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救助隊出動! ~子供達を救え~

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救助隊出動! ~子供達を救え~

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第9章「決戦」
 
 
 篁花梨達がいる洞窟の前に、長原淳二とイルマ・レストが乗った小型飛空艇が戻ってきた。それをミーナ・ナナティアが出迎える。
「お帰りなさい、淳二。透矢さん達には会えましたか?」
「ああ、隆寛さんが先導して来てくれるよ」
「私のHCのマッピングデータもお渡ししておきましたから、もうすぐこちらに来られるかと」
 淳二の飛空艇から降りながらイルマが答える。それを聞いてミーナは安堵の笑みを見せた。
「良かった……。上から捜していた方々もほとんどこちらに来てますし、無事に子供達を村に帰せそうですね」
「油断は禁物だ、ミーナ。村に連れて行くまで油断は――」
「――! 淳二さん!」
 イルマがどこからかの殺気を感知し、叫ぶ。次の瞬間、淳二が避ける前にいた場所を銃弾が通過していった。
「助かった、イルマさん。……敵が来たか」
 淳二達が武器を構える。そこにならず者のリーダーが現れた。後ろには多数の手下を引き連れている。
「ちっ、避けやがったか。……まぁいい。ガキどもはあの洞窟の中か。へへっ、俺達にたてついた事を後悔するんだな……やっちまえ!」
 リーダーの号令でならず者達が襲い掛かってくる。その声で他の味方も襲来に気がつき、洞窟の前は乱戦と化した。
「イルマさん、ここは俺達に任せて。すみませんが洞窟に知らせてきて下さい」
「分かりました、お気をつけて」
 イルマが洞窟へと駆ける。それを守るように淳二とミーナが道をふさいだ。
「ここを守りきれば俺達の勝ちだ。……行くぞ、ミーナ」
「はいっ」
 
