪女など良さそうだ」
「つーか今気づいたけど、コレって男の場合・・・あんまり選択肢なくねぇか?やっぱり鬼の格好かな・・・」
「いや・・・他にもあるはずだぞ。牛鬼や枕返しとか、小泣き爺とかだな」
 唯斗がぱっと思いついたやつの以外にもあるとエクスが教える。
「鬼の角ならともかく今からそんな角を作るにしても、時間が足りないかもしれないし。後の2つはちょっとな・・・。それに小泣き爺は格好的にチャレンジャーすぎる気がする・・・」
「そうか?良いと思うんだが小泣き爺」
「よりによってどうしてそれを勧めるんだ?」
「うーむ・・・、面白そうだからかのぅ?着替えるのも簡単だ。怪しまれたら赤ん坊のような泣き真似をすればいいだけだしな」
「もっと無理だっ。それにお笑い役になりに行くわけじゃないからな。鬼にする、鬼で決定だ。さぁて着替えに行くとするか」
 考えるように少し間を空けて言い、ニヤッと笑うエクスに対して、唯斗は全力で拒否して衣装になりそうな服を探しに全力疾走する。



「妖怪に変装しないと化かされちゃうみたいだね、何にしよう・・・。瀬織は何に変装するのかな?」
 葦原明倫館にたまたま遊びに来た神和 綺人(かんなぎ・あやと)は、館内の掲示板を見て祭りに参加してみることにしたものの、何の妖怪に変装しようか考え込む。
「このままではいけないでしょうか。わたくしのような魔道書は付喪神に似ていませんか、妖怪と同じようなものだと思うんですけど」
「うーん・・・似てなくはないけどちょっと違うかな。参加条件を見ると妖怪以外の種族は皆化かされちゃうから、魔道書も変装しないと参加出来ないみたいだよ。瀬織も何かに化けようよ」
 妖怪の姿に変装せずそのまま参加出来ないか聞く神和 瀬織(かんなぎ・せお)に、綺人は何かの妖怪に見えるように服装を変えるよう言う。
「日本の妖怪ですか・・・。あまり良く知りませんけど、私はこの巫女装束を着て鈴彦姫―鈴の付喪神に化けますね。ユーリさん衣装作りお願いします」
 何に化けるか決めたクリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)は、ユーリに服と鈴を作ってもらう。
「あぁ分かった、巫女服と鈴だな・・・」
 クリスに頼まれたユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)がメモを取る。
「綺人は何にするんだ?」
「うーん僕は・・・、季節外れだけど雪女にしようかな」
「それなら白い着物だな。瀬織はどうするんだ?」
「では、綺人も雪女に変装するようですので、わたくしも雪女に変装します」
「綺人と同じ色の着物でいいな」
「えぇ、お願いします」
「本当はミシンで縫う方が早いのだけどな・・・手縫いにするか。作るのに時間がかかるから、瀬織たちはその辺の椅子に座って待っていてくれ」
 そう言うとユーリは反物を抱えて家庭科室へ行く。
「まずは寸法通りに型紙を作らないとな」
 紙にペンで記しをつけて、その線に沿ってハサミを使って切り、3人分の着物の型紙を作る。
「針と糸は・・・困ったな。忘れてきてしまったか・・・」
 荷物の中を漁ってソーイングセットを探すものの、持って来るのを忘れたのかどこにもない。
「それって妖怪に変装するための衣装ですよね?手作りですか・・・凄いですね!私たちもそのお祭りに参加するんです!」
 祭りに参加するための着物を家に取りに行こうと、通りがかった睡蓮がユーリを見かけて声をかける。
「あぁ・・・だが糸や針を忘れてきてしまったんだ」
「そうなんですか・・・。よかったら私の持っているソーイングセットから少し貸してあげましょうか?」
「いいのか?」
「えぇ、それくらいなら」
「すまない・・・。たしか祭りに行くんだったな?俺のパートナーに渡して後ほど返したいのだが、どんな変装をするんだ?」
「座敷わらしですよ」
「そうか、伝えておく」
「素敵な衣装が出来るといいですね。それでは急ぐので、これで失礼しますね」
 睡蓮は片手を振り、自分の衣装を取りに行こうと廊下を走っていく。
