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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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 同時刻 シャンバラ教導団本校 某所

「こんな所に何の用?」
 シャンバラ教導団本校の巨大な校舎。
 その中に位置する、現在では使用されなくなった資料室の一つに入っていくセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)へと、彼女の相棒であるセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は問いかけた。
「そもそも、この類の部屋なら理王たちや敬一たちが使ってる所があるじゃない? それに、この状況なら理王たちや敬一たちと連携を取った方がいいと思うけど?」
 問いかけながらも、セレアナは相棒であるセレンフィリティに続いてデータ室へと入っていく。口ではなんのかんの言いながらも、相棒を信頼しているセレアナはセレンフィリティに何らかの意図があることを察し、付き合うことにしていた。
 自分の後に続くセレアナが入室したのを確認し、セレンフィリティは旧資料室の扉を閉めた。そのままドアの鍵も閉めると、彼女は銃型HC弐式を取り出して部屋中を歩き回り、何かを探し始める。
 ややあって、ずっと黙りっぱなしだったセレンフィリティはようやく口を開いた。
「ここなら大丈夫そうね。今調べたけど、盗聴や盗撮の類はないみたい」
 やっと一息ついて肩の力を抜くセレンフィリティ。そんな彼女にセレアナはすかさず疑問を投げかけた。
「そろそろ説明してくれる? さっきから一体何を気にしてるのよ?」
 するとセレンフィリティは今しがた自分で盗聴や盗撮の類がないことを確認していながらも、改めて周囲を見回した後、声を潜めて切り出した。
「誰があたしたちの話を聞いてるかわからないもの――これから話す事は、おいそれと口にできないことだから。ここまで言えば、後は解るわよね?」
 簡潔にただそれだけ告げるセレンフィリティ。彼女のその一言でセレアナはおおよその事情を理解した。
「セレンのことだから、何の根拠も意図もなしに言ってるんじゃないことぐらいわかるわ。聞かせて頂戴――その話」
 セレアナの返事に頷くと、セレンフィリティは静かに語り出す。
「あたしは……恐らく、九校連でプラヴァー以外の統一規格のイコンを開発しようという動きがあったと思ってる。そして、『事件はそこから端を発してるのではないか?』とも推測してるの」
 最初に結論を告げてから、しばらく間を置いてセレンフィリティは説明を再開した。
「イリーナ・阿部中尉の証言には今も釈然としない部分があるけど、教導団を含む9つの学校が共謀して起こし、闇に葬った『偽りの大敵事件』。各校の上層部が結託して証拠を隠滅したとすれば、その解明は甚だ困難を極める……けど――」
 セレアナはセレンフィリティの説明にただ黙って聞き入り、その説明の続きを目線で促した。
「完璧な証拠の隠滅などというものは不可能で、何かを消去しようとすれば、『消去しようとした』痕跡が必ず残るわ。となると、九校連が証拠隠滅を図る過程で生じた歪み……証拠を隠蔽することで生じた辻褄の合わなさ……或いは逆にあまりにも整合性が取れ過ぎている……それ故に不自然な――但し、よほど注意してみないとまず確認できないほど微小なレベルだけど、そうした矛盾を突き詰めてみようと思ってる」
 そこで一旦言葉を切ると、セレンフィリティはもう一度周囲を見回してから銃型HC弐式を覗き込み、念入りに盗聴や盗撮の類を再確認する。改めて盗聴や盗撮の類がないことを確認すると、セレンフィリティはようやく説明を再開した。
「プラヴァー以外の共通規格のイコンが開発されれば、きっと得をする勢力があるはずなのよ」
 セレンフィリティの説明を聞き終え、それをじっくり吟味するようにたっぷり数秒間考え込んでから、セレアナも口を開いた。
「セレンは九校連がプラヴァー統一規格のイコンを共同開発しようとしたという仮説を立てているけど、ではなぜ、統一規格のイコンを作ろうとしたと思う?」
 一度そうして問いかけてから、セレアナは大雑把なセレンフィリティの思考の穴を埋めるように補足していく。
「経済面でのコストや、技術面での統一性などメリットがあるけど、もしそのような計画があったとして、なぜ頓挫したのかしら? 技術上の問題や経済面の問題……ということはまずないでしょうね。技術面に関しては既にイコン開発は第二世代というステージに到達しているし、イコン技術で最も先を行く天御柱学院だけでなく、私たちのシャンバラ教導団も第二世代機の開発に成功しているから、足並みも揃いつつある。経済面に関しても同じよ。もとよりパラミタに存在する地球資本の学校はそのどれも、それ自体が大資本だし、有力な出資者や後援者を持っている学校も少なくない」
 セレンフィリティの仮説をあらかた捕捉し終えたセレアナは、更にそこから自分の仮説を告げていく。
「となると、考えられるのは政治的な事情……恐らくプラヴァー以外の統一規格のイコンが開発されると不都合な勢力が九校連の内部に存在していて、そうした勢力との暗闘の果てに『偽りの大敵事件』なるものが起ってしまったのではないか……と、私は思うけど」
 時折頷きながらセレアナの言葉に聞き入っていたセレンフィリティは、説明が終わったのを見計らって口を開いた。
「たしかに――それはありそうね」
 そこで一拍置くと、セレンフィリティは三度、周囲を気にしてからひっそりと告げる。
「とにかく、この事はあたし達以外の相手に軽はずみに話したりしないようにするべきね。もし話す場合にしても、本当に信用できる一部の相手だけにすべきだわ……誰がどこでどの利権に繋がっているかわからないもの――」