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インテリ空賊団を叩け!

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インテリ空賊団を叩け!
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〜 Final phase【決戦】〜
 


そんな呑気な攻防が船の一角で行われているころ
突入組により正当な戦いはしっかりと繰り広げられていた

 「安心しな、命だけはとらないからさ。ほら」

場所は操舵室
【ウルフアヴァターラ・ソード】を船員の眼前に突き付け
十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)は不敵に船室の連中に声をかける
その隣で状況を確認しながら猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)が口を開いた

 「船長は専用の部屋か……まぁいい、そっちは別の連中が行ってるからな
  こっちは指揮系統の分断が目的だ、大人しく舵をこちらに手渡して貰おうか?」
 「うるせぇ!こっちには人質がいるんだ!あのアイドルもどぎの海賊団め!裏切りやがって」

操舵主と思しき船員の手元には羽交い絞めにされた琳 鳳明(りん・ほうめい)がいた
頭にご丁寧に銃を突きつけられている、それを見て勇平が苦悶の声を上げる
その隣でウルスラグナ・ワルフラーン(うるすらぐな・わるふらーん)が言葉もなく睨んでいる

 「人質とは……卑怯だぞ!そいつは無関係だろう!離せ!!」
 「ふん!所詮はお人好しか!上等だ……そのまま武装を解いてもらおうか」
 「くそ!空賊らしい汚いやり方だぜ!」
 「へっへっへ……勝てりゃなんでもいいのよ!さぁぐずぐずするな!こいつがどうなってもいいのか!」

勇平と空賊の応酬が緊迫する中、銃を突きつけられて鳳明がついに声を上げた

 「……き、きゃ〜……たすけ〜て〜あ〜れ〜」

その明らかな棒読みに緊迫感溢れていた空気が凍りつく
白々しい空気が流れる前に、ため息とともに勇平が脱力して口を開いた

 「……あのさ、人がせっかく頑張ってるのにその演技はないんじゃね?」
 「し、しょうがないじゃない!殊勝なキャラなんて今どき出来ないよ!
  第一か弱い真似したら笑いだすでしょ!だって隣なんかほらっ!!」

顔を真っ赤にして鳳明が抗議しながらウルスラグナを足で指差す
よく見ると彼は怒りで睨んでいるのではなく単に笑いをこらえているのだった

 「………す、すまん、頑張っては……いたんだが……」
 「あ〜も〜!もう人質やってたって意味ないんだからやめやめ!や〜め〜た〜!!」

相当慣れないことをやったのか、ストレスが溜まっていたらしい彼女が吠える

 「お、お前ら何ふざけてやがる!この状況が分かってないなら血を見せ……ぐあっ!!」

緊迫感の無い空気に耐えかねて、空賊の一人が鳳明に銃口を突き付けるが
すぐさま苦悶の顔を浮かべ、倒れる
みれば傍に隠れていた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が立っていた
それどころか気がつけば同じ影が3人いる……彼の得意な【分身の術】であった

 「な……どこに隠れ……がはぁっ!?」

状況に戸惑った操舵主が刹那、苦悶の声を上げる
一瞬の隙を狙った鳳明が至近距離で放った一撃だった

 「この……なめるなぁ!」
 「ふんっ!!」

それでも船の大物らしく、反撃を試みる彼だがそれを狙い
続けざまに鳳明が【金城湯池】【黒縄地獄】と連檄を至近距離で繰り出す
八極拳特有の低い地響きと衝撃音が鳴り響き、瞬時にて彼の意識は刈り取られた

その間にも唯斗の分身が複数の相手を制圧し、気がついたときには殆ど事が終っていた

 「こ……こうなったらヤケク……うっ」

唯一残った一人が混乱とともに何やら髑髏マークのいかにもなスイッチを押しかかったが
不意に現れたヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)が放った雷撃で制圧させられた
彼女特有の【チェシャ猫】の効果による隠密行動の効果である

 「天のいかずちって……本当に容赦ないな、ヨルディア」
 「今時自爆スイッチをヤケクソで押そうとする方が容赦ないですわ、宵一様」

宵一の言葉に動じず、ヨルディアが不敵に鼻を鳴らして答える
そんな中、すべての機器のチェックを終えてリイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が宵一と勇平に報告する
 
 「操縦機構に問題はないでふ、自動操縦も可能ででふよ」
 「ほんじゃま、船本体の制圧は完了というわけだ」

仕事が大方終わって伸びをする宵一に勇平が声をかける

 「後はさっきも言ったが船長室サイドの方だ、そこで見つけるものを見つけたら終わり
  気になるが…ここもあるから待ってるか?」
 「大丈夫だ、こやつらに術を施してある…悪気がない限りはここを取り返させる事はない
  何なら俺が見ててやる、行くといい」

