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対決、狂気かるた!

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対決、狂気かるた!

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狂乱呼び込むカルタ大会 始まる

 ※今回、発狂判定の悲喜こもごもが伝わりやすいよう、一部『実際にサイコロを振って』いるように描写されています。


 世界樹イルミンスール頂上の特別ステージ。
 やや湿度が高い中、それを囲むように観客席が用意されている。

「第一試合、1回戦。海京かるた会 クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)さん対男の子の 体のヒミツ! リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)さん、前に出てお互いに礼をして下さい」

 山葉 加夜(やまは・かや)の司会進行で第一試合初戦が幕を開く。

 加夜に呼ばれたクマラとリカインが前に出て礼をする。

「えーと、これを言えば良いんだよな? 難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花。今を春べと 咲くやこの花」

 御人良雄(おひと・よしお)が序歌を詠みあげる。

「わがいおわ みやこ」

 詠まれた歌は喜撰法師の『わが庵は都の辰巳しかぞ住む 世をうぢ山と人はいふなり』の札。

―――スパンッ

 小柄な体系を活かし、短い腕ながら札を取るクマラ。

「成長期なめんなよっ」
「よをうじやまと ひとわゆーなり。……あきのたの」

 小柄な為、腕が短いと密かに周囲から聴こえて来たのを密かに気にしていたのだ。
 下の句が読まれ、次の札が読み上げられる。

―――バシンッ

 次はリカインが禁書写本 河馬吸虎(きんしょしゃほん・かうますうとら)で叩きつけて札を取る。

『ウボァァアアアッ……女の子の体のヒミツだけにいい格好などさせはしなーい!』
「(元々狂気の塊にしか見えないカバが逆に180度ひっくり返ってまともになってくれないかな)」

 有狂成分直撃なのだが、今回の狂気回避に使われる女の子の 体のヒミツに負けたくないと、気合と意地でそれを堪える河馬吸虎。

「わがきごろもは つゆにぬれつつ。……たちわかれ いな」

―――バシンッ

「まつとしきかば いまかへりこむ。……」

 連続で取ったり、交互に取って取られたりした末、クマラが25枚取り、発狂判定が始まった。
 勝者のクマラがまず二つのサイコロを振る。
 続いてリカインがサイコロを転がす。

「クマラさん、リカインさん共に正常! よって勝者であるクマラさんは第二試合進出です。リカインは敗者復活へと駒を進めることになります」

 しばし様子を見て、クマラとリカインどちらにも異常をきたす様子が見受けられなかったのを見届けた加夜はそう宣言するのだった。

「2回戦、イルミンスールかるた会 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)さん対タシガンかるた会 ジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)さん。前に出て下さい」

 特設試合場へ入り、互いに向き合う吹雪とジェイダス。
 ジェイダスの方の段下には白い三つ揃いのスーツに白手袋姿の、穏やかで上品なエメ・シェンノート(えめ・しぇんのーと)が控えている。

「あぁ……あれほど言ったのについにこの時が……」

 泣きそうな、悲しい表情でジェイダスを見つめるエメ。



◇          ◇          ◇




 エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)安徳天皇(あんとく・てんのう)がいがみ合っている最中に参加を申し込んで来たあの日の夜。
 ジェイダスから狂気カルタに参加することを聞かされたエメは、なんとか参加を辞退させようとあれこれ言ってみる。

「ジェイダス様、狂気ですよ、発狂ですよ。そんなお姿を人目に晒すかもしれないなんて、とても賛同しかねます」
「なにを言う。昔から百人一首にも魔道書にも親しんでいる俺が出なくてどうする」

 そう言って全く聞く耳を持たないジェイダス。
 エメは発狂したジェイダスを誰にも見せたくないと共に参加する事を決意するのだった。



◇          ◇          ◇




 カルタも終盤になった頃。

「……はなのい」

―――スパーン

「わがみよにふる ながめせしまに。……おぐらやま」

―――パシーン

「ふっふっふ……もっと、もっとくるのであります」

 札を取るごとに徐々に正座をして構えていた構えがおかしくなっていく吹雪。
 そして言動もおかしくなっていく。

「さぁ美しく……咲きほおれ。まだまだこれで終わりじゃないだロ?」

 呂律が変な部分が出てきたジェイダスの胸にはクナイ・アヤシ(くない・あやし)が禁猟区を施した白薔薇を一輪刺さっている。

―――バシッ

 ジェイダスが最後の札を取り、発狂判定へ。
 少々正常から外れてきたもののジェイダスと吹雪は狂気に陥らなかった。

「吹雪さん、ジェイダスさん共に正常! よって勝者であるジェイダスさんは第二試合進出です。吹雪さんは敗者復活へと駒を進めることになります」

 ジェイダスの狂乱を見ることなく無事に試合を終えたことに胸を降ろすエメ。

「良かった……ジェイダス様、おめでとうございます」
「ふっこの俺が第一試合で負けるなどありえないだろう」

 札の狂気から離れたことで、正気を取り戻したジェイダスがエメに迎えられて待機室へ向かっていく。