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夏だ! 祭りだ! また喧嘩神輿だ!

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夏だ! 祭りだ! また喧嘩神輿だ!

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ロケットおっぱい鉄道神輿vs食堂神輿

 
 
「さあ、勢いに乗るロケットおっぱい鉄道神輿、次は、食堂神輿に狙いを定めたようです」
「おっしゃあ、きたきたきたきたきた、きっちり料理してやろうぜ」
「おう!」
 食堂番長さんが、手下のモヒカンさんたちを鼓舞します。頭数だけは揃えているので、御神輿のいいかげんな作りと比べて、結構強そうです。特に、前の方の担ぎ手に屈強なドラゴニュートのお菊さんがいるので、全体的なパワーは侮れません。
「よし、ここはロケットおっぱいの出番だぜ」
 樹月刀真くんが叫んでから、何か冷たい刺すような視線を感じて振り返りました。少し離れて後ろから応援していたはずの漆髪月夜さんが半被の前を両手でぎゅっと合わせて樹月刀真くんをキッと睨みつけています。何か、とても癇に障ることを言ったのでしょう。
 二つの御神輿が、互いに近づいていきます。
「ああ、やっと見つけた。おーい、アンネリーゼさん」
 精神感応でやっとアンネリーゼ・イェーガーさんを見つけた笹野朔夜くんが手を振りました。感じるアンネリーゼ・イェーガーさんの存在は、戦場である道路を挟んで反対側の歩道のようです。
「あっ、お兄様。来ていたのですね。ちょっと、通してくださいませ。うんしょっ、うんしょっ……」
 笹野朔夜くんに気づいたアンネリーゼ・イェーガーさんが、人混みを押し分けて前に出ようとしました。
「ちょっと、押さないでほしいですぅ」
 アンネリーゼ・イェーガーさんに腕でぐいぐいと押しのけられて、神代明日香さんが小さな悲鳴をあげました。
「よいしょっ、よいしょっ」
 けれども、前に出ることに夢中なアンネリーゼ・イェーガーさんは、構わずにぐりぐりと前に出ようとしています。
「もう、そういうことをする人はこうなんだもん」
 頭に来た神代明日香さんが、えいっとアンネリーゼ・イェーガーさんを突き飛ばしました。その勢いで、アンネリーゼ・イェーガーさんがポンと人垣から飛び出して、おっとっとと道路の上をよろけながらど真ん中に出てしまいます。
「ロケットおっぱい攻撃管制スタート、ターゲット1、2、3……14までロックオン。ロケットおっぱい連続発射」
 御神体の中の重攻機リュウライザーくんが、モヒカンさんたちに次々にロックオンしていきました。視界のターゲットに次々に赤い丸が重なっていきます。ついでに、巻き込まれたアンネリーゼ・イェーガーさんにもロックオンしてしまいました。
「待て、ライザー、路上に一般人が……」
「無理です、もう止まりません。ファイヤー!!」
 アンネリーゼ・イェーガーさんに気づいた武神牙竜くんが叫びましたが手遅れでした。御神体のロケットおっぱいに偽装したツインロケットからロケット弾が発射され、それを追うようにして次々にミサイルが発射されていきます。
「無差別かい、まったく!!」
 逸早くアンネリーゼ・イェーガーさんに気づいたお菊さんが、素早く飛び出すと彼女をかばうような覆い被さりました。そこへツインロケットが飛んできましたが、あわてずさわがず、ドラゴンアーツのアッパーカットでロケット弾を上空へと撥ね飛ばしました。
 残ったロケット弾とミサイルが、狙い違わず次々にモヒカンさんたちをちゅどーんちゅどーんっと吹っ飛ばしていきます。コメディ補正がなければスプラッターになっている所ですが、さすがはパラ実のモヒカンさんたちです。煙を引きながら、さながら人間大砲のように綺麗に吹っ飛んでいきます。すでに一種の芸術ですね。
「バカ野郎、急に神輿を放り出すから、動けなくなってやられちまったじゃねえか!」
 なんとかミサイルを回避した食堂番長さんが、お菊さんにむかって怒鳴りました。そこへ、ロケットがヒュルヒュルと命中します。お約束です。
「うぼあっ!」
 さよなら、食堂番長さん。
「大丈夫ですか、アンネリーゼさん!」
 やっと人をかき分けた笹野朔夜くんが、お菊さんとアンネリーゼ・イェーガーさんの所に駆けつけました。
「はい、わたくしはなんともないですわ」
 お菊さんの下からもぞもぞと這い出てきたアンネリーゼ・イェーガーさんが答えました。
「ありがとうございます」
「それはいいから、早く歩道にお戻り」
 お礼を言う笹野朔夜くんにお菊さんが言いました。ここにいると危ないので、三人は急いで歩道に避難しました。
 入れ替わるように、お嬢様たちが現れます。
「さあ、あの御神輿も踏みつぶしておしまいなさい」
「嫌です」
「ふん」
 お嬢様の命令に、執事君とめいどちゃんが逆らいます。
「なんで命令に逆らうのよ。踏むの、踏むったら踏むの。いい? お嬢様の足蹴は御褒美なのよ、御褒美!」
 なんだか訳の分からない主張を、お嬢様が繰り広げて御神輿の上で足をバタバタさせますが、メイドちゃんたちはクールです。
「あんなの踏んだら痛そうだ」
 メイドちゃんが言い捨てましたが、確かにその通りです。ミサイルの爆発ですでにぼろぼろになっている食堂神輿は、いがぐりのようにナイフやフォークが突き出ています。これを踏むのはちょっと嫌です。
「さあ、攻撃される前に逃げますよ」
 執事君がそう言うと、メイドちゃんが無言でうなずきました。すたこらさっさと、お嬢様神輿が逃げて行きました。
「ということで、また勝っちゃったんだよ」
 ノーン・クリスタリアさんがエリシア・ボックさんに報告します。今度は、何か壁を殴るような音が聞こえました。多分幻聴です……。