唯斗の言葉に、宵一達は顔を見合わせ、少し考えてから答えた

 「とにかくあとは出すとこに出すだけだからな……わかった、頼む
  ただ程々に手を出すなよ」

そう言って鳳明に案内され、宵一達は移動していく
それを見送り、ただ一人佇む唯斗だったが、不意に衝撃とともに不自然に動かなくなった
見れば背中に剣が突き立っている

 「……こ、この時を狙っていたのよ……せめてテメェ位は……」
 「道連れ……とでも言いたかったのか?」

まったく別の方向からの声に、奇襲をかけた操舵主が驚いて振り向く
気がつけば剣を突き立てたのは、仲間の一人であった
混乱する男に唯斗が答える

 「【空蝉の術】という奴だ。これでも、忍者なんでね。それなりの事は出来んのよ
  安心しろ、俺から手は出さんよ、勝手にするといい」

報復をするでもなく踵を返す唯斗を不思議に思った操舵主の男だが、みるみるその顔が青ざめていく

 「か……体が勝手に!こいつぁいったい!?」
 「言ったろう?俺からは手を出さない、勝手にしろと……お前達がお互いつぶし合う事を俺は止めはしない」
 「な……ななな……やめろ!やめてくれ!!」

見れば他の男達も意に反して体が動いているようだ
各々が向かい合い、手にした武器を振り上げる

 「……最初のは慈悲だ、仲間の手前見逃してやったが……手を出したこいつを恨むんだな」

操舵室を後にする唯斗の背後で容赦のない絶叫が木霊する
殺すことはないが、お互い恐怖を一生刻みつける程度にはお互いの身を切り刻むはずだ
彼らの終焉をその目で確認する事無く、唯斗が呟いた

 「因果応報。外道は外道らしく散れ」


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 「だ……騙しやがったなぁぁぁぁ!!」

一方の船長室
最後の抵抗とばかりに集まった一団であったが
今まで先導していた二人が不意に反旗を翻し、鮮やかに劣勢となっていた

そんな頭である船長の方向に機関銃を向け乃木坂 みと(のぎさか・みと)が微笑んだ

 「動かないでいただきましょうか?必要とあれば空賊には海賊と同じく人権はないと判断しますけど」
 「悪いな、教導団としては背後関係を確認したいんでね。降伏するかい?
  そこのチンピラもだ。船を沈めたくないだろ?」

彼女の言葉に追い込みをかけるように相沢 洋(あいざわ・ひろし)も船長に銃剣銃を喉元に突きつけていた
もともとギリギリまで護衛を装い近づいてからの行動だ、見事なまでの制圧だった
そこにようやくルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が駆け付ける
途中で合流した永井 託(ながい・たく)高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)も中を覗き込む

 「……あらあら、これはこれは……」

戦闘を予想していたはずが、見事な捕物にやや拍子抜けしてルカルカが声をあげる
彼女の素性を確認したみとが、彼女とダリルに厳かに報告した

 「同じ教導団の乃木坂みとです。空賊を引き渡します」
 「御苦労でした。では確保並びに証拠品の捜査にあたります」

ダリルが引き継ぎ、彼女達と協力して動けないように捕縛作業を行う中
ふとルカルカが考え込んでいる託に声をかけた

 「どうしたの?まぁ確かにすんなり事が進んでちょっとびっくりだけど」
 「……進みすぎだよ、一応あれだけ巧妙な事を考えた連中だぜ……ちょっと気になってねぇ」

確かに捕物としては申し分ないが、そもそも目的のものがまだ見つかっていないのだ
洋は船長と思しき男を尋問でもするつもりなのだろうが、それで根本的に吐くような段取りをつけるだろうか?
そして案の定、船長室の調査を終えた鈿女が想像通りの解答を出す

 「託、ここには物を隠す場所なんてないし保管庫もないわ、いくら探してもこれ以上は無駄よ」
 「え?そんな……要のものをトップが持ってない?なんで!!」

ルカルカが驚きの声を上げる
その様子に、案の定洋が銃剣を突き付け尋問をしようとしたので、託が制した

 「待ってくれ、それよりいい方法がある。一応ここにも【私掠船免状】はあるんだろう?
  それを貸してくれ、俺なりのやり方で突き止めようかねぇ」

そう言ってダリルが渡した【私掠船免状】そして動けない船長それぞれにに向かって手を当てた
彼の能力……【サイコメトリ】による調査である
程なくして、彼が出した答えを探りあてて口を開いた

 「……影武者、か…。粋な事するねぇ
  美羽に連絡してくれ、多分ここからだと彼女達が一番近い!」