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―アリスインゲート1―後編

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―アリスインゲート1―後編

リアクション

 ビル内になおも地響きが聞こえる。
 AN/Pの跳躍とそして解体による部位の落下が衝撃となって伝わってきたからだ。
「大丈夫でしょうか……」
「何、あいつらなら心配無さ」
 外で戦っている契約者たちの安否を気遣うアリサにシリウスが答えるが、シリウスは外の者たちよりもアリサが気がかりだった。
 アリサには目立った外傷はない。だが、敵対者とは言え塞ぎこむハデスの様子を見るに何かあったと思われる。アリサにも何かされているかもしれない。
 何かされてなくともアリサの今後に何があるのかわからない。少なくとも、過去には彼女をめぐって謀略及び騒動があった。
 だが、アリサには何も力がない。他の契約者と比べれば腕力も攻撃能力もない。使えるのは強力な《精神感応》だけだと聞いている。シリウスはその《精神感応》がどのようなものか体感したことがない。
 彼女に別人格が居た時には攻撃用途のサイオニックスキルを有していた。
 果たして、別人格が消えたからと言って本当に能力まで消えるのか? 
「なあアリサ――」
 シリウスがアリサに提案する。
「こういのをいきなり提案するのもなんだが、お前の潜在能力を解放してもいいか?」
「《潜在解放》ですか?」
「そうだ。アリスの時は《サイコキネシス》《カタクリズム》を使えたはずだ。本人格のお前が使えないはずがないんだ」
 シリウスの提案にアリサが何故か戸惑う。スキルが使えるようになるのは悪いことではないというのに。
 《潜在解放》が成功するかはわからないが、メリットは多くなる。
 戸惑おうとも答えは一つしかない。
「わ――」
 アリサが答えを言おうとした瞬間、今までよりもより直接的な大きな揺れと崩壊音がする。
 ビルにいる者達にはわかりづらいが、現在このビルの片側は跳び控え壁の支えがなくなり、ビル側面に掛かる側圧の逃げ場がなくなっている。高層ビルとなればその圧力は凄まじく、上から下へとそれが更に強くなる。
 故に、側圧は壁を圧迫し、壁の耐久力が側圧に耐えられなくなった時、その現象が起こる。つまり、側面およびその近くの足場の崩落だ。
 その崩落にアリサが巻き込まれた。
「アリサ!」 
 ギリギリ残った足場にいて難を逃れたシリウスが叫ぶ。
 アリサは35階という高所から自由落下を始め、4秒もなく地面に到達するだろう。《グラビティコントロール》も《テレポート》もない彼女はもうすぐ潰れたトマトになる。
が、一方で、側圧に耐えかねた壁が崩壊、アリサが落下する。
 飛び出して助けようにも間に合わない。
「どうにかなりやがれ――!」
 シリウスが一か八かと《潜在解放》を落下するアリサに使う。視界で小さくなるアリサの姿からはそれが効いたのかはわからない。
 アリサには何もすることは出来ない。しかし、どうにかしなければと
 アリサの体が地面へ到達するその刹那――
 彼女の体は地面の中へと沈み込むように消えていった。