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占拠された新聞社を解放せよ!

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占拠された新聞社を解放せよ!

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 そのとき、誰が癒したか
 床を爆破して人質を救出するという驚天動地の作戦は先ほど書いた通りだが、捕らえられていた社員たちを癒し、救ったのは蒼空学園のキリエ・エレイソン(きりえ・えれいそん)をはじめとした美男子たちである。
 救助された女性社員は「天の遣いが助けに来てくれたのだと確信しました」とコメントしている。
 そう、契約者とは時に嵐のように荒ぶる者であり、時には太陽のように優しく、我々を助けてくれるものでもあるのだ。


 通気口から潜入したキリエ・エレイソンは、その様子をじっと見守っていた。彼自身も人質を助けるために行動していたのだが、人質を守るソルジャーの多さに辟易していたところだったのだ。
 そして、人質らが階下に落とされると同時、
「彼らを無事に脱出させるのが私たちの役目です。さぁ!」
 そう確信して、彼らの元へと走った。
 後を追うセラータ・エルシディオン(せらーた・えるしでぃおん)ラサーシャ・ローゼンフェルト(らさーしゃ・ろーぜんふぇると)と共に、人質たちの拘束を解いていく。
「あ……ありがとうございます!」
「どうか、今は騒がないで。あなたたちの安全は俺たちが守ります」
 セラータが告げる。社員はこくこくと頷いた。
「待ってくれ、彼女がケガをしているんだ」
 別の社員が告げた。見れば、確かにその女性は足をくじいて動けない様子だ。上階では戦闘が続いている。その場から離れなければならないが……
「私が治します。静かに」
 キリエが、天井に空いた穴から彼女を守るように背を向け、その脚に手を触れた。柔らかい光がその手から溢れ、彼女の痛みを打ち消していく。
「あ、危ないよキリエ。早く離れないと……」
「落ち着け。セラータはキリエのサポートを。ラサーシャは無事な者から順に、安全な場所に待避させるんだ」
 慌てた様子のラサーシャの背から、メーデルワード・レインフォルス(めーでるわーど・れいんふぉるす)が指示を飛ばす。
「お前たちは何もしないで、指示に従え。戦えないのだから、素人が動くと邪魔になるだけだ」
 メーデルワードは縛めが解かれたばかりの人質たちを冷たく見下ろしていた。
「いいっ? ちょ、ちょっとメーデル……」
「早くしろ」
「ううっ、はい……」
 その鋭い調子に、少し慌てた様子のラサーシャ。しかし一喝されて、人質の安全確保へと戻った。
「あ、あなたたちの安全は私たちが守ります。ですから、私たちを信じて欲しい……と、言いたいだけなんです。本当は良い人なんですけど、ちょっと言葉が足りないだけで」
 慌ててフォローをするキリエ。次から次にケガを治療する彼の側面にはセラータが立ち、時々天井の大穴から放たれる攻撃に対処している。
「こっちだ、早く」
 ラサーシャが安全を確保した一角で、マクスウェル・ウォーバーグ(まくすうぇる・うぉーばーぐ)が先を示す。
「う、うん! さあ皆さん、こっちです、仲間が助けに来てくれていますから!」
 ラサーシャとマクスウェルの指示に従い、通路を駆ける。窓の外では、エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)が拡声機を手に、ビルに呼びかけていた。
「人質を解放してください! あなたたちにも要求があるのでしょう。それに、この状況から逃げられると思っているのですか!」
「あれは……」
 人質の治療を終えたキリエが追いついた。いくらか、動きにくそうな者も居るが、歩くのには問題はなさそうだ。
「私の仲間よ。敵の注意を引きつけてもらおうと思って」
 答えたのは、彼らの行く手を確保していたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)である。
「そろそろ、時間ね……。みんな、部屋の中へ下がって。巻き込まれるわよ」
「巻き込まれるって、何に……」
「いいから!」
 問いかけるマクスウェルを押し込むように部屋の中へ。それに続いて、社員らやキリエたちも、ローザマリアの指示で下がらせられた。
 そして……
「やっぱり、交渉には答えてくれない、か。仕方ないですね」
 エシクは小さく呟き、『起爆』した。
 ドンッ! ドンドンドンドンッ!
 立て続けに爆発音が響く。そして、いくつかの部屋の壁が内部から吹き飛んだ。
「脱出のために、爆弾を仕込んでおいたのよ。さあ、今の爆発で空いた穴から逃げられるわ。ああ、それから私は取材NGだから。あんたたちの新聞に載る気は無いわ」
 ローザマリアが告げた。
 かくして、床に空いた穴から救出された人質たちは、壁の穴から脱出したのであった。



 (社説)人質保護のあり方とは・続き
 ……しかるに、私は思うのである。
 窓もあるのだから、人質を助けるために、ビルを爆破する必要は無かったのではないかと。