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リアクション
「どこに行ってしまったんでしょうね、コアさんにラブちゃん」
竜胆は十兵衛とともにコア達の姿を探していた。雑踏の中を走り回っているうちにはぐれてしまったようだ。行
き交う人達の中、コア達の姿を探していると、ハヤテの姿があった。なんとハヤテは。屋台でぜんざいを食べてい
た。
「ハヤテ!」
呼びかける竜胆に、とてつもなく気まずそうな表情を浮かべるハヤテ。
「お前は、何をしているのだ?」
あきれ顔の十兵衛にハヤテは答える。
「いや、どうしても腹が減っちゃってさ。露店を見てるうちに竜胆様とはぐれちゃって」
「で、目的を忘れて買い食いか?」
「悪い、悪い。そう、怖い顔しないでよ、十兵衛様」
「……」
十兵衛と竜胆は顔を見合わせて肩をすくめた。
「それより、ハヤテ。お前に頼みたい事があって探していたのだが」
十兵衛はそう言うと、中条小町の事をハヤテに話し始めた。
その頃、セルマ・アリス(せるま・ありす)とリンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)もこの界隈に来ていた。セルマは【風
の便り】で竜胆がこの界隈を訪れていると聞き、新年を迎えて会うのも久しぶりだし、挨拶しに行こうと考えてい
た。
店や露店を覗きながら歩いていると、何だか見たことある3人組が歩いてる。
「竜胆さん達みたいだね」
セルマはリンゼイとともに、竜胆に駆けよっていった。そして、ぺこりと頭を下げる。
「竜胆さん、十兵衛さん、ハヤテさんお久しぶりです。新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお
願いしますね」
同じくリンゼイも頭を下げた。
「お三方、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね」
「セルマさん、リンゼイさん」
竜胆は驚く。そして、喜ぶ。本当に今日は色々な懐かしい人に出会える。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
竜胆はセルマ達に頭をさげた。
「あけましておめでとうな。今年も、よろしくたのむぜ」
ハヤテが照れくさそうに挨拶する。
「今年も、ますます健勝であられる事を願う」
十兵衛も頭を下げる。
「ところで、竜胆さん達はここで何をしているんですか? 何かを探しているように見えましたが……」
セルマの言葉に竜胆は「実は……」と話し始めた。
「実は、私たちはウサギ小僧と言う義賊を探しているのです」
「ウサギ小僧?」
妙な名前にセルマはおうむ返しした。
「またおかしな方が居るのですね」
リンゼイは感心したようにつぶやく。
「そう、そのウサギ小僧に1000ゴルダ盗まれて困っている人が居るんです。その方のために私たちはウサギ小僧
をつかまえようと奔走しているのです」
そして、さらに詳しく事情を説明する。
全て話し終えると、セルマは言った。
「相変わらず優しいですね、竜胆さんは……。良かったら俺にも手伝わせてください」
「本当ですか?」
「ええ。ウサギ小僧の情報を得て捕まえればいいんですね」
「ええそのとおりです」
「じゃあ、まかせて」
セルマはそう言うと、リンゼイとともに駆け出した。ただし、ウサギ小僧を見つけたとしても、本当に悪いこと
をしようとして行っているわけでないなら、無闇に傷つけないようにしようと思っている。
雑踏の中、ひたすらウサギ小僧を捜していると、ちょんまげをつけたウサギのゆる族に遭遇した。
「ピョンまげだーー!」
「写真撮ってーーーー!」
子供や女子高生達が走って行く。
「え、ピョンまげ…?」
セルマが一瞬反応する。
……が、しかし……
「あとで写真撮るから今は置いとこう。うん」
本当は…すごく行きたい気持ちを抑えて、走り続ける。
それを見て、リンゼイが感心した。
「かわいいもの好きなセルがピョンまげを素通りできるなんて意外でしたね。てっきり、見つければすぐに飛びつ
きに行くものだと思っていました」
