リアクション
「みな、素晴らしい歌声にパフォーマンスですね」
「だな。さて、そろそろ紅月の出番。心して聞くとするか」
礼装をまとった二人が紅月の出番を心待ちにしていた。
舞台袖。
「お待たせ。うわ、皆も綺麗だね」
「紅月さん、これをどうぞ」
風紀委員としての仕事でこれない榊 朝斗(さかき・あさと)の代わりとしてアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)が【極上の花束】を紅月へ手渡す。
「すごい花束だ。ありがとう」
「私たちの作った食材やアロマオイルも役に立っているかしら」
「もちろんだよ。料理を作ってくれてる人たちに渡してきたり、場内のテーブルに置いてきたりで大活躍」
「それはなにより」
蓮見 朱里(はすみ・しゅり)、アイン・ブラウ(あいん・ぶらう)も舞台袖にいた。
「さあ、三人とも準備はいい? せっかくの舞台、どうせなら最高の思い出にしよう。自分たちのありったけ、みんなに届けよう」
紅月の言葉に無言で頷く三人。
静まり返った場内。先陣を切ったのは朱里。
『何億光年の彼方で 生まれた星の命
小さな指は光つなぎ 夜空に星座を描く』
この歌は、遥かな昔この地に住んでいた古代ニルヴァーナの人達に感謝を。
次に現れたのはアイビス。
『緑なす大地に還る命 深く根差し空に枝を伸ばす
太陽と月を遠く仰ぎ見て』
時に開拓の過程で起きた探索や戦争で犠牲になった人達の冥福を。
朱里に寄り添いあうように歌を共にするアイン。
『『朝焼けの街に響く産声 西風が優しく頬を撫でる
その未来に多くの幸あれと』』
そしてこの地で新たに生まれ、これからの世代を担う子供たちに祝福を。
最後に現れる美しき衣装に身をまとった紅月。
『涙よ 悲しみを洗い流して 枯れ果てた地を癒す恵みの雨になれ
花は咲き 散って やがて喉を潤す果実を残すでしょう』
このニルヴァーナ大陸で起きたこと全てを忘れないために。
そして、四人の声が重なる。
―――二つの螺旋 天と地をつないで
命はめぐる 過去と未来 すべてのみなもとに―――