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【神劇の旋律】三姉妹怪盗団、参上!

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【神劇の旋律】三姉妹怪盗団、参上!
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第2章 警備班の下準備

 つい先日、ストラトス・ティンパニを入手したばかりの大富豪。
 彼は、この世の春を謳歌していた。
「ティンパニと共に、依頼主のあなたも護衛させていただきます」
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は巨乳で眼鏡なメイド、ステラ・ウォルコットと名乗り傍らに侍る。
「素敵なオジ様ー」
 不自然な程大きな胸と獣耳と眼鏡のメイドカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が手を取る。
「本当に、惚れ惚れしますわ」
 リース・バーロット(りーす・ばーろっと)も巨乳を揺らし、眼鏡を光らせる。
「それで、お願いがあるのですが……」
 同じく巨乳眼鏡の志方 綾乃(しかた・あやの)が、媚びるように富豪の顎を指でなぞる。
「げはははは! 何だ何だ、何でも聞いてやるぞ!」
 護衛の少女たちに囲まれ、上機嫌な富豪の笑い声が屋敷中に響き渡った。
(よしよし、上手くやっているようですね)
 その様子を見守っているのは戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)
(何とかいい情報を引き出してくださいね……)
 パートナーのリースがその視線に気づいて、片目を瞑った。

「うん、これで良し」
 ティンパニの目だたない所に小型の機械を取り付けたルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、満足そうに頷いた。
「本当は、皮を外して中に付けたかったんだけどね」
「勘弁してくれよ」
 ルカルカの言葉に、レオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)は苦笑いを浮かべる。
「ただでさえ、触れるな傷つけるなって五月蠅いんだ。皮なんか取ろうもんなら何言われるか……」
 ちらりと富豪の方を見ると、肩を竦める。
「ま、ま。仕事は仕事。割り切ってがんばろうよ」
 ルカルカは慰めるように、ぽんとレオンの肩を叩いた。

「私は入口で不審者のチェックを行います」
「うむ。ローザは変装して依頼者の側で護衛をしている。わらわは、そなたを利用させてもらうとする」
 入口に立つのは御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)
 そこから、森の中へと繋がる道で作業をしているのはエシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)
 エシクの黙々とした作業の結果、森中の出口には落とし穴、木々の間にはワイヤートラップが仕掛けられた。
「ご協力、感謝します」
「いいえ。私どもも丁度穴を掘りたいと思っていた所でしたから」
「助かっちゃったね!」
 エシクの作業を手伝ったのはアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)デメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)
 あまりに堂々とした作業っぷりに、エシクは彼女たちが同業だと思い込んでいるが、実は彼女たちはドクター・ハデス(どくたー・はです)の命でティンパニを盗むための手段として落とし穴を掘っているのだ。
 お互いに、敵同士の立場とは気づかないまま泥だらけの顔で微笑み合う。

「ん。入口の警備は万全みたいね。じゃああたし達は館内をもう一度チェックしようか」
 入口の千代とグロリア―ナを見て、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は恋人であるセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の顔を覗き込む。
 顔を傾けた拍子に、慣れない眼鏡がずり落ちそうになる。
「そうね。怪盗が通る場所、私達が隠れる場所…… 最善の手を尽くさなきゃね」
 獣耳を揺らして、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が答える。
 二人とも、もちろんメイド姿だ。
 怪盗の逃走経路をチェックすべく、二人は再び館内を見て回る。

「はあ……」
「どうした、レリウス。具合でも悪いのか?」
 警備中、眉間にしわを寄せて重い溜息をついたレリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)を心配し、ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)はレリウスの顔色を確かめる。
「いや、そうではないんです」
 レリウスは言うべきかどうか僅かに逡巡した後、ハイラルに事情を告げる。
「実は、グラキエスがこちらに来るかもしれないのです」
「お披露目会にか?」
 ハイラルはレリウスの友人であるグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)の顔を思い出す。
 楽器に興味があるようには見えなかったが……
「いや、ティンパニを見に来るのではなく、盗む方で」
「は、なんだそりゃ!?」
 思わず大きな声を上げるハイラル。
「そんなにティンパニが欲しいってのか?」
「多分、楽器が欲しいわけではなく、遊び半分……俺を、誘っているのでしょう」
「あー、なるほど、遊び相手か。よっぽどお前に構って欲しいんだな」
「ふふ……」
 一人頷いていたハイラルだが、隣のレリウスの静かな笑い声を聞いて動きを止める。
「レリウス?」
「面白い。だとしたら全力で応えなければ!」
「っておい、そんな所でスイッチ入るのかよ!」

「いやー、しかしいっぱい警備がおるんやなぁ」
「……ああ」
 一人静かに警備状況を確認していたセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)は、ふいに大久保 泰輔に声をかけられ僅かに警戒の色を滲ませる。
 それを意にも解せず、泰輔は笑顔で続ける。
「なんや、こんなによーけ人がおったら、こん中のどっかに犯人の協力者が潜んでるんちゃうかー?」
「まさか」
 冗談交じりの泰輔の言葉を、セリスは笑い飛ばしてみせる。
 背筋に冷たい汗を感じつつ、あえて、一笑で。
「はっはっは、せやなぁー」
 二人の妙に空々しい笑い声が、周囲に響いた。