 
「喰らいなっ!」
 ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)がならず者達に等活地獄を放つ。数人の敵が吹き飛ばされ、なんとか耐えた者にも鬼崎 朔(きざき・さく)が襲い掛かった。
「はあっ!」
 強烈な槍の一突きを喰らい、敵が崩れ落ちる。一撃を放った朔の表情は怒りに満ちていた。
「不愉快な連中だ……。将来ある子供たちを誘拐しようとするなど……言語道断! 私は子供達を護る為ならば……修羅となり、我が怒りでもって殲滅してくれよう」
「えぇ、子供達がいようと関係無く襲撃するような者達です。慈悲などかける必要はないでしょう」
 怒気を武器に乗せるかのように槍を構える朔に九条風天が同意する。そんな二人の背中に、月読 ミチル(つきよみ・みちる)が拍手をした。
「くすっ、子供達の為にそこまで真剣になれるっていい事だわ、朔。あなた、将来いいお母さんになれるわよ♪」
「――なっ!?」
 予想外の一言に朔の怒気が霧散する。
「な、なななっ、何を言っている!」
「フフッ、赤くなっちゃって」
「あ、赤くなどなっていない! 私はただ、こいつらが許せないだけで――」
 顔を真っ赤にしながら説得力の無い事を言う朔。そこにカリンが追い討ちをかけた。
「でも、ちゃんと子供達の事を考えてるよね、朔ッチ。石突き当ててたし」
「うっ」
 カリンの指摘通り、朔は先ほどの敵に槍の穂先を突き刺さず、反対側の石突きで攻撃をしていた。
「と、とにかく! 私達の目的は子供達を護りきる事なんだから、どんどん相手を戦闘不能にしていくぞ!」
「はいはい、朔ッチ」
 気を取り直して武器を構えなおす。その時、近くの木の裏から笑い声が聞こえてきた。
「ククク……子供達の味方、か。頼もしいねぇ」
「! 誰だ!?」
「俺かい? 俺はそういうくだらねぇモンをぶっ潰してぇ野郎さ」
 そう言って現れたのは白津竜造だった。他のならず者達とは違う出で立ちに朔達が警戒を強める。
「ガキどもを、大切なものを護る……ハッ! 正義の味方様で結構な事だな。……来いや正義。外道が相手してやるよ!」
 竜造が光条兵器の長ドスを構える。風天が抜刀の構えを見せ、それに対峙した。
「悪鬼外道、誅滅すべし……。だが、一つ訂正させてもらおう。ボクもまた、悪から奪う者……決して正義などでは無い」
「私もだ。……だから外道よ。私達『悪』が、お前を討たせてもらう」
 風天と朔、二人の『悪』を相手に竜造が笑みを浮かべる。
「『悪』か……クク、上等だ。正義だろうが悪だろうが、まとめてぶっ潰してやるぜ!」
 朔が踏み込み、初手を繰り出そうとする。だが、それより早く竜造がアシッドミストを使った。限界まで濃度を上げた酸の霧を隠れ蓑に、奈落の鉄鎖で重力に干渉する。
「くっ!」
「まだまだ! 喰らいやがれ!」
 更に周囲の木や枝を切り払い、それをサイコキネシスで飛ばす。大小様々な木々が二人に襲いかかろうとしていた。
(アーティフ!)
(ああ、任せろミチル……!)
 ミチルの中に宿る夫婦の魂、そのうちの夫、アーティフの魂が妻であるミチルの呼びかけに応えて表面に出てくる。そして素早くライフルを構えると、朔に襲い掛かる木々を次々と散らしていった。
(さすがあなた。素敵な腕前だわっ♪)
(さて、私達が護るべき子供達の為に、力を揮うとしようか)
 二人を助けたのはアーティフだけでは無かった。風天のパートナーである坂崎 今宵(さかざき・こよい)も正確無比な射撃で風天に向かった大木を撃ち抜いた。
「殿、お怪我はございませんか?」
「大丈夫ですよ、今宵。あなたのお陰です」
「勿体無いお言葉でございます。私が背中をお守りしますゆえ、殿は思う存分前へとお進み下さいませ!」
「えぇ、頼みますよ。では……参ります!」
 木々を盾にした竜造に対抗するように、風天も木々を遮蔽物として利用しながら接近して行く。そして竜造を捉えると、抜刀の構えから攻撃を加えた。
「へっ、甘ぇよ!」
 竜造が一太刀目をかわす。だが――
「甘いのはそちらだ!」
 素早く抜いた二刀目からの疾風突きが襲い掛かる。竜造はとっさに抜いた短刀で受け止めるが、威力を殺しきれずに身体ごと飛ばされてしまった。
「うおっ! ……へへ、やってくれるじゃねぇか。楽しくなってきたぜ!!」
 竜造が封印解凍を使いながら斬りかかる。風天は刀で受けたものの、限界以上の力を乗せられた一撃に数m下がらされる。
「ハハハハハッ! さあ、殺りあおうじゃねぇか!」
「なりふり構わぬか……。いいだろう、相手になってやる」
 再び納刀し、抜刀の構えをとる。更に朔も新たに槍を構えなおしていた。
「私を忘れてもらっては困るな。これ以上、貴様の好きにはさせない」
「ハハッ! いいだろう、二人だろうが三人だろうが、まとめてかかってきやがれっ!!」
 
 
 四谷大助と御凪真人は、パートナー達とともにならず者の手下達を相手にしていた。
「あなた達みたいなチンピラを通すわけにはいかないわ、下がりなさい!」
 グリムゲーテ・ブラックワンスがランスバレストで敵をなぎ倒す。それをカバーするようにセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が盾で敵の攻撃を防ぎ、ライトニングランスでお返しをする。
「私達を相手にしようだなんて、甘いのよ!」
 二人の女聖騎士が次々とならず者達を叩き伏せる。それを真人が感心したように見ていた。
「グリムさんはさすがですねぇ。大勢の敵相手でも怯まずに戦ってます」
 真人の言葉に大助がため息をつきながら答える。
「まぁその分色々と巻き込まれるんだけどさ。それに、そっちのセルファだって凄い活躍だと思うけど?」
「確かに行動力はあるんですけどね……。その分フォローが大変なんですよ」
「あー、分かる分かる。大抵厄介事はこっちに来るんだよね」
「…………」
「…………」
「お互い大変ですね……」
「……そうだね」
『…………はぁ』
 二人のため息が重なる。そこに元凶ともいえる二人から声がかかった。
「ちょっと真人! 真面目に戦いなさい!」
「大助もボサっとしてるんじゃないの!」
『……………………はぁ』
 なおもため息をつく二人の所に、身軽さを活かして奇襲をかけていたトーマ・サイオン(とーま・さいおん)が戻って来た。
「ただいまっと。……あれ? にいちゃん達、どうしたの?」
「……いえ、何でもありませんよ」
「ふーん? まぁいいや。オイラ今度はねぇちゃん達を手伝ってくるね」
 そう言ってトーマは素早く森へと隠れた。そのまま敵の背後へと回り、セルファとグリムゲーテに気をとられた敵を一人ずつ倒して行く。
「俺達も行きますか……」
「うん……行こうか」
 トーマの純粋さを少しうらやましく思いながら、真人と大助は敵陣へと向かった。
 
