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リアクション
トーナメント開始前。全生徒が観戦しようと、会場へと移動し、静かになった校舎内で。 せつな達と榊 朝斗(さかき・あさと)、ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)、アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)は『C』が現れるかもしれないということで、巡回をしていた。
「トーナメントが始まる前に、出来るならば止めないと……」
「そうだね。もし、会場に現れたら一大事になる。そういえばルシェン。あの二人の方はどうだった?」
朝斗達が『C』ではないかと踏んでいるサーシャ、ミーシャの情報。ルシェンが実在しているのか、このプログラムでの二人の行動について情報を集めていた。
「研究所のほうから情報だと、ちゃんと実在しているようです。調べてみたけれど、これは事実ですね。そして、二人の行動についてですが、ところどころ、どこに行ったのか分からない時間帯がありますね」
「私もそれなりに調べてみましたけれど、せつなさん達が襲撃されたと教えてくれた、五日目の夜、それから昨日のお昼の休憩時間の間、二人の行方が分かりませんでした」
「あの二人の可能性が高いってことか」
「でも、それだけでサーシャさん達を疑うのは……」
「だね。だからこそ僕がいるんだ。サーシャさんとミーシャさんの動きは、模擬戦を見学したときにみていたからね。二人の動きや癖も分かっているから」
「もし、戦闘になったときはそれと照らし合わせれば、『C』があの二人なのかということが判明しますね」
「うん。だから、まずは『C』が現れてくれる事を願うしかないね」
――同刻。
「ふぁ……、良い天気ですねぇ……」
のほほんとするテレサ。
「ふふ、そうですわね」
「何もなければこのまま散歩するってのも良いと思うけどね……」
「残念ながら、そうもいかないってところが悲しいわね……」
外を巡回するテレサに同行しているのは、レオナーズ・アーズナック(れおなーず・あーずなっく)、アーミス・マーセルク(あーみす・まーせるく)、ジナイーダ・バラーノワとしてアカデミーに在籍している富永 佐那(とみなが・さな)、エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)の四人だ。
「今日が最終日……なんとしても見つけ出して倒しませんと……」
「でも、そう都合よく出てくるものなのかな?」
「分かりません。ですが、きっと……あれ?」
テレサが何かに反応をしめす。そして、辺りをキョロキョロと見回す。
「テレサさん? どうしました?」
「いえ、微かですが……なにかを感じました」
「……ワタシには分からないけど……レオナーズは?」
「いや、俺にも……?」
「でも、テレサちゃんが言っている事は嘘じゃないだろうし……」
「……この気配は……! こっちです!」
テレサが急に駆け出した。
「あ、テレサさん!? 一人では危険ですわ!」
「エレナ! 二人ともいきましょう!」
「うん!」
「わわっ! 待ってー!」
――一方、せつな達の方はというと……。
「見つけたのは良いけれど、おまけもついてきたみたいだね……」
広いホールに出たところで、コード:S^2を発見。だが、その奥にはその気配を感じ取って現れた、エッツェルの姿があった。
「……目標対象、要危険対象を発見。状況、危険」
板ばさみ状態のコード:S^2。お互いの出方を伺っており、武器を構えたまま、動く気配はない。
「どうする?」
「もし、あの怪物がアイツだけを狙っているとするならば、これはチャンスでもあるが……」
ナナシがエッツェルの様子を伺う。ゆっくりとだが、コード:S^2へと近付いていた。
「……でも、きっと僕達も狙われるだろうね」