「さて、これでようやく作れるな。瀬織と綺人は雪女の格好をすると言っていたから同じ色の着物だな」
 ユーリは白い反物を台の上に広げ、ハサミでシュッと切り分ける。
「次は・・・使うところまで間違って切らないように、マチ針で型紙と布を固定しておかないとな」
 針山からマチ針を取り、綺人の姉とお手伝いさんから習った方法で、切っている途中で型紙がずれないように固定する。
「なんとかキレイに切れたな。糸が針の穴に通りづらいな、糸に水を少しつけて・・・よし通った。その後は・・・着物を仮縫いをするんだったな」
 縫い針に糸を通して切った生地をざっと仮縫いする。
「本縫いをして・・・。―・・・こんなものだろうか?」
 仮縫いの糸を取り、出来上がった着物を3体のマネキンにかけ、出来栄えをチェックする。
「帯の長さも大丈夫そうだな。袖の辺りが変だな・・・、少し直すか」
 曲がった縫い方になってしまった巫女服の袖を直す。
「そうだクリスが使う鈴の飾りを作らないとな」
 金色の大きな鈴に結んだリボンの形が、青色ベースの薄い桃色の柄が入った蝶のようになる。
「さて綺人たちのところへ持っていこう」
 鈴と着物を抱えてパートナーたちが待っている和室へ向かう。
「出来たぞ、完成度はあまり期待しないでくれ・・・」
「ありがとうユーリ、これで十分だよ!」
 受け取った綺人が嬉しそうに言う。
「私たちは別の部屋で着替えて来ますね」
 さっそく着物に着替えようと、クリスは瀬織と一緒に他の部屋へ行く。
「僕も着替えよっと」
 綺人も雪女の衣装へ着替える。
「アヤ、どうですか?」
 頭に金糸の髪と同じ色の鈴をつけ、巫女服に着替えたクリスが綺人に感想を聞く。
「うん、とっても可愛いよ。よく似合ってる」
「そっ・・・そうですか?」
 素直に答える彼に、クリスは照れながら言う。
「瀬織は綺人と同じ雪女の格好だったか?その背丈だとまるで雪ん子のようだな」
「―・・・雪ん子って言わないでください。あくまでも雪女です」
 表情には出さないものの、内心ムスッとしたような雰囲気で瀬織がユーリに反論する。
「あぁ・・・、たしかそうだったな。ふぅ・・・3人分の着物を作ったから、さすがに疲れてしまったな・・・。その妖怪の祭りには興味あるんだが今回はやめておこう、3人で楽しんでくるといい。それと・・・妖怪に怪我させる・・・、なんてことのないようにな。特にクリス・・・、大人しくしておけよ。危険な妖怪もいるかもしれないからな・・・」
 ユーリは綺人たち3人で祭りを楽しんでくるように言い、特にクリスへ釘を刺すように注意する。
「それくらい分かってます!幼い子供じゃないんですから・・・」
 1人だけ厳重に注意されたクリスはムッとした表情をして眉を潜める。
「針と残りの糸を祭りに行く他の生徒から借りたんだが・・・、返しておいてくれないか?金色の髪で、青い目をした座敷わらしの変装をしている・・・葦原明倫館の生徒だ」
 縫い針とマチ針を刺した針山と残りの糸をユーリが綺人に手渡す。
「渡しておくね」
「俺が礼を言っていたことも伝えておいてくれ・・・」
「うん、分かった。時間までだいぶあるけど行ってくるね」
 ユーリに軽く片手を振り、綺人たちは葦原の広場へ向かった。
 その頃、睡蓮たちは箪笥から衣装になりそうな服を探し、着替えている。
「子供用の小さな着物がありました!ほつれているところはソーイングセットで、手直しすれば着られますね」
 ほつれている箇所を縫い、部屋で着替える。
「なぁ睡蓮。これで鬼に見えるか?」
 身体を青く塗り頭に角をつけて、トラ柄の鬼のパンツを履いて棍棒を持った姿の唯斗が、鬼に見えるか睡蓮に聞いてみる。
「牙をつければもう少しそう見えるかもしれませんよ」
「そうか・・・これならどうだ?」
 尖ったつけ歯をつけ、彼女に見てもらう。
「えぇ、それなら鬼に見えますよ」
「じゃあこの格好で行くか」
「えらく気合の入った格好だな?―・・・っ」
 白い着物を着て雪女の格好になったエクスが笑いを堪える。
「日中は暑いからな。日が沈んだ頃に行くか」
 エクスたちは日が沈むのをまとうと、扇風機の風にあたりながら涼む。