やがてセルマは【風の便り】で街の人々が話している声から「ウサギ小僧が城下街東側でまたゴルダをばら撒い
ていたらしい」と情報を得た。
フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は、梅阪屋で買った福袋をあけて顔を真っ赤にした。
「……え 私、無理です!」
そこには、色とりどりのランジェリーがぎっしりと詰まっている。純情娘のフレンディスは赤面し慌てて隠した。
万が一、福袋盗まれたら羞恥で殺る勢いだ。
フレンディスの側ではベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)がぼやいている。
「せっかくの正月すら二人っきりになれねーとはな…(溜息)」
どうやら、フレンディスと二人きりになれないのが不満なようだ。
レティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)はいつも通り仏頂面で不機嫌そうに祭りを楽しんで(?)いる。
アリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)は露店に夢中になっている。
福袋の中身はともかく、葦原のお正月は良いものだ。謎の忍の里出身の忍者のフレンディスは、里ではお祭りが
なかっただけに、皆と祝えるのが嬉しくて仕方ないようだ。正月を満喫している。
と、突然、アリッサが叫んだ。
「あー、おねーさま! アリッサちゃん、あの人達を知ってるよー」
その言葉に、目をやると、十兵衛達の姿があった。そういえば、ウサギ小僧という盗賊を捜しているとかいって
いたような……と、フレンディスは思う。
フレンディスにとって、十兵衛達の存在は尊敬対象だ。同じ忍びのハヤテとも仲良くなりたいと思っていた。そ
れで、フレンディスはアリッサ達とともに、十兵衛達に近づいて声をかけた。
「あの……十兵衛様、竜胆様」
十兵衛達が振り向く。
「貴公らは?」
尋ねる十兵衛に、フレンディスはパートナー達を紹介した後、こう申し出た。
「ウサギ小僧さんの件につきましてですが、私も修行中でありますが忍びの端くれ。差し出がましい真似だと承知
の上ですがお力になりたいと思います」
「そいつは、助かるな。」
ハヤテが言う。
「ちょうど、人手が足りなくて困ってたところなんだ」
「うん。人手は少しでも多い方がいい」
十兵衛も頷く。
「それじゃあ、こうしないか? 俺と十兵衛様は中条家に行く」
「じゃあ、私はフレンディスさん達とともにウサギ小僧の探索を続けましょう」
竜胆がフレンディスを見て微笑む。
「ったく。フレイの奴、結局また厄介事を引き受けちまうのかよ」
ベルクは不満げだ。十兵衛など、男性絡みでヤキモチ的に乗り気ではないらしい。それでも、
「しゃーねぇなー。とっ捕まえりゃいいんだろ?」
なんだかんだ手伝いをすることにする。
一方、レティシアは、
「ふむ、世間を賑わす者か。そやつに戦う意思があるのならば相手にするのだが、その意思がないとのことならば
剣を振るってもつまらぬ。フレンディス、お主達だけで好きにやるがいい。我は好きにさせて貰おうぞ」
どうやら、彼女は、剣士としてウサギ小僧より十兵衛に興味あるらしい。
十兵衛の調査側に黙ってついていく。
そして、しばらく歩くと、突然剣を抜き、十兵衛に襲いかかった。咄嗟に刀を抜き応戦する十兵衛。ハヤテも身
構えた。……緊張が、走る。
「何をする?」
十兵衛の言葉にレティシアは答えた。
「我は、ウサギ小僧より主の剣技に興味がある」
「ほう」
十兵衛はおもしろそうに剣を構える。
「なんなら、ここで、勝負するか?」
「是非に……と言いたいところだが、祭の中で勝負を挑むのはいささか無粋故今日の所は我慢するとしようぞ。い
ずれお主とあいまみえたいものだ」
「よかろう。その日を楽しみにしている」
二人は互いに不敵な笑みをかわすと、刀をおさめた。
一方、竜胆はフレンディスらとともに、ウサギ小僧を捜していた。すると、前方からセルマ達が走ってくるのが
見える。
「セルマさん!」
