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リアクション
「あ。リカインは? どうするのよ?」
言い出しっぺのシルフィスティがパートナーを振り返った。
「ん? あぁ。私は入口で留守番でもしてるわ。ないに越したことはないけど、万が一への備えは必要でしょ」
にこりと微笑む。
シルフィスティが《テレパシー》で中の様子を伝達してくるつもりなら、尚のことだ。
実際のところは今回の依頼にセイニィが絡んでいるので、パートナーの暴走を心配して、ついて来たようなものなのだが……
(フィス姉さん、珍しく真面目にやる気っぽいし、放っておいても大丈夫みたいね)
そう判断しての選択だ。
「一人で?」
「大丈夫よ。何もなければ、出番はないわ。それに並大抵のことなら――」
と胸を叩く。纏うのはレゾナント・アムーズ。彼女の鎧であり、武器。
納得したシルフィスティが頷くと同時、通信端末が鳴った。
『……陽動…部隊……目標と接触……作戦通り、これより交戦を開始する……』
「行くわよ、セレアナ」
「えぇ。セレン」
「――では、後を。積荷のことはよろしく頼むであります」
「銀パト、出動☆ クリアーエーテル!!」
走り出す背に続こうとしたシルフィスティがピタと足を止めた。
くるりと振り返る先にいるのは――勿論、セイニィだ。
「じゃ、あたしは先に行かせてもらうわ。あとよろしく。ネコ娘」
「――いいけど……って! 誰がネコ娘よっ!? やっぱり、喧嘩売ってんでしょ!!」
「フィスが勝負したいのは丸くなったあんたじゃないわ。そんなのに勝っても胸張れないから、今日はパス」
言いたいこと言って満足したのだろう。
背後で怒鳴るライバルなぞ気にも留めず、自慢の身体能力であっという間に洞窟へと消える。
(喧嘩だけはしっかり売るのね……フィス姉さん)
『――入ってすぐは乗り物ばっかりよ。まだ敵は見えない。奥に進むわ。えーと、そうそう。ポイントC3』
リカインは、思わず苦笑して天を仰ぐ。その脳裏にパートナーの明るい声が響いた。
* * *
目には見えない――けれど、何かひんやりとしたよくない気配を感じて、シルフィスティは足を止めた。
「どうしたでありますか?」
剛太郎が背後を警戒しながら問う。
「うん? や、なんか――」
野生の勘――いや、ヴァルキリーとしての経験が警鐘を鳴らす。
――キィィィン
と、岩陰から剣風が起こった。
一閃の軌跡を追うように音を立てて空気が凍っていく。
空間を侵食する冷気が得物を握る手を狙って伸びる。
だが、それが絡め捕ったのは《ミラージュ》による幻影に過ぎない。
寸でのところで難を逃れたシルフィスティは半歩飛びずさって周囲を見回す。
「誰!?」
「どこだ!?」
異口同音に誰何の声を上げるが視界には何もない。
いや、二人の視界の端を小柄な影が横切る。
だが、追い切れない。
僅かな気配と衣擦れの音を残し、影は巧みに死角へと逃れていく。地の利を最大限に生かす戦い方を心得た者の動きだ。
(ここまでは――我ながら上出来じゃのう)
《軽業》で岩肌の窪みに身を滑り込ませた辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)は年の割には大人びた面に冷笑を浮かべた。
(さ。避けられるのかぅ?)
爪先でを岩肌を蹴り、くるりと一回転しながら袖に隠したダガーを地上目掛けて放つ。
風を切って剛太郎とシルフィスティに迫る刃。
「後ろ! 伏せて」
だが、それは突如起こった衝撃波によって地面に叩きつけられた。
二人の後ろにいたあゆみの《真空破》だ。
「――そう上手くははいかんか」
そうごちると刹那は空中で態勢を立て直す。
身体を屈めた反動で壁面に身を寄せたかと思うと再び三人の視界から姿を眩ました。
* * *
見えない刺客――刹那の気配を追った三人が辿りついたの大きな空間だった。
食堂なのだろう。剥き出しの大岩を利用したテーブルに丸太を切っただけの椅子が並ぶ。
安物のアルコールの匂いと紫煙が色濃く立ち込めている。
と、待ち構えていたかのように七、八人の男たちが立ち上がった。
最奥でふんぞり返っていた中年男が剣を片手に口の端を釣り上げた。
「頭の留守に好き勝手されたんじゃぁ、留守を預かるペリド様の名折れだなぁ」
その声に従うかのように、残りのゴロツキたちが斧や銃を構える。
「抵抗するの? ……じゃあ、こっちも命の保証はしないわよ」
シルフィスティが剣を、剛太郎が無言で銃をそれぞれ構える。
「銀河の平和も一歩から! ご存知銀パトの愛のピンクレンズマン参上よ!」
そこにあゆみが続く。
「野郎どもぉ、かかれぇい!」
戦いの火蓋が切って落とされた。
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