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イコン博覧会2

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イコン博覧会2
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リアクション

 
 
「情報収集終わったよ。聞きたい? ねえ、聞きたい?」
 演習場を高高度から撮影していたグレイゴーストの中で、各機の分析が終わったアニス・パラスが佐野和輝に訊ねた。
「もったいぶらずに、早く報告しろ」
 佐野和輝が急かす。
「ええとね、一番頑丈なのが六天魔王かな。おっきいし。でも、後は普通だね。だけど、長距離の攻撃が凄いよ。他のイコンがそれを避けて近づけるかだよね。
 一番速いのはゼノガイストかなあ。それに、すぐ近くでしか使えないけど、武器が一番凄いよ。あたったら、他のイコンなんてもたないかも。それに、ほとんど射撃なら避けられると思う。
 シュヴァルツ・zweiは、速いけど、いろいろとゼノガイストには負けちゃってるかなあ。でも、なんだか秘密があるみたいな……。
 アペイリアー・へーリオスは消えちゃうから凄いよね。
 リトルシルフィードは……。死なないといいよね」
「それは不吉すぎるだろ。さて、それじゃ、戦いの開始の合図を鳴らしに行くか」
 そう言うと、佐野和輝がグレイゴーストを急降下させた。今回の模擬戦に参加はしていないが、グレイゴーストはS−01をベースとした強行偵察が可能なマルチタイプのイコンだった。主翼は前進翼で、機首にはカナード翼を持っているのが特徴的だ。パイロットの能力も加味しての高速移動、長距離からの大火力の予測攻撃を得意とする。
 一気に降下すると、佐野和輝は地面すれすれで水平飛行に移った。待機しているイコンの間をすり抜け、衝撃波で地上の土埃を巻きあげながら演習場の中央に進み、急減速と共に地上形態に変形して止まった。
『準備はいいか?』
 各イコンに問いかけるが、待ったをかける者はいない。
 それを確認するとグレイゴーストが再び飛行形態に変形した。ベクターノズルを巧みに使って、中空に直立したままゆっくりと周りを見回すかのように回転する。
『さあ、いよいよ模擬戦が開始されます』
 期待に満ちた声で、シャレード・ムーンが告げた。
「ふふふふ、このときを待っていたわ。イコンなんて皆破壊よ!!」
 それまでどこに潜伏していたのか、突然シルフィスティ・ロスヴァイセが演習場にむかって走りだした。
「お嬢、発見しましたぜ。やっぱり、模擬戦会場でさあ」
『すぐに取り押さえなさい。応援も頼んだから』
 シルフィスティ・ロスヴァイセを確認したヴィゼント・ショートホーンの報告に、リカイン・フェルマータからすぐさま指示がきた。
「届くか……、ライトニングブラスト!」
 何かしでかされて困ると、ヴィゼント・ショートホーンがシルフィスティ・ロスヴァイセにむかって容赦なくライトニングブラストを放った。どうせ、この程度で死ぬようなシルフィスティ・ロスヴァイセではない。電撃で麻痺させて、行動不能にできればいい。
こんなのなんともないわ
 直撃ではなかったものの、多少のダメージを受けてシルフィスティ・ロスヴァイセがふらついた。だが、まだ動けるようだ。
「しぶとい……」
 ヴィゼント・ショートホーンが確保にむかおうとしたときであった。突如、何者かの走る地響きが聞こえてきた。
「ティラティラティラティラティラ(待ってて、私のイコンちゃん)」
「暴れティラノだあ!」
 突如現れたティラノサウルスにイコン輸送車をまたがれて、猿渡雉秋が叫んだ。
「なんで、こんな所にキャロリーヌが……」
 ヴィゼント・ショートホーンが絶句して、思わず立ち止まる。その隙に、キャロリーヌが演習場へと駆け込んでいった。
 ぷちっ。
「ティラティラティラティラティラ(なんか踏んだ? ああっ、フィス姉さん!? 生きてます?)」
 自分が踏みつぶして気を失わせたシルフィスティ・ロスヴァイセを、キャロリーヌがあわててつまみあげた。
「今だわ!」
 その一瞬の隙を突いて、有栖川美幸の乗った不知火・弐型が突っ込んできた。リカイン・フェルマータの要請を受けて、ちょうど間にあったのである。
 そのままキャロリーヌをベアハッグの体勢に持っていく。シェルフフローターがキャロリーヌごとつつみ込むような位置に移動して力場を発させていった。
『お騒がせしました。どうぞ模擬戦をお続けください』
 そう言い残すと、有栖川美幸は不知火・弐型の最大速度でシルフィスティ・ロスヴァイセごとキャロリーヌを元のふれあい広場へと連行していった。
『ええっと……、とにかく始めちゃってください。早く早く』
 これ以上邪魔が入ってはたまらないと、シャレード・ムーンが佐野和輝を急かした。
「よし、アニス、ミサイル全弾上むき開花で発射!」
「りょーかいだよ」
