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再び、みんなで楽しく? 果実狩り!

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再び、みんなで楽しく? 果実狩り!

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『果実狩り前の、一仕事』

「果実狩りの前に一仕事、『調査』に対する『報告』がまだだったのでな。先に終わらせてからの方がより楽しめるというものだろう? 済まないが付き合ってほしい」
 エリザベート一行が農場へ出発支度を済ませようとしていた頃、レン・オズワルド(れん・おずわるど)メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)が『煉獄の牢』の調査の件で報告にやって来た。手早く準備が取られ、資料の内容を映し出しつつレンが報告を始める。
「まずは調査隊について。誰がどのように行動し、どのような活躍を見せたかをまとめておいた。彼らの一部は今日の果実狩りに参加していると思われる、是非校長自ら労ってやってほしい」
「適切な報奨は支払われるべきじゃからな。エリザベート、よく覚えておくのじゃぞ」
「はいですぅ。何なら収穫の終わりに、みんなでご飯にすればいいんじゃないですかねぇ」
「ふむ、一理あるな。ミリアに融通が利くか聞いておくかの。尤も彼女のこと、予め検討していそうじゃが」
 アーデルハイトが一旦席を外し、ミリアに連絡を取る。レンは次の内容、『炎龍レンファス』について報告する。
「この件は、同行した精霊長からも報告がされているだろうから割愛する。尤もそのままというわけにもいかないだろうから、俺も機を見て様子を伺うつもりだ」
「カヤノが大ババ様の魔法薬を飲み過ぎて大変なことになったそうですねぇ」
「あれは私謹製じゃからあの程度で済んだのじゃ。素人が作ったものであれば最悪、命を落としかねんぞ」
「ともかく、無事に交流を持つことが出来たことは喜ばしい。……次、調査に掛かった費用についてだが」
 メティスが進み出、アーデルハイトに明細を渡す。それらに目を通す傍ら、レンの補足が入る。
「まず確認しておきたいことだが、俺達『冒険屋ギルド』、そしてアメイア達『第五龍騎士団』はイルミンスールの保有戦力ではない。そしてイルミンスールとイナテミスは、その特殊性からとかく、注目を集めやすい。……この点は理解できているな?」
 レンの言葉に、エリザベートとアーデルハイトがこくり、と頷く。
「力が集まればそれだけ、トラブルの元となり得る。既に集まった力を危険視する意見もある。力の有り所をきっちり分けておくべきだろう。俺やアメイアが『仕事』として今回の調査に協力したことを示すのは、そういう意味だ」
「ふむ、理解した。無論、そうすることでおまえたちやアメイアが個々に危険勢力として認知される可能性があることを考慮しての発言じゃな?」
 アーデルハイトの発言の意味は、つまりイルミンスールが戦力10を持った場合と、イルミンスール5・『冒険屋ギルド』3・『第五龍騎士団』2を持った場合、冒険屋ギルドと第五龍騎士団が相応の戦力を持つ集団として認知されることの危険性を考えているか、というものであった。
「俺もアメイアも、自分の落とし前は自分で付けられる。そこは信用してもらいたいな」
「……よかろう、信用しよう。この金額で処理を行う、支払は後日で良いな?」
「ああ、構わない。……次に、調査中に入った『邪魔』についてだ。これは幸いにも被害に遭ったのが俺のパートナーで良かったが、どうやら犯人はメニエス・レインのパートナーのようだ」
 メニエス・レイン、その名はこの場に居る誰もが知っていた。『ホーリーアスティン騎士団』の後押しを受けてイルミンスールの教頭に就任し、職を追われた後は姿をくらませている人物。
 善か悪かという二元論で語れば『悪』側に属するが、同時に彼女はイルミンスールの生徒でもある。
「俺がそのことでメニエスにどうこう言うつもりは今のところないが、少し気になることがあってな。そうだな……『迷い』みたいなものか。昔の彼女であればベースキャンプそのものを『潰す』くらいのことを仕掛けてきた筈だ。それがやけに消極的だったのでな。
 これは俺の推測だが、彼女の行動を縛る・動きを鈍らせる何かが出来たのかもしれん」
「そうですねぇ。私を「ぶっころしてやるですぅ!」と迫ってきた彼女らしくないといえばそうなりますねぇ」
 うんうん、と頷くエリザベート。行動の変化が何を示すのか、想像はしてみるものの答えには辿り着けない。
「ま、これ以上は当人の居ないところで話すことではないが、少し気に掛けておいて貰えると幸いだ。何しろ彼女はイルミンスールにとって重要なポジションに居る人間だからな」
「分かりましたぁ。……気にかける、というのをどのくらいすればいいのかが難しいですけどねぇ」
「その加減は、エリザベートにはまだ分からんじゃろうて」
「むー、大ババ様、私が子供だと言いたいんですねぇ!?」
「いやいや、そんな事は言っとらん。だいたい大人でも上手く気配りが出来る者はそうおらんのじゃ」
「……俺からの話は以上だ。ここまで付き合ってくれたこと、感謝する」
 話題に取り上げてくれるだけでも十分だろう、そう思いながらレンはエリザベートとアーデルハイトに一礼し、校長室を後にする。

