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「きゃーっ!?」
「ひっひひっ」
 木本 和輝(きもと・ともき)は暴走化していた。
 頭には角、尻に黒い尻尾。牛のような格好をした男は、赤黒いオーラをまといただならぬ声を上げていた。
 まさにその姿で、一般女性へと襲いかかろうとしていた。
「やめるのじゃっ、和輝!」
 パートナーの雹針 氷苺(ひょうじん・ひめ)は戸惑いの表情を浮かべながら【魔銃カルネイジ】を、和輝に向けて発砲した。
 和輝はうなり声を上げると、氷苺へと襲いかかる。
 和輝の手は鋭い風を起こし、氷苺のスカートを一瞬で隠れていた太ももがほとんど見えるくらいまでにズタぼろにしてしまった。
「くっ……もう、和輝にわらわの声はとどいとらんのか?」

「おい、大丈夫かよ。助けに来たぜ?」
 氷苺の背後から、血を全身に浴び、ショットガンを構えた国頭 武尊(くにがみ・たける)が現れた。
「すまぬ、バカ和輝が……」
「そいつはいけねえな、脚をつぶせばどうにかなりそうだが……」
 武尊は、氷苺から視線を外し前を見る。
 和輝の横に、まるでパートナーのように【ハイゾンビ】がどっしりと腰を構えていた。
 氷苺の頭ではこのままでは、和輝と二度と一緒に居られなくなるのではないかなどと、いろんな考えが巡り始めた。
「おい、嬢ちゃん大丈夫か? 何なら俺が――」
「和輝はわらわが、やる。すまんがあれの相手をたのめるかの?」
 氷苺は決意を決めたように、前を見るとハイゾンビを武尊に任せて和輝に向かって歩いていった。

                    §

「……まっ、大丈夫ならいんだが。さて……あいつか」
 武尊は頭をかきながら、こちらを睨んできているハイゾンビを見た。
 ひとまずショットガンで牽制をかけると、ハイゾンビはこちらに向かって走ってきた。
「ちっ」
 気がつけば武尊のズボンにはナイフのような、鋭い牙で切り裂かれた後がついていた。
 同時に、ポケットに入っていた携帯に電話が入る。
「苦戦してるみたいだぜ?」
「ああ……どうにかならないか」
「そこにh&kという服屋があるだろ? そこにそいつをご入店させてやれ」
 電話相手は、警備室で見張ってくれている猫井 又吉(ねこい・またきち)だった。
 武尊は携帯を直し、周りを見渡すと、すぐにその店を確認できた。
「こっちだこい、犬っころ」
 武尊が店に入り、犬に威嚇射撃すると、すぐにハイゾンビは店へと入ってきた。
 それと同時にシャッターが閉まり始める。
 武尊はシャッターが人、一人分通れる暗いまで閉まるのを待った。
「今だぜ!」
 勢いよく閉まるシャッターへとローリングし、元の場所へでた。

               §

 氷苺には作戦があった。だが、あまり乗り気ではなかった。
 ずっと一緒に闘ってきた相棒にはやりたくない事だった。
「来るのじゃ……ともきっ!」
 和輝は鋭い声を上げると、勢いよく氷苺に襲いかかった。
 氷苺は、よけようとはしなかった。
 和輝の切り裂く風が、氷苺のスカートを通り抜け素肌へ一筋の傷を負わせた。
 思わず顔をゆがめる氷苺だったが、手元から【紅の魔石の欠片】を取り出した。
「この阿呆が……手間をかけさせおってからに……」
 和輝の体は白い光に包まれた。そして、冷たい氷に全身覆われ、まるで肖像のように固まった。
 
               §
「終わったぜ……」
「次の救援者だぜ」
 二人はずっと謝礼がもらえると信じて客を次々と救出していた。
 店のそばで座り込んでいる武尊は次の救援者を聞くべく、携帯電話で又吉と通話中だった。
 その携帯電話に次の救援者に関するメールが届いた。
「今度は、キングゾンビをみつけたみたいだぜ」
 メールには「地下ゴミ倉庫」と書かれていた。