百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

うそ!

リアクション公開中!

うそ!

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
『はーい、みんなー、カオスな「うそ!」リアクションがはっじまるよー☆。画面の前のみんなは、常識を捨てて、細かいことは気にせず、笑いすぎに注意して読んでね☆ 健康のためにゲームは1日48時間までだぞ☆おねーさんとの約束だ♪ なお、このリアクションは鷽(フィクション)であり、実在の人物、団体、地域、PC、NPC、PL、MS様、絵師様、設定とはなんの関係もありません。なんの関係もありません!』
「ちょっと、みんなどうしちゃったのよ」
 そう言って、アリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)が、古いブラウン管テレビの箱をバンバンと叩いた。
『なあに、変な衝撃がしたけど』
 テレビの中で、鳴神 裁(なるかみ・さい)が怪訝そうに周囲を見回した。その背後を、さりげなく鷽が飛びすぎる。
『まあいいんだもん。メタな世界行くよー。ふふふふふ、この世界はマスター様の作った世界なんだ。そして、ボクたちがいた世界はマスターがいた世界と同じだったんだよ。だから、地の文ジャックして遊ぶんだあ』
「いや、すでに、みんなが地の文というか、二次元の世界に落ちちゃってるよ」
 どうやら、高位次元に存在すると勝手に決めつけたマスターなる存在をこの世界に降臨させようとして、あおりを食らってスライド的に自分たちが一次元下の二次元の世界の住人になってしまったらしい。ああややこしい。
『ふふふふふ、全ての黒幕はこのボクたちだったのだあ。ごにゃーぽ☆』
 ジュピター・ジャッジメント(じゅぴたー・じゃっじめんと)に憑依しているらしい物部 九十九(もののべ・つくも)が嬉しそうに叫んだ。
『――まったく、シリアスブレーカーのつもりか? もともとコメディのどこにシリアスがあるとでも。ああ、略して尻ブレーカーとか。ははは、尻がゲシュタルト崩壊……』
 ジュピター・ジャッジメントの頭の横に、吹き出しでジュピター・ジャッジメントの台詞が表示される。
『うんうん、地の文とか章タイトルとか、いじり放題だよね……。って、地の文はどこにあるのかなあ。地の文出てこい』
 鳴神裁が叫ぶと、頭上からばらばらと文字が落ちてきた。それがうねうねとうねってゲシュタルト崩壊していく。
『ははははは、地の文はボクの物だあ!』
『ちがーう、ボクの物だあ』
ごにゃ〜ぽ☆
ごにゃ〜ぽ☆
「ああ、二人とも、早く気がついて。踊ってるのはみんなの方だよ」
 アリス・セカンドカラーがテレビを叩いたが無駄だった。
つかれちゃったわあ……
 ゼイゼイと肩で息をしながらアリス・セカンドカラーはテレビの中の出来事を見つめた。なんだか、鳴神裁たちとは別の人まで取り込まれているようだ。
 がたた……。
『いたた……。なんか、変な看板がおっこってきたんだもん』
 頭の上に落ちてきた看板を、鳴神裁が拾いあげた。そこには、お子様日曜劇場『機晶殲姫リュクーア』と書いてある。続いて、御丁寧に、『8:30』という時刻表示まで落ちてくる。
『こんな物、ゲシュタルト崩壊だよね』
 ジュピター・ジャッジメント(物部九十九)が言うと、タイトルの文字が溶け始めた。
『あー、なんてことをするんだ。サファイア、じゃなかった、リュークア、出番だよ!』
 黒猫のマー君の姿になった新風 燕馬(にいかぜ・えんま)が、ザーフィア・ノイヴィント(ざーふぃあ・のいぶぃんと)を呼んだ。
『どうしたのだい、マー君。ああっ、それは……』
『よし、リュークア、番組タイトルをぶっ壊す、エンマーの手下をやっつけるんだ』
『おのれ、時間が一時間遅れているのだよ。本当は七時……』
『それはいいから』
 マー君にうながされて、ザーフィア・ノイヴィントが変身した。変身時間は0.5秒なので、バンクがない鷽時空では過程がまったく見えない。一瞬にして、ザーフィア・ノイヴィントは大胆にスリットの入った蒼いチャイナドレスに衣装チェンジしていた。背中には、メタル製の大きな黒い翼が広がっている。
『虚構の真実打ち砕く、正しき嘘を紡ぎましょう――機晶殲姫リュクーア、ここに推参!』
 名乗りをあげたザーフィア・ノイヴィントがポーズをつける。
「ああああ、なんか関係ないはずの人までテレビの中に。いったいどこから突っ込んだらいいんだもん」