 直立していたグレイゴーストから、一斉にミサイルが上方へと発射された。同時に、アフターバーナーを噴かして、グレイゴーストが急加速をしてミサイルを追い越し高高度へと戻る。
 広がったミサイル、いや、花火が周囲で炸裂した。それを合図にして、各イコンが一斉に動いた。
『今だよ、メフォスト!』
 パワードスーツ輸送車の上空でずっと待機していた鳴神裁(物部九十九)がメフォスト・フィレスにむかって叫んだ。
「よーし、行ってくるのだよ。飛んでっけー!」
 メフォスト・フィレスが、鳴神裁(物部九十九)のパワードスーツを神出鬼行で転移させた。リトルシルフィードの足許に現れた小さな魔法陣と共に、リトルシルフィードの機影が消える。
 一気に、グラキエス・エンドロアの乗るシュヴァルツ・zweiの眼前にリトルシルフィードのパワードスーツが現れる。
「この距離でギロチンアームを食らったら、イコンだって頭が吹っ飛んじゃうよ。ごにゃ〜ぽ☆
 満を持して、リトルシルフィードがシュヴァルツ・zweiにむかって腕に取りつけられたハサミ状のクローを突き立てようとした。
「パワードスーツの奇襲だね。これならば……」
 装甲の薄いセンサーアイのカバーを狙えば、確実に内部機構を破壊できると平等院鳳凰堂レオが身を乗り出した。センサーを破壊してしまえば、小型のパワードスーツだからこそ、相手を翻弄できる可能性も生まれる。
 だが、鳴神裁(物部九十九)必殺のギロチンアームは空を切った。
 突然現れた鳴神裁(物部九十九)のリトルシルフィードと同様に、シュヴァルツ・zweiの足許に魔法陣が現れて、イコンが突然消えてしまったのである。
「激甘ですね。自分ができることなんて、たいてい他人もできるんですよ。しかも、より上手にね」
 神出鬼行でシュヴァルツ・zweiを転移させたエルデネスト・ヴァッサゴーが、ふふんと鼻を鳴らした。
ごにゃ〜ぽ☆ だったらもう一回だよ。メフォスト〜♪」
 何度でも追い詰めてやると、鳴神裁(物部九十九)が、メフォスト・フィレスに再び神出鬼行による転移を頼んだ。
『ごめん、遠すぎるのだ』
 あっさりとだめ出しが来る。同じ機体に乗っているわけではないのだ、当然、有効距離という物が存在する。
「ご、ごにゃ〜ぽ☆ 油断した〜
 的になっては大変と、鳴神裁(物部九十九)が移動しようとしたときだった。
 離れた所に出現したシュヴァルツ・zweiを狙って、ゼノガイストが最大戦闘速度で突っ込んできた。一気にファイナルイコンソードで決めるつもりだ。
 あわてて、鳴神裁(物部九十九)がその高機動性を生かして紙一重でゼノガイストを避ける。だが、それがいけなかった。
 リトルシルフィードの至近距離を、ゼノガイストが超音速で通りすぎる。機体から発生したショックウェーブが激しくリトルシルフィードを打ちのめした。バランスを崩して降下するところを、発生したボルテックス・タービュランスがリトルシルフィードを巻き込んで翻弄する。リトルシルフィードの機体があらぬ方向へと引っぱられ、捩られ、薄い装甲のあちこちに亀裂が走った。
ごにゃ〜ぽ☆ もうだめだあ〜
 乱気流で機体をぼろぼろにされ、リトルシルフィードが墜落する。
もらった!
 リトルシルフィードを半ば無視した柊真司が、シュヴァルツ・zweiにむかってファイナルイコンソードを繰り出した。
 チャージを受ける形になったシュヴァルツ・zweiが、ソードブレーカーで受け流そうとするが、とても受け流すどころではなく、左手の手首から先を一気に持っていかれる。剣が斬り返されて戻ってくる前に機体をローリングしたシュヴァルツ・zweiは、ノイズグレネードを放出すると素早く距離をとった。
『――仕留められなかった。いったん高高度待機。状況を把握し直す』
 ヴェルリア・アルカトルに告げて、柊真司がゼノガイストをいったん上昇させた。その姿を真横からグレイゴーストがカメラに収める。
『やらーれちゃった、やらーれちゃった♪ 悔しいけれど、もう終わり。帰ろうかな……、帰っちまえ♪』
 なんだか変な歌を歌いながら、PSラインダンサーズのパワードスーツ六機が、手を繋いで花いちもんめの要領で戦場を進んでくる。
『おーい、生きてるかー?』
 猿渡剛利が、墜落したまま動かないリトルシルフィードに声をかけた。
『大した怪我はありませんが、裁さん完全に気絶しちゃってます』
『ヤッ!』
『ヤッ!』
 ドール・ゴールドの返事を聞いて、三船甲斐と黒墨弥助が空中を蹴るまねをする。
『あっけなかったですね』
 ちょっとがっかりしたようにミカエラ・ウォーレンシュタットが言った。
『はい、回収、回収』
『よいしょっと』
 トマス・ファーニナルに命じられて、テノーリオ・メイベアがひょいとリトルシルフィードを担ぎあげた。
『さあ、みなさん、最後の見せ場です。踊りながら戻ってきてください』
 魯粛子敬が、懲りずに指示を出した。
『皆様方、鳴神裁とPSラインダンサーズの華麗なる退場の舞をお楽しみください』
 猿渡雉秋がナレーションを加えた。