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【ろくりんピック】駆け抜けろ、2人3脚トライアスロン!

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第5章 応援合戦!


 マラソン、それは本競技の最後を飾る種目にして最も白熱する種目。
 実はコース沿道において、記録には残らない戦いが繰り広げられていたのです。


「応援合戦しないか?」

 自転車種目も、半分を過ぎた頃。
 マラソンコースでの応援希望者達は、いまかいまかと選手の到着を待ち望んでいます。
 そんな両チームの応援団員達へ、三船 敬一(みふね・けいいち)が1つの提案をしました。
 敬一の申し出は、瞬く間に応援団員へ、そして応援責任者へと伝達されていきます。

「うむ、面白いですね……受けて立ちましょう!」

 満を持して現われたのは、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)
 白い仮面が特徴の、東シャンバラチーム応援団・応援団長です。

「そうこなくっちゃ、応援でも負けないぜ!」
「臨むところです」

 こうして、東西応援合戦の火蓋が切って落とされました。
 敬一と別れたクロセルは、東シャンバラチームの応援団のもとへ。

「トライアスロンは、体力はもちろん、精神力が必要です。
 ゆえに俺が応援団をシッカリとマネージメントしなければ!」
(ハツネさんも直さんもがんばってくださっているのですから)

 『光る箒』にまたがると、ふわっと高く舞い上がりました。
 手には『メガホン』を持ち、上空から応援を指揮します。


「イーシャン、ファイトだぜーっ!
 ゴーゴーイーシャン!
 がんばれがんばれイーシャン!
 オォー!」

 東シャンバラチーム応援団の楽器係は、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)です。
 持参した2つの『メガホン』でもって、皆がまとまれるようにリズムをとります。

「東シャンバラチームの応援団として、仲間を応援するぜ!」

 ときには『メガホン』を口にあて、誰よりも大きな声で応援を盛り上げるベア。
 その統率力たるや、なかなかのものです。

「さぁご主人、こっち来て一緒にやりましょうぜ!」
(初めて着る衣装なので、ちょっと照れますね……変でなければよいのですが)

 ベアに手招きされ、すすす……と前へ出るソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)
 可愛らしいチアガールの衣装に身を包み、ポンポンを持っています。
 同じくチアガールな応援団員、そして助っ人のハツネとともに、踊りと声で応援合戦を引っ張ります。


『さぁ、いよいよ中継所へと自転車種目の選手達が入ってきました。
 これから最終種目、マラソンへと移ります。
 え……おや、そうですか。
 ただいま入りました情報によりますと、マラソンコース沿道にて応援合戦が繰り広げられている模様です。
 各チーム応援団の方々や観客の皆さんも、ぜひ参加してくださいね〜!』

 ということで、公共の電波で放送された結果、自転車種目に回っていた応援団員も駆け付けてきました。
 東シャンバラチームには、応援団長そっくりな格好をした直の姿も。

(やっぱり俺の思ったとおりでした。
 直さんは格好や見た目などの特徴が俺に似ていますからね、応援団長の衣装を着てもらって正解でした!)
「さあ、応援団長2倍で東側選手の士気も飛躍的に高まること間違いありません!」

 直の隣に降り立ち、肩を組むクロセル。 
 応援合戦は、各チームの選手に対する応援としてますますの盛り上がりを見せます。


((優、聖夜……私の想いが届きますように))

 祈るように、胸の前で両手を組みました。
 水無月 零(みなずき・れい)陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな) の願いは、ただ1つの同じもの。

「最初はどういう心境の変化かと思いました……てすが、選手として参加する優を見ることができると思うと嬉しくなりますね」
「うん、だってこんなチャンス滅多にないわよ!」

 いつもは進んで目立とうとしない契約者が、競技に、しかもマラソンに参加しているのです。
 刹那も零も、驚きとともに嬉しさを感じていました。

「「優、聖夜、がんばって〜」」

 右手にメガホン、左手に西シャンバラチームの旗を握り締め、精一杯の声援を飛ばします。
 2人への応援では、1番になること間違いありません。


「やっぱり選手としては、自分を見てくれている人がいることを実感できると、がんばろうって気持ちになれるかと思います。
 なので、東シャンバラチームの参加選手の顔と名前を、事前によく覚えてきましたっ!」
「よっしゃ〜じゃあいくぜ!」
「ラルクさん、ふぁいとっ、ですよー!
 『闘神の書』さん、障害には気をつけてくださいねー!」

 元気な宣言をするソアに、団員達の大きな拍手が送られました。
 ベアの『メガホン』に合わせて、みんなで名前を大合唱です。


(面倒ですが、三船が応援をするのではしかなありませんね。
 一緒に応援しましょう)

