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少年探偵と蒼空の密室 A編

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少年探偵と蒼空の密室 A編

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ANSWER 23&10 ・・・ 模倣者&殺人者の問題  火村 加夜(ひむら・かや) 三船 敬一(みふね・けいいち)霧雨 透乃(きりさめ・とうの)

V:蒼空学園のクイーン・ヴァンガード火村加夜です。私はマジェスティックの住人に変装して、街外れの立ち入り禁止地区を囮捜査することにしました。
今回の連続殺人事件を私なりに考察したところ、五つの殺人現場を線で結ぶと、いびつながら、五芒星ができるのを発見しました。この事件には、やはり魔術的ななにかが、関係しているのではないでしょうか。
 模倣犯もしくは、本当の犯人の標的を演じながら、私は、五芒星の中心部にあたるこの地区を調べてみようと思います。

 変装はしていても、トレードマークの本を小脇に抱えた加夜が、薄暗い小道を歩いてゆく。人気のないさびしい地区だ。
 加夜の少し先には、ヤードの制服警官が歩いている。彼は、マジェスティックを巡回パトロール中らしい。
 !
 警官に、人影が重なった。悲鳴をあげる間もなく、警官が倒された。
 加夜の作戦通りに模倣犯があらわれたのだ。

 加夜を見守っていたパートナーの金烏 玉兎(きんう・ぎょくと)と、空飛ぶ箒に乗り、上空で警護していた白河 淋(しらかわ・りん)。加夜と連携し、捜査にあたっている、パワードスーツを着用している三船敬一によって、模倣犯、残虐非道を極めし少女、月美 芽美(つきみ・めいみ)はその場で捕れられ、身柄を確保された。
「隠れてみていて心配したぞ。結果をだせたんだし、囮捜査はもうやめにしようではないか」
「加夜さんの危険が高いのは事実ですね。今回は、こちらの人数が多かったので、よかったですが、次もこうとは限りませんからね」
「スーツを着てきて正解だったな。火村さんにケガをさせるわけにはいかないからな」

「芽美さんは、捜査メンバーの一員ですね。パートナーの霧雨透乃さんもこの付近にいるのですか?」
 加夜に尋ねられても、芽美はうつむいて、返事をしない。捕らえられたのが、悔しいのだろうか。
「発見が早かったおかげで、彼は助かりそうだ。いま、救護班も呼んだ」
 三船たちの応急手当を受け、警官は一命をとりとめた。
「連続殺人、暴動、模倣犯、この事件では無用の血が流れすぎた。俺はこれ以上、一人足りとも殺させねぇ」
 三船は、力強く拳を握りしめる。
「芽美ちゃん。捕まっちゃったんだあ〜。四対一で、パワードスーツも相手じゃ難しいよね」
 芽美のパートナーの霧雨透乃がやってきた。透乃は、周囲のものにあいさつもせずに、芽美に話しかける。
「せっかく、計画したのに残念だね」
「ごめんなさいね」
 芽美も、透乃にだけは言葉を返す。
「これから、ヤードに連行されて、取り調べを受けるんだね。私たちはただ殺しをしに、ここにきただけなのに、一人も殺せないで、捕まって終りじゃ、芽美ちゃんがかわいそうだよね。私と芽美ちゃんの二人なら、この四人に勝てるかな」
「どうかしら。やってみましょうか」
 透乃たちは、大胆不敵に、相手の前で作戦会議をした。
「よ〜し、やっちゃうよ〜!」
「ふふふふ」
 透乃は、芽美を縛っていたロープを断ち切り、三船に真正面から殴りかかる。芽美も、三船に襲いかかった。
 パワードスーツの三船も、まさかの特攻に、驚き、すぐには反撃できない。
 しかし、加夜、玉兎、淋に背後、側面から攻撃を受け、やはり透乃たちに勝ち目はないように思えた。
「パワードスーツだけでもやっつけるよ〜」
 それでも、透乃は怯まずにむかってゆく。
「透乃ちゃん。芽美ちゃん。どいてください!」
 上空から声が響いた。その場にいたみなが空を見上げると、小型飛空挺が、急降下してくる。
 乗っているのは、透乃のパートナーの緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)だ。陽子の飛空挺はまっすぐに三船に体当たりした。
 BoooM!
 爆発が起こり、炎と煙があたりを包む。

「私なんか、いない方がいい人間で、なんの役にも立ちませんけど、でも、でも、もしかしたら、透乃ちゃんと、芽美ちゃんの力になれるかも、と思って、ここへきてしまいました。ごめんなさい」
「助かったよ。陽子ちゃん。陽子ちゃんがこなかったら、私も芽美ちゃんも、きっと、捕まってたよ」
「本当に、本当に、私は役に立てたんですか?」
「疑り深いわね。陽子ちゃんは、私達を助けてくれたのよ」
「本当に、私が、みんなを」
 最近、失敗続きで自信を失いかけていた陽子は、仲間たちの感謝の言葉をかみしめていた。
 陽子に、優しい笑みをみせる透乃と芽美。
「あ。透乃ちゃんも、芽美ちゃんもひどいケガ、血がたくさん流れてる。私がパワードスーツに、突っこんだから」
「違うよ。その前の戦いの傷だよ。こんなのかすり傷だって。どこか人気のないところに隠れて、休もう」
「そうよ。少し休めば、また殺せるぐらいの元気はでるわ」
「透乃ちゃん。芽美ちゃん」
 三人は傷ついた体を互いに支えあい、現場を去ってゆく。

「三船さん。大丈夫ですか?」
 加夜は、飛空挺の直撃を受けた三船の身を気づかった。
「俺は、平気だ。負傷者の警官や、他のみんなは無事か」
パワード・スーツは大破してしまったが、三船に大きなケガはなかった。
「お巡りさんも、みんなも、大丈夫みたいです。霧雨さんたちの件をヤードに連絡したら、私は捜査を続けるつもりですが、三船さんはどうしますか」
「無論。続けるさ。俺は、このバカげた騒ぎを終わらせるために、ここにいるんだからな」
「私は、服装を変えて、今度は、マジェスティックのある重要人物に扮してみようと思います。また、罠にかかってくれる人がいればいいんですが」
 加夜たちの捜査は、まだ終わらない。