 校長室を出た所で、イナテミスにアメイアを呼びに行っていたノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)と合流する。
「打ち合わせの方はどうでした?」
「こちらの要求は概ね通った。アメイア、第五龍騎士団への給与は後日、冒険屋ギルドを通じて支払わせてもらう」
「了解した。何から何まで済まないな、レン」
「仕事のパートナーとして、当然のことをしたまでさ。
 さて……俺達も果実狩りに向かうとしようか。ノア、準備は出来ているな?」
「はい! もちろんです」
 そして一行は、果実狩りが行われる農場へ向かう――。


『ぷち、果実狩り対決』

「それではこれより、御神楽家とワルプルギス家による『家族対抗プチ果実狩り対決』を開催したいと思います。進行と審判役を務めます、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)です、よろしくお願いします」
 居並ぶ面々――御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)神代 明日香(かみしろ・あすか)へ舞花が一礼し、ルールの説明を始める。
「開始の合図を私が行いますので、それから1時間の間により多くの果実を収穫した陣営が勝者です。飛び入りの参加は認めますが、集計方法は『収穫量/参加人数』で平均を出して集計します。
 なお敗者には、罰ゲームがあります。代表者が勝者の指定する恥ずかしい質問に答える、もしくは恥ずかしいラブソングを唄わなければなりません」
「カンナのヘタな歌を聞くのも、歌合戦の時以来ですねぇ」
「あれは私じゃないし。ヘタなんて代わりに歌ってくれた彼女に失礼じゃない。そういう事を言うならいいわ、あなたを恥ずかしい質問責めにしてあげる」
 明日香が用意した『エリザベートちゃん専用体操服(胸元には『えりざべ〜と』の名札、もちろん紺のブルマ、赤は邪道なので認めない、紺こそ至高)』に着替えたエリザベートと、ディスプレイが内蔵されたゴーグルを装着した環菜が、ほどよい緊張感で視線をぶつけ合う。
「それでは……スタートです!」
 上空へ構えた銃から空砲が放たれ、それぞれの陣営がより多くの果実を収穫するため行動を開始する。

『3つ目の交差点を左に曲がった先に、未収穫のエリアがあるわ。まずはそこを徹底的に収穫して頂戴。エリシアとノーンには、別の未収穫のエリアを指示するわ』
「了解。……環菜、いつも以上に生き生きしてますね。やっぱりエリザベート校長との対決は、環菜にとっても楽しみなんじゃないですか?」
 環菜からの通信に、陽太がそんな返答を返せば、端末の向こうで環菜の戸惑った様子が感じられた。
「……そうかもしれないわね。何か、すんなり認めるのは気に入らないけど」
「あはは……そんな所は変わらず、ですね。でもそういう所が、俺は好きですよ」
『バ、バカなこと言ってないで、さっさと行ってきなさい! 陽太のせいで負けたら、怒るわよ!』
 通信を切った環菜へ、陽太が可笑しみを堪えつつ目的の場所へ向かう。
 かつての果実狩りから、そして今の果実狩りまでに起きた様々な出来事、それがこうして今の、平和で幸せな一場面に繋がっていることに例えようのない気持ちを抱きながら、対決というからには全力で勝利を目指すべく、陽太は収穫に勤しむのであった。

「魔法で一網打尽ですよぅ〜」
 エリザベートの掌から、風が巻き起こり地面に落ちていた栗を吹き上げる。上空を舞った栗は地面に置かれた籠へ次々と飛び込み、あっという間に埋め尽くす。
「エリザベートちゃん素敵です〜」
「わぁ! こらアスカ、今は勝負中ですよぅ」
 背後から明日香がエリザベートに抱きつき、すりすり、と頬を寄せてくる。
「エリザベートちゃんの肌はぷにぷにで、甘い香りがします」
「もぉ、これじゃあ集中出来ないですよぉ。アスカは私に勝ってほしくないんですかぁ?」
 頬を上気させつつ尋ねるエリザベートに、明日香はふむ、と少し思案して答える。
「恥ずかしい罰ゲームなら、負けた方がおいしいのは分かってますけど……私はエリザベートちゃんを応援します。
 頑張って、エリザベートちゃんっ」
「うぅ、なんだか複雑な気分ですぅ……」
 明日香の応援? を受けながら、エリザベートが収穫に勤しむ。

「次はここですわ。ノーン、上はお願いしますわね」
「任されたよ! いっぱい採ってきちゃうね!」
 エリシアのかけた梯子を伝って、ノーンが上空まで上がった後、光の翼を展開して高い所にある果実を収穫していく。精霊は飛べる種族だが、ヴァルキリーのように瞬時に上空まで飛べるわけではない(例えるならロケットと飛行機、ヴァルキリーは一気に飛び上がれ速度も速いが持続力に難あり、精霊は横に飛んで少しずつ高度を稼ぐ、速度もそれほど速くないが持続力はある)ので、エリシアの梯子はこの場合、とても役に立っていた。ノーンを上空まで運んだ後、自らも低い位置の果実を収穫することで、効率的に収穫を行なっていた。
「うーん、この果物美味しそー!」
「ノーン、分かっているとは思いますけど、食べてはいけませんからね」
「うん、分かってる! 勝負が終わったらたくさん食べるよ!」
「ええ、お腹いっぱい召し上がりなさいな」
 後に控える楽しみを胸に、ノーンとエリシアが収穫に勤しむ――。