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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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 同時刻 シャンバラ教導本校 資料室

「イコンに空を飛ばれては、うちのPS隊に出来る事もないしな……今回は調査でもするか」
 そう呟きながら、三船 敬一(みふね・けいいち)は書架に収められた資料の一つを手に取った。
 教導団の資料室の一つ。そこに敬一と彼の仲間であるレギーナ・エアハルト(れぎーな・えあはると)はやって来ていた。
 イリーナへの質問等は他の人に任せ、二人は書類や記録媒体などから調査を行うつもりだ。
 膨大な資料を前に、敬一は手始めにレギーナへと話しかけた。
「今回、俺達が調べる内容は『各校でイコンに関する備品が大量に紛失または、奪われたことはあるか』、『奪われたことがあった場合、犯人の逮捕は出来たか、奪われた物品を回収できたのか、その頃動きが活発だった鏖殺寺院の派閥はどこだったのか』についてだな。まずはそこから洗ってみるか」
 書架の前を歩いて資料のインデックスに目を通しながら、レギーナは敬一に返事する。
「了解しました。そういえば、戦闘以外の後方支援の気がします」
 レギーナの返事を聞きつつ、めぼしい資料を書架から取り出して中身に目を通しながら、敬一はレギーナに再び語りかけた。
「前回襲撃してきたイコンは鏖殺寺院系のイコンと言うよりは、シャンバラの学校で使用されているイコンの方が近い気がするんだよな……もしかしたら、鏖殺寺院の何者かが各校のイコン技術からあの機体を作ったのかもしれないな」
 そう言った後、敬一は一拍置いて自分の考えをもう一度確認してからレギーナへと告げる。
「もし、各校のイコン技術から作られたものであれば、サンプルとして必要になるイコンの部品や本体の大規模な強奪事件なんかもあったかもしれないな……一応、調べて見る価値はあるか」
 同じくめぼしい資料に目を通しながら、レギーナもそれに答える。
「九校連が合同してとなると、東西分断以後か以前の出来事になると思われますが、これでは調べる範囲が広すぎるので、調べる範囲はシャンバラ建国移行に限ろうと思います。各校が足並みを揃えて、となると建国以後の可能性も高いですしね」
 敬一に言葉を返しながら、ふと何かに気付いたようにレギーナは呟いた。
「……そういえば、偽りの大敵という言葉も気になりますね。そのまま読んで字の如くの意味か。将又、何か別の意味が隠されているのか……まあ、そこは話を聞きに行った人たちが真相を明かしてくれるでしょう」
 そう呟いた後、レギーナは深く考え込みながら、誰にともなく再び呟く。
「九校すべての利益が重なること……果たして一体何があったのでしょうか?」
 誰にともなく呟かれたレギーナの言葉。それに敬一が言葉を返した時だった。
「わからん。それをこれから調べ――これは……!」
 思わず声を上げかけたのを慌てて自制する敬一。付き合いの長さと深さゆえに彼の微妙な変化を感じ取ったレギーナはすぐさま水を向ける。
「どうしました?」
 歩み寄って来るレギーナに向けて、敬一は手にしていた資料を恐る恐る差し出した。いつも冷静沈着で揺るがないベテラン兵士であるところの彼にしては非常に珍しいことだが、驚きのあまりうろたえているようだ。
 それゆえ尚更気になったレギーナは素早く資料を受け取り、食い入るように目を走らせる。そして、敬一と同じくうろたえるほどの驚きに震えた。
「これは……まさか……!」
 レギーナが敬一から受け取った資料に記載されていたのは『あくまで参考レベル』として記録された情報だった。端的に言えば『現行の技術が進歩していけば、いつかはこういったことも可能になる』という内容のものであり、良く言えば展望、悪く言えば空論に類する研究記録だ。
 一応、研究は進められているらしいが、周囲はもちろん研究している本人でさえ、これが気の長い研究になることを認識しており、そうした研究記録であってか扱いは資料の中でも小さく、敬一がこの記述を見つけられたのはひとえに偶然だった。
 今までであれば取りあえず流し読みするだけの記録だっただろう。だが、今となっては違う。なぜなら、提示されている例は敬一やレギーナがよく知るものであったからだ。
 既存の兵器を凌駕する防御力を発揮する重装甲。それはが敬一とレギーナをはじめとする教導団員、そして九校連に属する学生たちを驚愕せしめた機体――“フェルゼン”の象徴たる技術に他ならない。
 敬一とレギーナはこの記録を食い入るように読み込んだ。
「“フェルゼン”の技術だけではなく、マスタースレイブシステムによる武道家の動きの正確なトレースなどという技術も存在するのか……」
 圧倒的重装甲の研究記録に続いて発見した記述に敬一とレギーナはまたも食い入るように見入った。
 レギーナとともに一通り読み終えた敬一はその資料を確保すると、必要な資料の他にパワードスーツや教導団と関係する資料を借りて、紛れ込ませるようにしておくようにしながら呟いた。
「一体……何が起こっている……?」