「この前、温泉に入りに行った葦原の長屋の広場で、妖怪の祭りがあるんだってさ。行ってみようぜ!」
 七那 禰子(ななな・ねね)七那 夏菜(ななな・なな)を祭りに誘う。
「妖怪の・・・お祭り?」
 突然言われた彼女はきょとんと首を傾げる。
「妖怪が祭ってあるお祭りだそうだぜ。今日そのお祭りをやるんだ」
「そうなんだ?」
「でも、そこに参加するには条件があるんだって・・・」
「じょっ・・・条件って何・・・」
 突然小声で言う禰子に、夏菜も小さな声音で言う。
「妖怪の格好をしていかないと、会場の広場に入ってはいけないんだってさ」
 夏菜が怖がらないように妖怪に仲間だと思わせる格好をして参加しないと、妖怪に化かされることをわざと伏せて言う。
「分かったよ、ねーちゃん」
「じゃあ夏菜は猫又の変装な。尻尾をつけてやるから待ってろ・・・。出来た!着てみろ」
「うん・・・でもちょっと恥ずかしいよ、これ」
 尻尾がスカートを持ち上げてしまい、夏菜は恥ずかしそうに顔を俯かせる。
「耳をつけて・・・完成っと。あたしは送り提灯に化けて傍にいるぜ」
 禰子は隠れ身用に羽織る布を墨で黒く染める。
「どうせなら祭りで夕飯を食べようぜ。始まるのは丑三つ時だからそれまで、葦原明倫館の和室を借りてのんびりしてようぜ」
「そうだねぇ。どんなのがあるのかな?」
 夏菜はわくわくしながら夜になるのを待つ。



「屋台を出すにしても地球人だってばれると、妖怪たちに化かされるんだよね。うーん何に化けようか・・・」
 椎名 真(しいな・まこと)は妖怪の本を見ながら、何に化けようか考え込む。
「そうだなぁ、送り犬あたりにでも・・・」
「にーちゃんはこれがいいー!」
 本に載ってる豆腐小僧の絵を指差し、彼方 蒼(かなた・そう)は尻尾をふりふりと振りながら真を見上げる。
「―・・・まぁ、それなら三度傘被って袈裟を着て、豆腐を笊に乗せて持つくらいで簡単に化けられるか」
「げたもね、はいっ」
 包みから出した下駄を真に手渡す。
「ありがとう蒼。たしかこう着るんだったかな」
 着方が間違っていないか、真は鏡を見ながらチェックする。
「じぶんはらいじゅー」
 蒼は背にエンジェル付け羽をつけ、ライトニングブラストで放電してみせる。
「でみせのばしょとりにいこー。はやくいかないと、いいところなくなっちゃうよーっ」
「蒼、はしゃぎすぎてこけないようにねー!」
 とったたと走っていく蒼の後を、材料の入ったカバンを抱えた真が慌てて追いかけていく。



「―・・・帯の締め方はこれで大丈夫だろうか?」
 璃央・スカイフェザー(りおう・すかいふぇざー)に妖怪だらけの夏祭りに行きたいと誘われ、透玻・クリステーゼ(とうは・くりすてーぜ)は雪女の変装をしようと着物の帯を締める。
 通っている明倫館に祭りの貼り紙がしてあり、それを見た彼女は1度くらいは行っておこうかと祭りに行ってみることにしたのだ。
「きつすぎますね。それでは屋台であまり食べられませんよ」
 璃央が璃央の帯を締め直してやる。
「これくらいが丁度いいですね」
「あぁ・・・、ありがとう」
「透玻様の着替えは無事に済みましたけど、私は何の格好をしましょうか・・・」
「それなら妖狐はどうだ?着物はこれでいいな」
 自分の変装が決まっていない璃央に、透玻は箪笥から取り出した黒い着物を、黒い狐耳と尻尾と一緒に手渡す。
「ありがとうございます」
 受け取った璃央はさっそく着替え、黒い妖狐の姿になった。
「このつけ方なら不自然じゃないですね。着物のサイズもピッタリです」
 姿見で妖怪たちに変装がばれないかチェックする。
「祭りが始まるまで、まだ時間がありますね」
「そうだな、早く夜にならないだろうか・・・」
 支度を終えた透玻たちは椅子に座り、夜になるのを待つことにした。



「口裂け女ってこんな感じかな?」
 葦原明倫館の更衣室を借りて、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は妖怪の姿に変装する。
 髪をおろしドレスのような赤い服を着てハイヒールを履く。
「・・・で、これは何じゃ?」
 子供用の丈が短い無地の着物を着せられてたミア・マハ(みあ・まは)は顔を顰める。
 手には小豆が入った笊をもたされている。
「どう?ボクのコーディネート」
「何の妖怪じゃ?」
「小豆洗いだよ」
「ほぅ・・・」
「これで後は深夜になるのを待つだけだね」
 レキとミアは和室で時間になるまでゆっくりと待つ。



「ここなら帽子と仮面をつけても大丈夫だよね。浴衣を着て箒を持って歩いていても不自然じゃないけど、さすがにこれはね・・・」
 葦原への入り口前で五月葉 終夏(さつきば・おりが)は、縁の編み込み部分を解いてぼさぼさにしたスローハットを被り、呪術師の仮面の半分に割り口の部分をさらに割った仮面を被って片側だけ顔を隠す。
「広場の方はこっちだったかな?」
 祭りの会場となる広場を探し歩く。