竜胆は声をかけた。すると、セルマは気がつき立ち止まって言った。
「あ! 竜胆さん。ちょうどいい所で会いました。ウサギ小僧は城下町の東でゴルダをばらまいているそうです」
「本当ですか?」
竜胆は、叫ぶとセルマを追って町の東へと走って行く。その後をフレンディスらも追いかけていった。
次百 姫星(つぐもも・きらら)は鬼道 真姫(きどう・まき)とともにウサギ小僧を追って、葦原城下を走り回っていた。
正義の泥棒をお縄につけ、ついでに野次馬にムカついたので一喝するためである。
「あのふざけた義賊を捕まえて、町人の目覚まさせてやります!」
姫星は怒りながら歩いていった。
その背後で真姫も怒っている。
「全く、盗人猛々しいとはこの事だよ。いっちょ、あたし達がとっ捕まえてやるさ」
彼女は、贅沢三昧の実家(御法度はしてない)に帰ったところ、ウサギ小僧の被害にあったとうので捜している
のである。
しかし、町中探し回っても、ウサギ小僧の姿は一向に見当たらない。
「一体どこに……」
二人は首をかしげた。やがて、角をまがったところで、人だかりにでくわす。そして、上を見て叫んだ。
「あ、居ました!」
姫星が叫ぶ。
「また、さっきみたいに金をばら撒いてるみたいだね。こいつはチャンス、狙うは先手必勝にして一撃必殺だよ」
真姫がうなずく。
真姫の言葉通り、ウサギ小僧は衆人環視の中で、屋根の上からお金をばら撒いていた。金色のゴルダが雨のよう
に降り注ぐ。姫星は観衆の真ん中に躍り出て叫んだ。
「見つけましたよ、1000ゴルダ…じゃなかった、ウサギ小僧!」
そして、ふわふわ気分で空に上がると、真正面からウサギ小憎に対峙する。
「なんだ? お前は?」
尋ねるウサギ小僧に
「次百 姫星!」
と姫星は答える。そして、
「観念して、お縄に付けぃ!」
と、身構えた。
群衆から野次が飛ぶ。
「なんだてめえは!」
「ウサギ小僧様をつかまえるだと?』
「ふざけんな! ウサギ小僧様は義賊だぞ!」
その、野次馬達にも言い聞かせるよう、姫星はウサギ小僧に向かって叫んだ。
「義賊って、ふざけないでください! 泥棒に良いも悪いもありません! あの野次馬さん達も最低です! 菊屋
がどうこうは関係ありません。人の家から盗まれた金を受け取って、それがさも当然のように振る舞い、あまつさ
え被害者を攻め立てる。嘆かわしい……それではあなた達が言う悪徳商人や強欲な代官となんら大差ありませんね。
例え、山姥みたいな怖い借金取りが連日尋ねてくるような貧乏人でも、そんなお金に手を付けてはいけないんで
す。あの人が私財を投げ打っているなら、私もゴキブリの如く這いずり回ってお金かき集めますけど!(キリッ)」
それを聞いて、真姫は苦笑いした。
「姫星、あんた…山姥って、喧嘩売ってるのかい!?」
ちなみに、この場合の借金取りとは真姫の事、貧乏人とは姫星の事である。
それはともかく……
姫星は、全ていい終えると、ウサギ小僧に向かって火術を展開。
「そーれそれそれそれー!」
炎がウサギ小僧に向かって襲いかかる。もちろん、火事にならないように火力は調整している。
ウサギ小僧の姿が炎に包まれた。しかし、ウサギ小僧は印を結び体の周りに見えない幕を張って炎をやりすごす。
しかし、これは陽動作戦だ。姫星は囮で、本命は、真姫の一撃である。
真姫は、先の先で構え、軽身功で壁を駆け上がり屋根まで上がり、そのままウサギ小僧に、鬼神力を込めた等活
地獄で雪崩式喉輪落としを叩き込んだ!
ウサギ小僧は真姫に抱え込まれたままポストの上からマットに……ではなくて、屋根の上から地面に向かって落
ちていく。
「ウサギ小僧、あんた防御の達人ならしっかり受身取りな。でないと、死ぬよ!」
真姫はウサギ小僧を羽交い締めにしたまま叫んだ。
ドォ!
と、音がして二人の体が地面に叩き付けられる。ウサギ小僧は、見事に受身を取って脳天への衝撃を避けた。そ
して、次の瞬間煙幕を張った。
やがて、煙幕が晴れたころ、セルマに、竜胆、フレンディスらが駆けつけて来た。しかし、その時にはすでに、
ウサギ小僧の姿はなかった。
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