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リアクション
★3章
「ラティオの霊に……石から漏れ出したフィリナの悪の塊の霊までいたのか……さて」
カールハインツは最後の1ピースを残した地図を見ながら神殿を見た。
「神殿の中心で、叫んでもらうとしよう……」
――神殿内部――
「ハァ……」
何度目かわからぬフィアナ・コルト(ふぃあな・こると)の溜息に相田 なぶら(あいだ・なぶら)はウンザリしていた。
(……家のフィアナと言いフィリナさんと言い、いつまでもウジウジと)
なぶらにして見れば、復讐の如く瘴気をばら撒く死者はただただ、女々しい。
(いや、女だから女々しいのか。つか、そんなことはどうでもよくて……ッ)
「そもそもフィリナさんも本当にラティオさんの事、愛してたのか疑わしい行動だよね」
「ちょ、ちょっと、なぶら? いきなりなんです!?」
「彼からしたら最愛の人は自分の血で自殺させ、愛する村が最愛の人の呪いで滅茶苦茶になるわで踏んだり蹴ったりじゃないか」
「……そ、そうですけどぉ……」
止まらない。
なぶらは止まれない。
「村人に自分と同じ悲しみを味わえと言いながら、その実一番悲しませてる相手は紛れも無くラティオさんだッ! そりゃ彼をフィリナさんを差し向けて殺させた当時の村人も悪いけど、今の村人には関係ない話だし、こんな呪いお門違いにも程があるよね!?」
「は、はい……」
「フィアナもフィアナだ聞いてる!?」
「は、はいぃ、聞いてます!」
なぶらはくるりの振り返し、後ろを歩いていたフィアナを指先で突きながら言った。
「君の父さんの事だって君自身に罪は無い! 幸せになって欲しいって言ってるのに君ときたら、やれ罪だやれ償いだと悩んで落ち込んで」
「いや、確かに自分自身を許せないのは確かですけど……」
「アアアアアアア、もう!!!」
なぶらは髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き、地団太を踏んで吐き出した。
「本当に君の父さんに償いたいって言うならその望みを叶えてあげる事こそが償いなんじゃないの!?」
「……」
「剣を取ろうが取るまいが、君のやりたい様にすればいいだろうッ! 結局君は他の誰でもない、自分で自分を許せないだけだろう! そんな私情を死者の無念の所為にするな。悩むのも落ち込むのも自己責任だ! わかったッ!? わかったなら返事ッ!」
「は、ハイッ!!」
「ったく、俺は石を壊しに行くよ! 大切な人同士傷つけあうなんて気に食わないし」
フンっ、と鼻息を鳴らしてなぶらは再び唾を返し歩き出した。
「いえ、確かにその通りかもしれませんね。自己嫌悪を父様の所為にして逃げていただけかもしれません……」
「……」
「……私も石を壊しにいきます。これ以上過ちを犯す前に彼女を止めてあげたいですから」
前を向けばいい。
それをパートナーに伝えきれたなぶらにすれば、もう目的は果たしたも同然のスッキリをした気分であった。
「♪〜〜♯〜♪♪〜」
「ふん、ふふ〜ん♪」
幸せの歌を歌いながらのんびり探索と決め込んでいた葉月 可憐(はづき・かれん)にアリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)が釣られていた。
「のんびりだねぇ」
あまりの陽気さに、ここに瘴気が漂っているなどとは到底思えなくなるほどで、アリス・テスタイン(ありす・てすたいん)は思わずそう言ってしまった。
「アリスさん……歌って目的を忘れて――」
アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は不安になってパートナーに尋ねたが、
「心配ない、ヨ〜〜〜♪」
と歌いながら返してきた。
「アキラが真面目なら、ワタシもマジ、メェ〜♪」
全くそうは思わないが、目的の石に辿り着くには、感性の鋭い者をアキラは必要としていた。
しかし、パートナーはこの有り様。
だが、それは杞憂に終わる。
「ここ、石へ続く、ネ〜♪」
――神殿中央部へ続く大樹の道――
ピタリと、可憐の歌が止んだ。
皆が足を止め、そこに目をやった。
大樹の全てを使った緩やかな傾斜のトンネルが開通しており、その入り口には、魔法陣の結界が張られていた。
明らかな侵入者を防ぐ代物なのだが、その結界を強引に突き破ったような切れ目が少しだけあった。
「善意によってのみ行われた彼の無償の愛は、しかし、それ故に他者に理解されず、その身が仇為す存在となった途端に人々に見限られた」
可憐は光条兵器のハンドガンを手にした。
ゆったりした時の流れも空気も一気に張りつめた。
「彼を殺す定めの女は、しかし非情になりきれず――。彼に恋することでその罪から逃れようとした」
「学問的に、同じ空間に二人で閉じ込められれば、好き合うか嫌い合うかの二択になるらしいけど……無意識に人を殺すことを避けた少女は、好きになるしか選択肢はなかった、のかな」
可憐のパートナーであるアリスが補強するように言った。
「人々は自らの手を汚したくなくて――全ての罪を他者へと押し付けた。これはそんな、全員が全員の罪の積み重ね、悲しい悲しい喜劇」
「村人も、その石を崇め奉れば……。最後の最後まで、村人は愚かだったってことだよねー」
アキラはこの2人に同行できたのは幸いだったと思った。
締めるところは締め、今やろうとしてることは――、
「罪は積み。一度その領域を侵せば、いとも簡単に降り積もる。だからッ」
道を作り出した。
銃弾の1つ1つが小さな亀裂を生み、結界を破壊した。
これでもう、障害はない。
「よしッ!」
アキラは自分の両頬を叩き、気合いを入れて駆けだした――。
――神殿中央部――
大樹のトンネルを抜けた先は、黒紫の瘴気が明らかに目に見え、少し先の視界さえ歪む始末だった。
それでも必死に目を凝らせば、木々がドーム型を成し、中央に鎮座する嘆きの石に襲いかかろうとしているようにも見え、また、嘆きの石から押し出されているようにも見えた。
これほどの場所を外から見て気付けないほどに、この神殿は腐敗と再生を繰り返した大地の力に屈した長い年月が経っていたということだろう。
「フー……」
アキラは精神を集中させながら、光条兵器を出し、石に向かって飛びかかった。
スパーンッ――!
アキラはハリセン攻撃で嘆きの石に会心の一撃ッ。
「なにしてんだオメーは。ンな事して誰が喜ぶってーんだッ。確かに、自分の想い人を自らの手で殺したオメーの気持ちは解らんでもない。でもな……ッ」
ビシィ――ッ!
アキラはハリセンの先を突き付け会心の言葉ッ。
「オメーの想い人の願いはッ、望みはッ、何だったんだ! この地の人々を愛し、護ることだったんじゃねーのかぁ! 結局オメーは自分の事ばっかり考えて、オメーの想い人が一番悲しむ事をやってんじゃーねのかッ!!」
しかし、石からはあんの反応も見られなかった。
「あれ? もしもーし」
アキラはハリセンで石をペシペシと叩いてみるが、それでも反応は得られなかった。
「と、なれば、少し別の手を試みて見ましょう」
「ワタシもお手伝いネッ」
可憐とアキラのパートナーであるアリスが石に近づき、同時に石を肉にを試みた。
「あ、いけるかもねぇ」
石に淡い光が集う様子を見て、アリスは期待するのだが、甘かった。
光は瞬時に消え、目に見えぬ殺気を感じるや否や、石から放たれた突然の衝撃波に全員吹き飛ばされた。
それは、歴戦の契約者でさえ踏ん張りきれないほどの、強烈な一撃だった。
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