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第一章 戻って来ました汚部屋掃除!
古城に集まった者達は古城、正体不明の魔術師、リリトや地下道への入り口などの詳細をそれぞれ知る者から聞いてから担当を分担した後行動を開始した。
古城内。
「思ったより汚くなってねえな……と思ったら今度はゴミかよ」
シン・クーリッジ(しん・くーりっじ)は床が見える事に多少感心していたかと思ったら前回の大掃除に参加した際に廊下の至る所に設置した分別箱からごみが溢れている事を発見した。
「……確かにマシと言ってもこれじゃあねぇ。まぁ、ごみをごみ箱に入れられるようになった分だけ進歩したとは思うけど。普通、溢れる返るまで放置しておくかなぁ。しかも分別もなってないし!」
シンの呆れを聞いていた清泉 北都(いずみ・ほくと)も同じように明らかに分別間違えのごみが溢れている分別箱を見て呆れたように言葉を洩らした。城内に侵入する前に厨房の窓を割って燃えさかる炎を『ホワイトアウト』で消火した後だ。
「前回あれだけ掃除しましたのに、またですか」
北都の隣に立つクナイ・アヤシ(くない・あやし)も既視感のある様子にため息を洩らす。あれほど危険の中掃除したというのに全てが水の泡となっている。
「だよな。後でゴミの分別を一から教えてやるしかないな」
シンは掃除だけでなく友人に頼りっきりのオルナへの指導も考えていた。
「ササカさんから処理費用は全部オルナさん負担で構わないという事だから泣きっ面に蜂って気がするよ」
北都は依頼を受けた時に聞いた話を思い出した。
「……まぁ、危険地帯で生活するよりはマシだろ」
シンはざっと城内を見て高額な費用になるだろうと見積もりつつも仕方無いと思っていた。
「とりあえず、煙が気になるから一度実験室に行ってから消火した厨房を片付けてごみ箱を全て外に出して掃除をしていくよ」
「……ついでに窓ガラスと厨房の修繕業者にも連絡をしておきます」
北都とクナイは自分達の予定を話した。
「ロゼ、オレ達も実験室に行くんだろ?」
「そのつもり。町の被害を放ってはおけないから」
シンと九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は実験室に向かう事に決めた。
「実験室ならルカ達も行くよ。あそこは前回も危ない部屋だったから人が多い方がいいと思うし」
四人の話を耳にしたルカルカ・ルー(るかるか・るー)が会話に加わった。
「……しかし、レシピがあったとしても解読出来るかどうか怪しいものだ」
ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が懸念を口にした。前回の大掃除でオルナの悪筆を知っているので。
「……悪筆なんだよねぇ。確認してみるよ」
北都は『テレパシー』でオルナに話しかけてレシピの内容を聞き出した。実験室に到着してすぐに作業に取り掛かれるように。
運良く病院のオルナは目を覚ましており物忘れも発症していなかったため無事に情報を得る事が出来た。
「分かったよ……」
北都は聞い事を洩らさずみんなに話した。
「ありがとう」
礼を言うローズ。
「普通にすれば煙が出るような物は出来ないはずだが」
嫌な予感が頭によぎるダリル。聞いたレシピでは無事に完成させる事が出来るのだ。
「とりあえず、行こうよ!」
ルカルカの合図でいざ実験室に向かう事に。
向かう道々、ポルターガイストに遭遇するも北都の『行動予測』で飛んでくる物を速やかに回避するだけにして突き進んだ。なぜなら煙を止めるのが目的のため前住人の相手をまともにしている暇は無いのだ。無事に辿り着くと『T・アクティベーション』で身体への影響を防いだ北都が薬にふたを閉めて煙を止めた。
それが終わると
「僕達はもう行くよ」
「では後ほど」
北都とクイナは厨房へ向かった。
「前回みたいに手分けしないと大変だと思うから何かあったら言ってね。すぐに駆けつけるから」
