百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

ゾンビングモール

リアクション公開中!

ゾンビングモール

リアクション

「困りました……何処行ってもゾンビだらけですね……」
 非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)は、狭い通気口の中に居た。
 後ろには複数人の一般人を連れて避難しているところだった。
 そんな中で遠くからルカルカの避難を促す声が聞こえてきた。
「ホールというと……ここからでないと行けないのだよ」
 イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が、エリアマップを広げて居場所を確認していた。
 そして、マップの形から中庭にはどうしても、通常の通路をとおらなければいけないことを示唆していた。
「でも、危険でございません?」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)がそれを反対する。
「……背に腹はかえられません。いつまでもこの狭い中に潜っているのもきついでしょうし」
 若干、ふくれっ面をしながらも渋々と、あるティアは頷いた。
 近遠は、勢いよく横にある通気口のふたを蹴飛ばすと、通路に出た。
 あたりにはローゾンビとハイゾンビがちらかってるように居た。
 そして、もう二人男性がゾンビと闘っているのが目に入った。
 
「喉がさすがに乾いてきたかなあー」
 ゾンビとなっていた椎名 真(しいな・まこと)はちらりと、篠原 太陽(しのはら・たいよう)を見た。
 だが、太陽は首を縦には振ってくれなかった。
「甘えるな、少しは耐えて見せろ」
 太陽がそう言うと、背後の通気口から人がぞろぞろ出てきたのが見えた。
「あら、先客がいらっしゃったのですわ」
 通気口から出るなり、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が先に真達へと話しかけた。
「おや、スクープだな」
 太陽がユーリカ達に気がつくと、手元にもっていた一眼カメラを構えて来た。
「それは何ですか?」
「ん、記念になるだろうとおもってだな」
 ジト目で、伺ってくる近遠に太陽は歯を見せて笑いながら答えてくれた。
「そんな和やかな話をしてる場合でないでございます」
「ハイゾンビですわ!」
 ハイゾンビ達が数匹も束ねてやってきたことにいち早く気がついたのはユーリカだった。
 その場の全員に緊張が走った。
「やるしか無いね」
 じわりと迫ってくるハイゾンビ達の前に、真は突然可愛らしい熊をとりだした。
 その熊の手にはなんと、アサルトライフルがガムテープで固定されていた。
「なっ、なんですかそれ!?」
「ちょっと、おもちゃ屋さんで拝借した、男らしいぬいぐるみだよ。それをちょちょいと改造して……」
 近遠の質問に、真はたんたんと答え熊のスイッチを入れた。
「ハッハッーファ――」
 ぬいぐるみは声を上げると、動きながら近づいてくるハイゾンビ達を的確に撃って近づかないようにしていく。
 ただ、倒すには足りないようだった。
「ええええいっ!」
 怯んでいるハイゾンビを狙って、【ウイングソード】を持ってイグナが先になって突っ込んでいく。
 周りのローゾンビ達を近遠が、【サンダーブラスト】の電撃で一気に蹴散らしていく。

「後ろからローゾンビの大軍が来るのですわ!」
 周りを【ディテクトエビル】で警戒していたユーリカが叫んだ。
 そちらの方向に立ったのは、真だった。
「俺だけでなんとかしよう」
「無茶です」
 ハイゾンビを相手しながら近遠が言ったが、真は下がろうとはしなかった。
「ヴァアアアアアア」
 その大軍のゾンビ達の中に、真は一人突っ込んでいった。
 途端に片足が取れる。
「いくらゾンビでもあの量では……無理でございませんの?」
 一般人に近づいてくるローゾンビを倒しながらアルティアが太陽に聞く。
 太陽は面白そうにカメラを構えて居た。
「ああ、『俺』がどこまでやってくれるか見てみたいのでね」

 真はローゾンビにもまれる中で、取れた脚をくっつけた。
(何か一気に吹き飛ばせるようなものを……お?)
 真がローゾンビのスキマから見つけた者はショッピングカートだった。
「ヴァアアアッ!?」

 すべてのハイゾンビを倒し終え、ローゾンビへと向かった近遠は目を疑った。
 ゾンビ達がまるでトランポリンに乗ってるかのように回転しながら飛んでいく。
「えっ、何が起きてるんですか!?」
「……あちらの方がショッピングカートを持って向かって来てる見たいでございます」
 真は、ショッピングカートと【お引取りくださいませ】を使いながら突っ込んできていた。
 結果、ローゾンビはすべて消えてしまった。
「ふう……どうにかなったね……。ところで太陽、そろそろ血を……」
「だめだ」
 即答だった。
「じゃあ、えっと君たち、カガチ達を見なかった?」
 突然、真は近遠達に聞いた。
「ごめんなさい、ここまで見てないです……」
「ここに来てるはずなんだけど……いろんな意味で無事なのか心配だなあ」
 真はぽつりとつぶやいた。