 腕を組み、契約者を見つめる白河 淋(しらかわ・りん)
 もたれていた場所から離れ、歩くのかと思いきや……若干浮いています。
 まさかのスキル『レビテート』発動には、淋の気持ちがこめられていました。
 ゆえに応援合戦には参加せず、応援団を補助することにしたのです。

「はい、どうぞ。
 どうぞ、少し休んでください」
「お、やってるな〜俺にもくれ!」
「構いませんけど……あ、費用はすべて三船もちですからね?」
「なっ、何だって!?」

 冷たいスポーツジュースを配っていた淋のもとへ、敬一がやってきました。
 1本手渡しますが、おまけは衝撃の告白!
 叫びすがるも聞き入れられず、敬一のお財布を軽くすることが確定したのです。

「えぇい、こうなったらヤケだ!
 必殺、『渾身の応援』っ!
 選手達のためにも死ぬ気で応援するぜ!)

 ありったけの力を、声援に載せる敬一。
 最後まで走りきり、そして優勝してもらうためにも、選手達の士気を上げます。
 ちなみに。
 敬一と淋はこのあと、敬一の必殺サポート『給水所設置』で選手達の喉を潤すために働く予定です。


「いくよっ、いしゅたん!!」
(いしゅたんが選手登録してればよかったんだけど。
 他の人は調整がつかなかったし、パートナーの真奈は背が違い過ぎて2人3脚はツラいし。
 仕方なかったんだけど……)
「トライアスロンの行き着くところは気力と根性!
 だったら応援も意味あるよね?」

 選手達が進むとともに、応援合戦も少しずつゴールへと移動していきます。
 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)も、中間地点までやってきました。

「マラソンの中盤って、一番つらそうだけど正念場だよね!」
 こういうところでの応援って結構重要だって、あたし自身も体感したことがあるんだよ!」

 自身の経験からも、ミルディアは応援団員へ訴えます。
 うんうんと同調する者もあり、へぇ〜っと感心する者もあり。
 おおむね皆、この場所での応援が大切だと思ってくれたみたいです。

「よぉ〜し……ゴールまでもうちょっとだよ!
 がんばれーーー!!!」
「もぅちぃと根性みせたらんかーい!!!」

 大きく息を吸って〜吐く!
 声援は、選手達へミルディアの『心』を伝えます。
 続くイシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)の叫声は、コースの反対側へ届くかのごとく。

「い、いしゅたんっ!?
 もう少し言葉に気を付けようよ〜!」
「だってみるでぃが言ったんだよ、根性勝負なら素の言葉で声援を送った方が伝わるもん♪
 だから、汚くてもいいから、伝わるように声援を送るんだよ!」

 契約者の台詞に、ミルディアはちょっと戸惑います。
 しかしイシュタンにも、それなりの理由がありました。
 きちんと説明して、言葉を切り……肺へ息を吸い込みます。

「はぁ〜っ……てめぇら東シャンバラの看板しょってんだらぁ!?
 だったら背負ってるモンの重さわかってんだろがぁ!!」

 腹の底から出した大声に、前をとおり過ぎた選手達も振り向きます。
 怒るかと思いきや。。。
 親指を立てて、満面の笑みを返してくれました。
 きっと、イシュタンの気持ちも伝わったのでしょう。


「負けてらんねぇぜ、エミサっ!」
「任せてねっ!」

 対岸の応援の迫力に、このままではまずいと考えたエレム・ロンジェット(えれむ・ろんじぇっと)
 エミサ・シールエル(えみさ・しーるえる)に、作戦実行を指示します。

(エレムに向かって応援……違った、選手に向けてアリスキッスを乱れ打ちよね!)
「ふれぇ、ふれぇ、が・ん・ば・れ!
 ちゅ」
「はい、どぞ。
 はい、どぞ。
 はい、どぞ」

 エミサは、心をこめてスキル『アリスキッス』を連発しました。
 エフェクトを上手く誘導して、選手へと贈るエレム。
 少し、選手達の顔色がよくなったような気がします。

「どんどんいくよ、エレム!」
「あ、とりあえずもういいぜ」
「じゃ……じゃあ……」
(エレムに……)
「どうしたんだ?」
「ぁ、何でも、ないもん!」

 西シャンバラチームの全選手達が、中間地点をとおり過ぎました。
 エレムはエミサに作戦終了を伝えるが、エミサは何か言いたそう。
 優しく問いただすも、恥ずかしがってぷいっとそっぽを向かれてしまいました。
 『妹』の行動を、微笑ましく思うエレムでした。