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謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。

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謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。

リアクション

「え? ウサギ小僧だって?」
「見てねえと思うぞ」
「大分前にも、同じ事聞いて来た奴らが居たな」
「伊勢屋の連中だろ? あいつらなら行っちまったぞ」
 夏侯淵は、神社の境内で聞き込みをしている。
「小僧っていえば、お前さんも小僧って感じじゃないか。案外あんたこそウサギ小僧じゃないのかい?』
「……いや、俺は違うから。俺はうさぎ小僧じゃないから(汗」
 自ずからがウサギ小僧に間違われそうになりながら、めげずに聞き込みを続けていると、どこからか、雄叫びに
近い声が聞こえて来た。

「だから、あいつはスリなんだーーーーーー!!」
 声の主は次第に近づいて来る。
「見たんだって、あいつが金持ちの旦那の懐に手を入れるとこ」
「言い訳は聞きたくないと、いったはずですわ」
 それは、勇平とウイシアだ。二人は、どんどん夏侯淵に近づいて来る。
「その話、詳しく聞かせてくれんか?」
 夏侯淵は勇平に声をかけた。金持ちを狙ったスリというのがひっかかったのだ。
 二人は夏侯淵に気付くと、ちょっと驚いたような顔を見せたが、すぐにウイシアが話しだす。
「聞いていただけますか? この人ったら縁結びの鈴の前であろうことか痴漢をしたのですわ」
「だから、違うって。あいつはスリなんだって」
 勇平が大否定する。夏侯淵は勇平の言葉に食いついた。
「そのスリは、どんな風貌だった?」
「どうして、そんな事を聞くんですの?」
「実は、ウサギ小僧という盗賊をさがしているのだ。その者がウサギ小僧かもしれん」
「ウサギ小僧? そういえば、あちこちでそんな奴の噂を聞いたっけ」
 勇平は首を傾げたが……
「残念ながら、あの人じゃないと思いますわ。だって、あの人はとーーーっても奇麗な女の方だったんですもの」
 ウイシアにあっさり否定される。
「女じゃないって。近くで見たけど、あいつ、間違いなく男だったって」
「また、そんなすぐバレる嘘を。椿のかんざし似合う朱色の髪の、とても美しい人でしたわ」

「椿のかんざしをした、朱色の髪の女性ですか?」
 不意に、別な方から声がする。一同が驚いて見ると火村加夜が立っていた。
「その人なら、私もさっき会いました」
「え?」
「そのそのかんざしは、私のさし上げたものです。とても、綺麗な方だったんですけど、女性にしては体格が少し
いいような気がしました。中性的な声で、手も大きかったです。男の方だといわれれば納得いきますわ。でも、あ
の人ウサギ小僧だったんですか? 気さくで良い方でしたよ。今度あったらまたお話したいですけど……」
「いや、確たる証拠があるわけではないが……」
 夏侯淵は首を振る。
「しかし、金持ちの財布を狙い、変装が得意……念のために皆に連絡してみるか」
 こうして、夏侯淵は早速竜胆とルカに携帯を入れた。 

 その頃、縁結びの鈴から、さほど遠くない露店の前で飛騨 直斗(ひだ・なおと)がおみくじを見て固まっていた。
そこには、しっかりとこう書かれていた。


 超凶!

「なんなんだよ? 超凶って……」
 ひきつる直斗。
 と、
「おや? 随分珍しいのをひきましたね」
 獅子神 玲(ししがみ・あきら)が直斗の手元を覗き込んで感心した。その手にはあちこちの露店で買った食べ物が握
りしめられている。
「ふ……ふふ」
 直斗は硬直した笑みを浮かべた。まさに、不幸体質にふさわしい結果と言える。
 しかし、こんな事で……こんな事でくじけてはいけない! と、直斗は自分に言い聞かせる。今日は、ずっと憧
れていた玲さんと葦原神社で初詣! 俺の初恋…玲さんとの恋愛を成就させたいんだ!
 直斗は気を取り直すと玲に言った。
「あ……玲さん。あ……あの、恋愛成就の縁結びの鈴っていうやつ俺達も挑戦してみない?」
「ふぇ?」
 玲は口に餅を頬張りながらきょとんとする。
「も……もちろん。お遊び、お遊び。でも、せっかくここまで来たんだしさ!」
「いいよ?(お餅もぐもぐ)」
「や……やった!」
 直斗は心の中でガッツポーズを取った。
 こうして、二人は縁結びの鈴に向かった……はずなのだが……。
「……って、いきなりはぐれたし」
 直斗は人ごみの中でボーゼンとする。さすが、不幸体質といったところだろうか。しかし、本人はそれどころで
はない。
「玲さん、玲さん、どこですか?」
 必死で探したあげく、やっと人ごみの中にそれらしき姿を見つけた。
「あ……玲さん。良かった」
 直斗は喜び勇んで駆け寄ると、玲を連れて縁結びの鈴へと向かった。そして、しばらくの順番待ちの後、目を閉
じて、手と手を取って鈴に向かって歩いていく。そして、


 カランカランカラーン……!


 二人は無事に鈴までたどり着き、鳴らす事ができた。
「……よっしゃあ!」
 直斗は雄叫びを上げた。そして、目を開けると玲に向かって言う。
「成功しましたよ、玲さ……」
 しかし、そこに居たのは玲ではなかった。
「って、兎面被ってるあんたは誰だ!?」
 そう、そこに居たのはウサギの仮面をかぶった男だった。
「俺の名は、ウサギ小僧さ」
 男はからかうように直斗に言った。
「ウサギ小僧?」
 どこかで、聞いたような名前だ。しかし、その名を思い出す以前に、あまりの事に動揺する直斗。その間にウサ
ギ小僧は笑いながら逃げていってしまう。
「ちくしょーーー! 待てーーー!」
 直斗は怒りながら追いかけていった。そして、逆恨みに等しいセリフを吐く。

「俺の恋愛運、返せーーーー!」

 その頃、玲は露店の前でキョトンとしていた。
「なぜか、はぐれてしまいました。……決して出店のご飯に目を奪われていた訳ではありません(お餅もぐもぐ)」