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リアクション
03:勇者たちの戦い
時系列は前後する。
体育の授業に出る予定で校庭に出ていた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)とベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、校庭が割れて地下から飛び出してきたロボットにびっくりしつつ、「あなたは誰?」と尋ねる。
すると、その黄金のロボットは答えた。
『我は剣……我は盾……我は守護するもの……我は勇者……我が名はグラディウス』
「グラディウス……あなたに乗ればいいの?」
『Yes……Yes……Yes……』
「わかった。行こう、ベアトリーチェ!」
「はい!」
こうして二人は勇者に乗り込んだ。
「ふふ……ふふふ……とうとう時が来たようじゃの。行くぞ忍。第六天魔王を呼ぶ時じゃ」
織田 信長(おだ・のぶなが)には記憶があった。かつて昔の自分が第六天魔王として悪と戦ったことがあると。だから信長は呼んだ。
「来い! 第六天魔王!」
指を鳴らし、大声で叫ぶ。と、天空から雲を切り裂いて漆黒の馬に乗った漆黒の機体が降りてきた。
「これが、勇者か?」
桜葉 忍(さくらば・しのぶ)が信長に尋ねると、信長は「そうじゃ」と答える。
「行くぞ忍!」
「了解!」
そして、第六天魔王が発進する。
遠くの空から颯爽と滑空して現れたのは、白を基調とした翼を持つ機体。その機体は名乗った。
『我は自由な風……我は自由な翼……力あるものよ……弱者を守れ……我が名はウィンダム』
その声は、高崎 朋美(たかさき・ともみ)とウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)だけに聞こえた。
「力がある者は、弱いものを守る義務がある」
シマックがそう呟くと。ウィンダムはそれを肯定した。
「ボクは街を、みんなを守る!」
『ならば我を使え……』
「わかった!」
そして朋美とシマックはウィンダムに乗り込んだ。
猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)とセイファー・コントラクト(こんとらくと・せいふぁー)は気がつくと機体に乗り込んでいた。
学校に近づく敵を掌で打ち据え、剣で切り裂く。
何故? 何故私はこんなところでロボットやら巨大生物やらと戦っているのだろうか……?
セイファーは内心混乱しながらもモニタに流れるデータをてきぱきと処理していく。
「三歩前進して、機神掌をどうぞ」
「OK! 機神掌!!」
オリュンポスのロボットに掌底を放つと、ロボットは大きく吹き飛んだ。
「よし、雑魚を片付けたら要塞だ!」
「イエスマスター。バルムングはフルパワーで稼動させます。ですのであの程度の敵さっさと片付けてください」
(意訳:全力でサポートしますので頑張ってください)
「了解!」
「よし、みんな、行こう!」
フレイ・アスク(ふれい・あすく)が操縦桿を握って、ペダルを踏み込みながら叫ぶ。
「システムオールグリーン。エラー無し。行けるよ!」
アポロン・サン(あぽろん・さん)が状態をチェックしてGOサインを出す。と、
「あれは何!?」
突如出現して戦闘を始めたロボット群にリカインが疑問の声を上げる。
しばらくして、技術部から通信が入った。
「あれは、勇者だ」と。
「本当ですかドクター高天原!?」
ルースが鈿女に尋ねる。
「間違いない。連中のエネルギーパルスはハーティオンのものと一致している。オリュンポスと対になる存在、人類の抗体が覚醒したんだ! だが……」
「問題は連中が子供であるということ。なんの軍事訓練も受けていないこと。すなわち、パワーやスピードはあるがそれを効率良く扱うすべを知らない新兵以下ということだ」
薫のその言葉に、オペレータ達は頭が痛くなる。
「なんてこった……手綱はこっちが握らないとな」
ルースはそう言うと鈿女に勇者の通信周波数を聞いてチャンネルを開いた。
「聞こえるか子供たち! 俺は国軍のルース・マキャフリーだ。いいか、よく聞くんだ。ゲームみたいに隊列を……パーティーを組んで、離れずに戦うこと。何があっても後退しないことを考えて戦え。君等に与えられた力は、人々を守るための力のはずだ。バックアップは国軍が全力で行う。絶対に犠牲を出さないで勝利しろ!」
『わかりました!』
フレイが答える。
『ふん! この信長にそんな心配は無用。じゃが、悪くない』
信長は機体を操りながら憎まれ口を叩く。
勇者たちの活躍で学校周辺の敵の数が減ってきた時、新たに一機のロボットが現れた。
「ひゃあああああああはっはっはっは!」
陽介の操るプラヴァーだった。
アサルトライフルの弾幕が勇者たちを襲う。
「シールド展開!」
アポロンがビームシールドを展開してその攻撃を防ぐ。
「来いよッ!! 勇者共! この俺を超えてみせろッ!!」
シールドに激しくビームの弾幕が注がれる。
「国軍を撃破したようじゃが、勇者の前では力不足よ! 第六天魔砲、発射!」
不気味な形をしたランチャーにエネルギーが集まり、高まっていく。
「何? このエネルギー!? これが、本当の勇者!?」
その数値をモニターしながら甲斐が叫ぶ。その値は、常識では考えられないエネルギー量だった。
そして、収束されたエネルギーが信長の意思で放出される。それは奔流となり陽介のプラヴァーに襲いかかる。
「そんな! バカな!!」
脱出装置が、自動で動作する。陽介とクレイは、エネルギーの渦に飲まれ機体が消滅する直前に脱出した。
「やった!」
美羽が歓声を上げる。信長の攻撃と同時に、周辺の敵もほぼ一掃したからだった。
「ほっほぅ、やりおるのう。そうでなくては面白うないわ」
要塞の中でそう呟いたのはメイスン・ドットハック(めいすん・どっとはっく)。オリュンポスの魔術部隊の一人だった。
「衛、ルーン展開しいや。要塞砲をぶっ放す」
メイスンが語りかけたのは【オリュンポス魔術師長】の鵜飼 衛(うかい・まもる)だった。
「ほいほい。了解じゃ。わしに任せろ……フェイヒュー・ウルズ・スリサズ、大神、禍津神、まつろわざる神々よ……生贄の羊とともに我助力請い願わん。その力、一万のルーンとなりて我が力と成れ!」
衛の詠唱とともに要塞の周囲に一万のルーン文字が浮かび、結界を生成する。それは同時に要塞砲の動力源でもある。
「それでは、私もご助力いたしますわ。父なるイグよ、暗きハンよ、永久の眠りにつけし彼の者の力、我に与えよ」
ルドウィク・プリン著 『妖蛆の秘密』(るどうぃくぷりんちょ・ようしゅのひみつ)が呪文を唱えると、外なる宇宙にて太鼓とフルートの音色を聞きながら眠りにつく無限の中核に棲む原初の混沌の力のほんの一部を借り受ける。
「ふふ……快感ですわ愉悦ですわ。邪神のチカラ……勇者たちに魅せて差し上げますわ。メイスン様、よろしいですわよ」
「よか。十六凪、射線計算データよこせ!」
「了解です」
オリュンポス・パレスの生体コンピュータであり工場でもある天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)が、各種条件を計算した射線の計算データをメイスンに転送する。
「修正完了……ターゲットロック。ルーン魔導砲、発射!」
そして、要塞から強烈なエネルギーが発射された……
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