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リアクション
「いやー雄たけび大会もすごかったけど、ここの賑やかさも負けてないね!」
「まさか【朝霧酒造】と【萬鍛冶屋・鱠斬】が合同で解体ショーをやっているとはな」
「うーんいい香り! お酒とお魚の匂いって最高の組み合わせかも」
「そうだな」
雄たけび大会からいろいろところを回ってから、解体ショーにやってきたのはレンとフリューネ。
行きたい場所を二人で話し合いながら祭りを回っていた。
そして最後の場所がここの解体ショーだった。
「わぁお! マグロの解体だ! 私もできるかな」
「どうだろうな。俺もそこまではできないから、見よう見まねでやってみるか」
「ほ、ほんとに?」
「冗談だ。日常生活でそこまでやることもないだろう」
談笑しながら軽快に捌かれていくマグロを見る二人。
それだけでなく、普通の魚の捌き方など講座にも顔を出してその技術を盗もうとしていた。
「そ、それ以上は無理だって! 飲めないって!」
「わっちの酒が飲めないでありんすかー!」
「はっはっはー! いいぞーやれやれー!」
「うんうん、みんな楽しそうだね」
「ああ」
唯斗の断末魔もここでは楽しそうな戯れと聞こえるらしい。南無。
「あっちにお酒が売ってるね。ちょっと見てこう」
「そうだな」
お酒の販売コーナーに足を踏み入れた二人。そこには多種多様なお酒があり、眩暈がしてしまいそうだった。
「うーん、レンはどんなお酒好き?」
「基本的には何でも飲むが、料理に合う酒は好きだな」
「そっか。リネンは飲めないから、なかなかこういう話する機会がなかったり」
「そうだったな。楽しいか?」
「そうだね。楽しいよ」
「ならここで酒を買っていって、今度料理でもしよう」
「お、いいねー。リネンも交えてお酒とソフドリパーティーだね」
「……そうだな」
若干、伝えたいことに齟齬があったレンの顔が曇る。
酒を買った後はリネンと合流するためにリネンがいる場所へと戻っていく二人。
その帰り道でもお酒の話は尽きなかった。
「うひー思った以上に警備って忙しいんだなー」
「忙しいのは警備というより会場整理だがな」
カル・カルカー(かる・かるかー)と夏侯 惇(かこう・とん)が一息ついていた。
彼らは東西にインフォメーションセンター(ドリル・ホール(どりる・ほーる)作)を作り、警備と会場整理を行っていた。
とは言っても警備にそれほど手間を取られているわけでもなく、とりわけ会場整理に追われていた。
「正直、こんなに人が来るとは思ってなかったしなぁ」
「まあ会場整理も落ち着いた。むしろ日が落ちてきた今が一番危険だぞ」
「え、なんでだよ?」
「酒が効いてくる者も出てくるって話だよ」
「こらお前! 今ぶつかっただろう! 慰謝料よこせ!
「お前こそ……! お前酒持ってるだろう? 酒置いてけ、なあ。酒置いてけー!」
「と、このようにご覧の有様じゃ」
「言ってる場合かー! こら、そこのお二人さん、喧嘩はやめろー!」
すぐさま喧嘩を止めるためカルが向う。
「ふむ、まずまずの反応速度だな。朝昼は作成したパンフレットを配りつつ道案内もこなしていたし、あやつも見れるようにはなってきたか」
「惇ー! 手伝ってくれよー!」
「あいわかった。……後は力が身につけばか。思いだけの小僧っこではなくなったな」
重い腰を上げカルの助勢に向う惇の顔は笑顔だった。
その笑顔は、まるで我が子の成長を見守るよう父親の如く。
「こら! おぬしら、あまり迷惑ばかりかけていると武器の錆にしてしまうぞ?」
「ご、ごかんべんを!」
「酒、置いてきますから!」
「うわっ、惇こわっ!」
「……おぬしまで怖気づいてどうする」
反面やっぱり顔はいかつい惇だった。
無事に騒ぎを収めた二人に出店を出していた人々からたくさんの食べ物や飲み物が送られた。食べきれないくらいに。
「……あとで四人で食べようか」
「……そうしよう」
カルたちは反対、西側のインフォメーションセンターにいるのはジョン・オーク(じょん・おーく)とドリル・ホール(どりる・ほーる)。
「いやーみんな、楽しそうでなによりだ!」
「幸せそうな笑顔で溢れている。準備から参加していた甲斐があるというものです」
「いまんとこ万一の気配はなさそうだし。外の警備にいったギルド警備からも連絡はないしな!」
「そうですね……あら、あの子一人ですね。ちょっと行ってきます」
一人でとぼとぼ歩いている子供を見つけたジョンが駆け寄る。
「どうしたのですか?」
「お母さんとはぐれちゃって……どうしよう……うえーん!」
「それは大変です。でも安心してください、いま見つけますからね。ドリル、この子をお願いします」
「よっしゃ任せとけ! 見ろ坊主、俺のこの右下方わき腹にあるこのチャックをこうすると!」
「す、すっげー!」
何がすごいのか是非とも見たいところだがそれはドリルと子供だけの秘密である。
♪ピンポンパンポーン
『お祭りをお楽しみのところ失礼いたします。
縦じまの野球帽、赤のフリースジャケットに、ジーンズをはいた6歳くらいの男のお子さんをお預かりしております。
お心当たりがある方は、西側インフォメーションセンターまでお越しください』
♪ピンポンパンポーン
恒例のSEを鳴らした後に恒例の迷子のお知らせ。
変な話、これも祭りの名物かもしれない。
程なくして男の子の母親がやってきて、無事に祭りへと戻っていった。
「いやーあいつ元気だったな! 将来きっといい男になるぜ!」
「そうですね。さて、それでは見回りに行ってきますのでここは任せますね」
「合点承知!」
ジョンは見回りに、ドリルはインフォメーションセンターでそれぞれの仕事をこなすのだった。