 外の世界で、アリス・セカンドカラーが頭をかかえた。
『待て、この世界の地の文は、ボクたちが支配したんだもん。勝手な描写は許さないんだから』
『そーだもん』
 勝手に割り込むなと、鳴神裁とジュピター・ジャッジメント(物部九十九)が文句を言った。
『その通り。この世界は、エンマー様が支配するのだ』
 突如、頭上からローザ・シェーントイフェル(ろーざ・しぇーんといふぇる)の声がする。ジャングルジムの上に、黒のドレスのローザ・シェーントイフェルとゴスロリ衣装のフィーア・レーヴェンツァーン(ふぃーあ・れーう゛ぇんつぁーん)が立っていた。
『うしょしょしょん』
 その背後の空中には、エンマー役らしき鷽が浮かんでいる。
『そうですぅ。ちなみに、今日はフィーアちゃんじゃなかった、「黄のケーニヒ」の誕生日ですぅ』
『私は、「桃のヘスリヒ」と言うことになっている。さあ、私の本気、とくと御覧あれ』
 ローザ・シェーントイフェルが、はち切れんばかりの胸元から巨大な断塞刀をずりゅずりゅと引きずり出し始めた。
 ずりゅずりゅ……。
 ずりゅずりゅ……。
 ずりゅず……ぽろり。
『ああ、ぽろりがあったですぅ』
 叫ぶフィーア・レーヴェンツァーンの横で、ローザ・シェーントイフェルが超巨大な断塞刀をその手から落としてしまった。
 落ちた断塞刀が鳴神裁とジュピター・ジャッジメント(物部九十九)の間に、ずううぅぅんと落ちて地面にめり込んだ。
『ご、ごにゃーぽ☆ 危ないんだもん』
 あわてて飛び退いた鳴神裁が、ローザ・シェーントイフェルを見あげる。
『何をしているですぅ。みなの者、エンマー様のために戦うのですぅ』
 鳴神裁の都合など無視して、フィーア・レーヴェンツァーンが命じた。
『おかしい人たちだと思っていたら、やっぱり悪の手先だったのね。青汁飲んで反省しなさい!』
 ザーフィア・ノイヴィントが、鳴神裁たちをビシッと指さして言った。
『そ、それは、ボクの悪巧みなんだもん。そっちが飲んじゃえ!』
 マスターに飲ます予定だったペットボトルに入った青汁を、鳴神裁がザーフィア・ノイヴィントにむかって投げつけた。
『きゃっ』
 ふいをつかれたザーフィア・ノイヴィントが、逃げることができずに思わず頭をかかえてうずくまる。
 そのとき、どこからともなく飛んできた丸太が、青汁のペットボトルを叩き潰して地面に突き刺さった。バシャンと、派手に青臭い液体が周囲に飛び散る。
『な、何者だ!』
 髪の毛から青汁を滴らせながら、ローザ・シェーントイフェルが叫んだ。
『このオレに、死角なんざねえのよ』
 近くの滑り台の上に立って、片足をおこちゃまバケツの上においたレオパルド・クマ(れおぱるど・くま)が、サーモンジャーキーを銜えながらつぶやいた。
『喧嘩屋レオパルド様♪』
 ザーフィア・ノイヴィントが、レオパルド・クマにむかってハートマークを飛ばした。
『ちっちっちっ。お嬢さん、俺に惚れちゃいけねえぜ。俺は不器用だからよ〜。一人しか愛せない。本気になったら手を焼くのはおまえだぜ』
 用意しておいたお約束の台詞を言いながら、レオパルド・クマが人差し指を振った。
『今だ! ええっと……何ちゃんじゃったかのう?』
『ラブリー、たっゆん、リュークアなのだよ♪』
 ぼけるレオパルド・クマに、ザーフィア・ノイヴィントが答えた。
『今、殺意覚えた』
『ええっ、そうかなあ』
 ザーフィア・ノイヴィントの言葉で目をぎらつかせる鳴神裁に、ジュピター・ジャッジメント(物部九十九)がきょとんとした顔で言った。
『いくぞ必殺、リュクーア・シュピラーレ・シュトラール!』
 両手を広げて二色のビームを放ったザーフィア・ノイヴィントが、それを不条理にも捻り合わせて鳴神裁たちやローザ・シェーントイフェルたちの方へとむけた。
『あっ、危なっ!』
 あわてて四人が避けるが、背後にいた鷽は避けきれずに直撃を受けた。
『うしょしょしょしょ!!』
 鷽の消滅と共に、テレビの中の世界がゲシュタルト崩壊を始めた。
「ああ、どうしたら……。まるで夢の……」
 テレビをゆすっていたアリス・セカンドカラーが、だんだん力が抜けてふにゃーっとなる。まるでふわふわと力ない綿菓子のようだ。そのまま、テレビの中に吸い込まれていった。
『あー、真犯人だ!』
 ジュピター・ジャッジメント(物部九十九)が、鳴神裁と共にアリス・セカンドカラーを指さした。
『なぜ分かった!』
 なぜか、マー君こと新風燕馬が叫ぶ。
『実は、俺こそが、世界征服を企む悪の帝王エ……』
 プチ。
 そこで、テレビのスイッチが切れた。