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【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

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【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

リアクション

「さー! 私たちは現在お祭り真っ最中の『中継基地』にきてまーす! そしてここは観覧車の中! うーん、高い! すごーい!」
「本当に高いですね。絶景、という言葉すら及びつかないですね」
 低予算でロケを観光する二人。五十嵐 理沙(いがらし・りさ)セレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)
 アイドルユニット『ワイヴァーンドールズ』としてこの『中継基地』をレポートしてたのだ。
 ただセレンたちも同じようなことをやってることは知らない。
 それだけ『中継基地』の規模は広く、それがまた祭りの規模の大きさを実感させる。
「この大観覧車。家族で楽しむのもよいけれど、それ以上に恋人たちは観覧車は絶対押さえとかなきゃ駄目。天空に近いこの場所で甘いひと時を過ごさなきゃ」
「きっとここなら普段言えない思いも届くことでしょう。是非乗ってみてくださいね」
 カップルがガッツポーズをするようなコメントを残した二人は観覧車を降りる。
「さあお次は観覧車以上の名物! ニルバーナ・ドリーム・ライドにライドオン!」
「実は先ほど、『ニルヴァーサル・スタジオ』の創設者であるルカルカ・ルーさんが乗っていたいという目撃情報があります。そこゆくカップルに聞いてみましょう」
「すいませーん!」
 理沙がカップルと見える二人に声をかける。

「ん、俺たちか?」
「そうみたいだねー」
 声を掛けられたカッポーはシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)金元 ななな(かねもと・ななな)
 彼らも視察に来ていたが、もはやその影も形もなくこのニルスタを存分に満喫していた。
「お二人はこれからこちらにライドオンする予定かな?」
「ああ、そのつもりだぜ。まっなななの身長が足りないかもと思って内心ヒヤヒヤしてたりしたんだが」
「なにおー! ばっちり足りてたよ!」
 ぷんすかぷんすかのなななを見て微笑むシャウラ。この空気、何度目かの、リア充タイムの予感である。
「先ほどこのニルバーナ・ドリーム・ライドにルカルカ・ルーさんが乗ったという目撃情報があるのですが、お二人は何かご存知でしょうか?」
「ご存知も何も、さっきお会いしたよ。挨拶はしたものの、何話していいかさっぱりだった。それでも笑って応えてくれたけどさ」
「その後ゼーさん、逃げるように一回立ち去ったんだよ? でもなななはこれに乗りたかったから無理やり連れてきたんだー!」
「そーいうことはオフレコでいいんだよ! 代わりいったにゃんこカフェであんな顔とろんとろんにさせて戯れてたくせに!」
「そーいうのだって言わなくていいんだよ!」
「よーし、二人とも幸せそうだね! その幸せをみんなに分けてもらうため、一緒にライドオンしちゃおう!」
「「望むところだ!」」
「……変な流れですが、このまま四人で乗ってきたいと思いますので少々お待ちください」

……イヤアアッホー! ……キャー! なーなーなー!
……ライドォ! オン! ……アブ……ですよ。


「ふぅ。いやー迫力満点だったね! ロケのしがいがあるよ!」
「いや、ほんっとに楽しかったな。なななもそう思うだろう?」
「落ちちゃうー! と思ったらぐえーってなってばーんって、すごかったね!」
「このように語る言葉がとめどなくあふれ出ます。が、百聞は一見にしかず。是非、みなさまもその身をもって体感してみてくださいね?」
 三者三様の感想をうまくまとめたセレスティア。デキル女は〆る時は〆るのだ。
「ほらみなさん。ちゃんとついてきてくださいねー」
「おっ、ザカコんじゃねーか!」
「ああ、シャウラさん。お祭りは楽しんでますか?」
 子供たちを引き連れてニルスタを練り歩いていたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)が四人の前に現れる。
「ああ。なななと、今はそっちの二人とも一緒にニルバーナ・ドリーム・ライドに乗ってたところさ」
「それは楽しそうですね。この子達は乗れませんが」
「そういやパートナーはどうしたんだ?」
「ああ、ヘルなら今頃……」

〜何度目のタイムスリーップ〜

「やっぱり大繁盛だな」
「仕方ありません。これだけ大きな祭りなのですから当然と言えば当然です」
 ザカコとそのパートナー、強盗 ヘル(ごうとう・へる)が迷子たちを見ながらそう呟く。
「こりゃゆる族としての血が騒ぐな。今宵の俺は、迷子たちの心を鷲づかみにする強盗だ!」
「と、狼マスクで言われても怖いだけですよ?」
「大丈夫さ。このマスクはやたら伸びる。俺が思ってるよりもがっつり伸びる。だから、こうして……」
 自慢の狼マスクを惜しげもなくびよんびよんさせて、面白おかしい奇怪な形を作っていくヘル。
「……なんですか? その漠然とした不安を模したかのような形状は」
「いや、適当にこねくりまわしただけなんだが、そんな芸術的に見えたか?」
「そうですね。子供たちが若干引いてるくらいには」
「な、なんだって!?」
 ばっと子供たちの方を振り向けば既に涙目の子もいた。
「お、俺はただこのマスクは作り物なんだってわかってもらえれば怖くなくなるかと思ったんだが……」
「なるほど……みなさん、みてください。それ!」
「うおわ! な、なにすんだ!」
「不思議にこんなに伸びるんですよー? みんなもやってみたくありませんかー?」
 ザカコの巧みな話術とヘルのマスクの伸縮性に、恐怖よりも興味が勝った。
 子供たちが続々とヘルの周りへと集まり、無我夢中で伸ばしまくる。
「あ、あんまり伸ばすなよ!? 絶対だぞ!?」
「モテモテですね。それじゃ自分は何人かと園内を回ってきますので、受付や残った子たちのこと、お任せしますね」
「よっしゃ! まかしとけ! だがあんまりひっぱらないでくれよー」
 だが必然、ヘルのマスクが当分べろんべろんになったのは言うに難くない。

〜そして現在へ……〜

「なるほどな。そんなことがあったのか」
「なななもマスクびにょーんてしたいなー」
「ははは、お手柔らかに頼みますよ。そういえばルカルカさんはいらっしゃらないでしょうか?」
「あーさっき会ったけど今は別行動中だな」
「そうですか。迷子のほうが落ち着いたら打ち上げに参加しようかと思っているので、よろしくお伝えください。それじゃよきお祭りを」
 そう言って元気にはしゃぐ子供たちと一緒にニルスタの喧騒の中へと溶け込んでいった。
「頼まれたからには伝えないと。そろそろ宴会の時間だしな」
「ふっふっふ、そんなこともあろうかと! 私が周りに突撃インタビュー+聞き込みを行っていた結果、ルカルカさんたちは今美術展にいるそうよ」
「美術展か。遠くないし、ぱっと言って合流するか」
 こうして四人は美術館へと向うことにした。