 
「きゃー☆ 助けてー」
 木々の隙間を巧妙に抜けながら、ユーリエンテ・レヴィ(ゆーりえんて・れう゛ぃ)がならず者達から逃げ回っていた。男達は天然の障害物に苦戦しながらも子供姿のユーリエンテを追いかける。
「くっ、この。待ちやがれっ!」
「やーん、追ってこないでー☆」
 どこか楽しそうに逃げるユーリエンテに疑問を抱いていれば良かったのだろうが、男達は必死に追いかけるだけだった。
「はぁっ、はぁっ。……へへ、追いついたぜ」
「どうしよう、ひどい事されちゃう〜。――――おじさん達が☆」
「あん?」
 次の瞬間、頭上の木に登って待ち構えていた沢渡真言と葉月可憐の銃が火を噴いた。さらにアリス・テスタインが木の枝から飛び降り、剣を振りかぶる。
「えいっ!」
「がっ!」
 奇襲を受けた男達はなすすべも無く倒された。相手が沈黙したのを見て、真言と可憐が木から下りてくる。
「ご苦労様です、ユーリ。これで少しは他の方も楽になるでしょう」
「えへへ〜☆」
 ほめられて嬉しそうなユーリエンテ。その横では可憐がならず者達の身ぐるみを剥ごうとしていた。
「か、可憐? 一体どうするのですか?」
「もちろんお仕置きですっ♪」
 アリスの質問に嬉しそうに答える可憐。結局男達はぎりぎりまで剥いだ後にロープで木の枝からぶら下げられる形になった。
「そ、そこまで剥ぐんですかっ!?」
 と言うのがお仕置き中のアリスの感想だった。そんな状態の男達が多数ぶら下げられている光景は――正直、見たい物では無かった。
 
 
 乱戦のさなか、洞窟の前に一人の女の子が現れた。それに気がついた神代明日香は中にいる子供達の一人が出てきてしまったのかと思い、慌てて近寄る。
「だ、駄目ですよ〜。お外は危ないから、中で大人しくしていて下さいね〜」
 その声に気付いた朝倉千歳がこちらにやって来る。
「どうした、何かあったのか?」
「あ、千歳さん。女の子が一人、出てきちゃったみたいなんですぅ」
「何?」
 千歳が女の子を見る。だが、先ほどまで子供達の相手をしていた千歳にはこの女の子――ましてや古代中国の貴族服のような格好をしている――は見覚えが無かった。そして、その袖口から光る物を見つける。
「――近づくな!」
「え?」
 女の子に手を伸ばそうとした明日香を突き飛ばし、刀を抜く。その刀身が女の子――辿楼院刹那の短剣を受け止めていた。
「惜しいのぅ。あと少しで首に突き刺さっていたものを」
「貴様、何者だ?」
「ふふ、言わずとも分かるじゃろう」
 刹那が短剣を引き、軽快な動きで素早く距離を取る。
「……ならず者の仲間か」
「こちらも仕事なのでな。悪く思わぬ事じゃ」
 そう言って刹那が木の上に跳び乗る。そして二人の前から姿を消すと、声だけが響いてきた。
「ククク、いつどこから狙われるか分からぬ恐怖に怯えるのじゃな。せいぜい楽しませてもらうぞ」
 千歳と明日香が殺気を探る。だが、刹那を見つけ出す事は出来なかった。
「た、大変です! 千歳さん、どうしましょう」
「とにかく周囲に気を配っておくしかないだろう。他の皆にも伝えて、特に入り口の守りを堅くする事にしよう」
「は、はいっ!」