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リアクション
その頃、竜胆はウサギ小僧を追い、葦原通りに出ていた。通りには市が立ち並び、どこからか笛や太鼓の音も聞
こえ、まるで縁日のように賑やかだ。そこで、竜胆は十兵衛と出くわした。
「十兵衛、何をしてるのです? こんなところで」
十兵衛は、1000ゴルダも出して菊屋に例のからくり人形を依頼した、中条小町という人物に不審感を抱き調べに
いく所なのだと説明した。
「ハヤテにも手伝ってもらおうと思って、探しているのだが、どこにいるのだ?」
「ハヤテ……そういえば、さっきから姿を見ておりません。どこにいったのか。銃型HCで連絡はとれませんか?」
「それが、まったくとれんのだ……」
と、その時……
「や! 久しぶりー竜胆に十兵衛♪」
聞き覚えのある声がした。振り返ると、ラブ・リトル(らぶ・りとる)がコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)や
馬 超(ば・ちょう)と共に立っていた。
「葦原城下で楽しいお正月祭りがあるって聞いてやってきたわよー♪」
ラブは少々ハイテンション気味に叫ぶ。その手には露店で買ったと思われる、団子と綿菓子が握られている。
「ラブちゃん、コアさん!」
竜胆はラブと、コアを見て(馬超とは初対面である)微笑んだ。すると、コアが言った。
「久しぶりだ、リンドウ、ジュウベエ。今回はウサギ小僧を捕まえる為の手が必要だと聞いて協力にやってきた。
宜しく頼む」
「本当ですか?」
喜ぶ竜胆。
「本当よ。お祭りを楽しみに楽しんだついでにウサギ小僧を捕まえるわよ!」
と、ラブ。
「ありがとうございます」
竜胆は二人に頭を下げる。
「じゃあ、みんなあたしについて来て!」
ラブが言った。
「ウサギ小僧をおびき寄せる策があるの」
「どんな、策です?」
尋ねる竜胆に、
「まぁ、黙ってついて来て一緒にお祭りを楽んで。せっかくのお祭りなんだから楽しまなきゃ損よね♪ ウサギ小
僧は見つけたら捕まえましょ♪」
答えてラブは先頭を飛んでいく。
顔を見合わせ、とりあえずついていく一同。
一方ラブは……
「屋台食べ歩きとおみくじとー……あ、福袋も買わないと…中身は何かなー……♪わ、簪と櫛だ! かわいー♪」
祭りを十分に堪能しているようだ。
「あの……ラブちゃん?」
竜胆が苦笑いしながら尋ねる。
「これで、本当にウサギ小僧が見つかるのですか?』
その言葉にハッと我に返るラブ。実は、ウサギ小僧のことは完全に忘れていた。だが、しかし、まさか、忘れて
ましたとも言えず、とっさにごまかす。
「もちろんウサギ小僧も捕まえるわ。奴は金持ちのお財布を狙うらしいわ…つまり、この城下のお祭りで豪遊して
いる奴がいたらウサギ小僧が向こうから近づいてくるって事よー! そして、このラブちゃん印のお財布(ひも付
き)に手を出した時が最後、うちの力仕事担当が取り押さえるって寸法よ!」
「ああ。なるほど」
竜胆は頷いた。何か、非常に苦しいものも感じるが。
「という訳で、なるべく金持ちっぽく行くわよ、竜胆!」
「か……金持ちっぽく? でも、あいにく持ち合わせが」
「何いってんのよ。あんたも手伝うのよ。捕まえたいんでしょ?」
こうして、竜胆はラブとともに豪遊(?)を始めた。それは、それで楽しいようだ。竜胆もすっかりはしゃいで
いる。
……と、その時。
「無いーーーーーー!」
ラブが悲鳴を上げた。
「無い! 無い! 財布が無いーーーーー!」
そう言って、ラブは懐をさぐっている。
「たしかに、ここにヒモにつないで入れといたのに。あーーーーヒモが切られてるーーーー!」
「むう!」
コアが反応する。
「財布が無い? という事は、ウサギ小僧が現れたということか」
コアは【ホークアイ】を使用して視力を高めて、怪しい相手を探した。すると、物陰に隠れていたウサギ小僧の
姿が露になる。
「そこか!」
見つかるや否や、ウサギ小僧は逃げ出した。それを追いかけながら、コアは【警告】を発する。
『待てウサギ小僧! 君は完全に包囲されているぞ!』
こうして追いかけながら、巧みに大通りに誘導していく。それは、あらかじめ馬超と打ち合わせした場所だ。や
がて、予定の通りに近づいたところで、コアは呼子を鳴らした。
人ごみの中、馬超は呼子に気付いた。
「打ち合わせの呼子か。ならば行くか」
馬超は【ユニコーン】に乗り通りを駆けていった。やがて、先方から駆けて来るウサギの面の男に気付く。その
後方にはコアの姿も見える。……あれが、ウサギ小僧だ! 馬超は巧みにユニコーンを操り、ウサギ小僧との距離
を縮めていった。ウサギ小僧は馬超が自分を狙っている事に気付くと、すばやく細い通りに逃げ込もうとした。当
然だろう。
しかし、馬超にとっては、その前に槍を一手振るう時間があれば十分だった。ウサギ小僧の虚を突き間合いの中
に入り、【屈盧之矛】を一閃! 刃が迫り、ウサギ小僧を斬り割こうとする。ウサギ小僧は、白刃の下をくぐり抜
け、巧みに逃げていった。
もし、馬超が屈盧之矛を振り切っていれば、ウサギ小僧は敢え無く絶命していたかもしれない。しかし、馬超に
とっては、その一閃でウサギ小僧を「斬る事が出来たかどうか」の判別がつけば十分だったのだ。武器を振り切る
つもりは無く、ウサギ小僧が逃げるならば追う気もなかった。
しばらく、ウサギ小僧の後ろ姿を見送っていると、コアとラブが駆け寄って来た。
「ウサギ小僧は、どこに行ったの?」
馬超は二人に向かって頭を下げて謝す。
「すまん、逃がしたようだ……」
その言葉にコアが驚いた。
「嘘だろう?」
「嘘じゃない。しかし、あのような者がいた方が世の中は楽しいのかもしれんな。……いや、冗談だ。聞き流せ」
実は馬超は強者に反逆するウサギ小僧を気に入っていたのだ。それ故、深追いはしなかったのである。
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