「そうだな……。あの二人を相手に戦いぬけるかどうか――」
「見つけました!!」
そんなとき、せつな達の後ろから声が響いた。
――テレサ一行だ。
「あれ、テレサさん?」
「あ、せつなさん。こんにちは」
「テレサさん! 急に走っていくからびっくりしましたわ」
「あ、ごめんなさい」
「ふぅ……。それで、あいつらがテレサさんが倒そうとしている相手かい?」
レオナーズの指差すほうにはコード:S^2とエッツェル。
「はい。その通りです」
「なんだ、あなたも追っていたのね」
「ということは、せつなさん達もですか?」
「うん。まぁ、あの後ろの化け物は違うんだけど……。でも放っておくわけにもいかないわね」
「なら、迷うことはないよ。倒すべき相手は一緒なんだから」
朝斗の言葉に頷く佐那。
「そうね。共闘、と行きましょうか」
全員が武器を構える。
「……敵勢力増加……」
「僕達が『C』を狙うよ。あの怪物は……」
「わたしが行きます」
「決まりだね。行くよっ!」
「では……!」
朝斗達が一気に間合いを詰める。その間にアイビスがホイール・オブ・フェイトを使い魔力増加を図る。せつな達の後方に大きな歯車が現れゆっくりとまわり始める。
「……反撃開始」
それを見てコード:S^2、エッツェルも行動を開始。
「俺達も援護するよ!」
「言われなくても分かっているわよ!」
レオナーズとアーミスが同時に火術を放つ。
「……投擲」
コード:S^2が向かってくる火の弾にナイフを投げる。ナイフが火の弾に当たると相殺し、両方とも消失する。
「うそ……、あんなナイフで魔法がかき消されるなんて」
「でも、助かったよ!」
その隙にあっという間に間合いを詰めたのは朝斗。ウィンドシアでコード:S^2を斬りつける。
「……!」
コード:S^2はナイフを構え防御。
「甘いですねっ!!」
朝斗の後ろにいたアイビスがつかさず咆哮。怯んだコード:S^2に対してレゾナント・アームズで格闘戦をしかける。
「……! アイビス、下がって!」
ディメンションサイトで周囲の状況を把握している朝斗。言葉を受け、バックしたアイビス。すると先ほどまでアイビスが居た場所に無数の触手が突き刺さる。
「ありがとうございます。朝斗」
「……やっぱり、見過ごしてはくれないよね」
その触手を操っているのはエッツェル。エッツェルはコード:S^2にも触手を繰り出す。
「……回避」
それを回避、時には触手を斬り捨てていく。
「隙だらけですっ!」
その間に、接近したテレサが杖による連撃をエッツェルへと繰り出す。もちろん、その程度じゃビクともしないエッツェル。
「テレサちゃん、しゃがんで!」
「あ、はいっ!」
佐那に言われその場でしゃがむテレサ。すると、その上をエッツェルの異形化左腕が通り過ぎる。
「当たりね」
佐那は風術と殺気看破を組み合わせた、我流の風読みで、エッツェルの攻撃を予測していた。
「ありがとうございます!」
「お安い御用よ。援護は任せて目の前の敵に集中よっ!」
「はいっ!」
佐那の風読み、更に幸せの歌の援護もあり、素早く攻撃をかわしながらエッツェルへ着実にダメージを与えるテレサ。
「…………」
すると、エッツェルの身体から絡みつく魔障気を発生させ身にまとう。
「テレサさん、その瘴気は危険です!」
それを見抜いたのはエレナ。召喚者の知識で類似の魔物の特性を引き出し、危険を促す。
「っ……!」
それを聞き距離を置くテレサ。
「なら……!」
その間に佐那が風術を使い、瘴気を拡散させる。
「……攻撃」
その瞬間に佐那へ向けてコード:S^2がナイフを投擲。
「ジーナさん!!」
「えっ?」
「させるもんですか!」
それをアーミスが寸でのところで火術で相殺する。
「ありがと、助かったわ」
「このぐらい任せてよっ!」
「そんなナイフを投げている余裕があるなら……」
「私達の相手をしていただきます!」
無尽蔵に迫る触手を避けコード:S^2へ接近した朝斗とアイビス。
「これはいかがですか」
更にルシェンの貴族的流血でコード:S^2の動きを制限する。