ルカルカはそう言って北都達を見送った。
実験室。
紙類や汚れに溢れ、薬品が転がって散々な様子が広がっていた。
「……実験器具が汚れている。もしかしたら付着していた汚れから余分な成分が流れて混ざったのかも」
ローズは調合に使用されたと思われる実験器具を確認し、原因の一つを発見した。
「ロゼ、他の器具を使え。それはオレが洗浄しておく」
シンは手早く棚から清潔な新しい器具を渡し、調合に使用された器具を全て回収した。
「予想通りレシピの解読は不可能だったな」
ダリルはレシピを発見するなり予想通りであった事を確認していた。レシピに綴られているのは解読不能の文字らしきものばかり。
「調合に使用したのはこれか。素材を間違えているな」
ダリルは台に散らばる素材を一つ一つ確認し、失敗の原因を確認していく。
「見た目が似ているから間違えたのだと思う。もしかしたら配合量にも問題が起きているかもしれない」
ローズは正しい素材を棚から取り出して用意しながら言った。
「一から作り直した方が早いか」
「……その方がいいかもしれない。二人いればすぐに終わるはず」
「そうだな。その前に俺はこれを分析して町の原因がこれなのかはっきりさせておこう」
『薬学』を持つダリルとローズは速やかにこれからの作業の方向性を決めていく。
「終わったらルカが廃棄するよ」
ルカルカが失敗作の破棄担当を名乗り出る。
「……その間、私は薬を作るよ。退治ではなく浄化の薬を。時間はそれほど無いかもしれないけど改変をしてみる。原因は幽霊ではなくて煙が出ていたこの薬にあるはずなのに力ずくはちょっと可哀想だから」
ローズは早速幽霊浄化薬の作成に入った。
「あぁ、終わり次第手伝う」
ダリルは手早く分析を開始した。
「……とりあえず、薬品を片っ端からまとめていくか」
実験器具の洗浄を終えたシンは目に付く薬品を一カ所にまとめて調合を終えたローズとダリルに確認して貰った後に廃棄する事を考えた。
「ルカはここに邪魔者が来ないように見張ってるね……って早速来たよ!」
ルカルカは薬作成と掃除の邪魔をする前住人の警戒を始めるも早速やって来た。
「すぐに何とかするから少しだけ待って」
ルカルカは何とか説得を試みようとするが、前住人は聞き入れず、危険な薬品が入った薬や器具を飛ばしたりする。
「……さすがに実験室でこれはまずいぞ」
シンは速やかに『ハウスキーパー』で飛ばされた器具やら薬品やらを片付けていく。
「そうだね。すぐに何とかするから」
ルカルカはシンにうなずいた後、改めて前住人に向き直る。その表情は申し訳なさでいっぱいだった。
「……ごめんなさい」
ルカルカは前住人に謝るなり『カタストロフィ』で強制的に浄化させナラカに送った。
この後も前住人達が襲って来る度にルカルカは『フールパペット』で死者を操って成仏せたりして薬制作や清掃の作業を守っていた。シンはごみをごみ袋に突っ込んでは外へ運んだり拭き掃除やらで忙しく動き回っていた。ダリルは分析を終え、素材や配合量に器具の汚れからの成分流出などダリルとローズの見立ては全て的中していた。結果は町にいる者にダリルが知らせ、それから幽霊浄化薬に加わり『薬学』を持つダリルとローズはすぐに完成させた。失敗薬はルカルカが容器に廃棄して密封し、魔法ごみと一緒にまとめた。
完成後、ダリルは散布用容器を取りに行くために広間に向かった。前住人にも当然遭遇するが『アンデッド:レイス』に容赦なく食わせて強引にナラカに送った。
ダリルは清掃後の広間でエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)達が花の手入れに使用していた霧吹きを幾つか発見するなり、拝借し実験室に戻った。途中、書斎を横切った際に正体不明の魔術師の手掛かりを探る者達に遭遇する事に。
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