「……防衛行動」
コード:S^2はそれらを紙一重で掻い潜っていく。
「行くよレオナーズ!」
「いつでも!」
「せーのっ!」
コード:S^2向けて、同時に放つ雷術。
「バック!」
朝斗とアイビスはすぐさま後退。雷術がコード:S^2へ直撃する。
「……ダメージ大。機動低下」
直撃を受けたコード:S^2が膝を突く。
「拘束を……」
朝斗達がコード:S^2を拘束しようとするが、エッツェルの触手がそれをさせまいと阻む。
「敵を庇うつもり……?」
「きゃっ!?」
今まで、エッツェルと接近戦を繰り広げていた、テレサが吹き飛ばされる。
「テレサさん! 大丈夫ですか!?」
すぐにエレナがキュアオールでテレサを治療。
「ありがとうございます」
その間にも、エッツェルがコード:S^2へと接近。
「させな――」
「危ないっ!」
再度魔法を放とうとしたアーミスの死角から触手。
「くっ!」
すぐさまレオナーズがアーミスを庇うように抱く。
「間に合えっ!!」
せつなが二人の前に氷の壁を展開。触手が氷の壁に阻まれ動きが止まる。
「はっ!」
その間にナナシが触手を粉砕する。
「二人とも怪我はない!?」
「あぁ、ありがと……」
「ちょ、ちょっとレオナーズ。そろそろ離して」
「あ、ごめん。咄嗟だったから……」
「うん。ありがと」
エッツェルの間合いへと入ったコード:S^2。エッツェルが異形化左腕を伸ばす。
「何をする気だ……?」
「まさか、捕食する気ですか……!?」
一度、捕食しかけられたテレサ。あの左腕には開口部があることを知っていた。
「……残念、だったね?」
コード:S^2が取り出したのは閃光弾と小型の爆弾。閃光弾をその場で炸裂。手榴弾を口の開いた左腕へと投げ込んだ。
「うわっ!?」
眩い閃光と爆発音が響く。
「校舎内で爆弾を使うなんて……!?」
全員が目を開けたときにはコード:S^2の姿はなかった。火薬が調整されていたのか、はたまたエッツェルの左腕がそこまでに強靭だったのか、建物への損傷は一切なかった。
「『C』は何処に……?」
「まさか、食べられた……とか?」
「いや、それはないな」
ナナシが指差すと、さすがに無傷ではいられなかったのだろう。エッツェルの異形化左腕は一部が吹き飛んでいた。
「多分、今の瞬間に逃げたのだろうな」
エッツェルは吹き飛ばされた手を見ると、すぐにその部位の再生を始め、あっという間に元通りに治す。そして、コード:S^2を追うように、近くの配水管から姿を消した。
「……また、逃がしてしまいました」
ため息をつくテレサ。
「仕方ありませんよ。まだ、機会はあります。その時に頑張れば良いのです」
エレナの慰めに小さく頷くテレサ。
「…………」
「朝斗君? どうかしたの?」
朝斗は一人、目を閉じて記憶術で覚えていた、サーシャ、ミーシャの戦闘スタイルとコード:S^2の戦闘スタイルを照らし合わせていた。
「……うん。やっぱり別人だ」
「え?」
「えっと、さっきの『C』なんだけど、あれはサーシャさんでもミーシャさんでもないよ」
「……本当か?」
「うん、二人の戦闘スタイルは基本的にヒット&アウェイ。これは、アクセルギアと同じように、クロックアップの持続時間の関係があるからなんだけど、さっきの『C』はそんな動きはなかった」
「……そうか、ならば。疑いがあるのは後二人だ」
「あ、そこまで絞れていたんだね」
「あぁ。後は、ケビン・サザーランドと西枝レイの二人だ」
「レイさんが……?」
「信じられないだろうけど、聞いた情報だとそうなるね」
「そうですか……」
そこで、外のほうから大きな歓声が聞こえて来る。
「あ、トーナメント始まったみたいね」
「とりあえず会場に移動しないかい? もし、さっきの二人が向こうに現れたら大変だろうし」
「そうですわね」
「それでは行くとしましょう」
一同は歓声響く会場へと向かった。
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