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リアクション
メッセージフォーユー
ファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)
僕、かわい維新は、ちょっと人様に表立って紹介できない、でも、非常に親密なステディのファタ・オルガナちゃんの要請によってここにいるわけだけど、そもそも、人に言えないステディをはたしてステディと呼んでよいのか? おそらく二十以上年齢差のある僕らの間に友情は存在しているのか、しかも、僕とファタちゃんの・・・すぎる交際はある意味、犯罪ではないのだろうか? なんて疑問は宇宙の彼方に蹴っ飛ばすにしても、なんだか、僕がこの真実の館にいる理由は、ファタちゃんからのメールだけじゃない気がする。
「そうじゃない気がするんだッ!」
「な、なにをいきなり叫んでおるのじゃ。
悩みがあるなら、いま、ここでも、ベットの中ででも、いつでもわしに打ちあければよいのじゃぞ。
遠慮はいらん」
「ええっ。
ファタちゃんは、僕が九歳の少女の、この小さな胸を痛めながら心のうちを語っている、章の冒頭の文章を読んでくれてないの」
僕の反則気味の問いに、隣にいるファタちゃんはにやりと笑う。
「当然、読んでおるさ。
僕、かわい維新は、から、ファタちゃんからのメールだけじゃない気がする。までじゃろう」
「なら、どうして僕が叫んだのか、わかってて、わざわざ尋ねたわけだよね。
そういうの、ステディとして不親切の極みだと思うな、僕は」
「待て。待て。
わしに、自分のモノローグを読んだかどうかきく、おぬしのほうが危険じゃ。
それは言わないのがお約束じゃぞ」
「禁則事項なんて、誰からも教えてもらってないよ」
「大人の大事な約束じゃ。そうでなくてもミステリは約束の多いジャンルじゃからな。
登場人物みんなで暗黙のルールを守ってこそ、楽しくミステリできるというものじゃぞ」
「ふうん。
前に、かわい家のおばさんが、有名なミステリ小説で名探偵が自分たちを作中の登場人物だと認めたうえで、過去のミステリのトリックをまとめて説明をする作品があるって教えてくれたけど」
「カーの「三つの棺」でのフェル博士の密室講義じゃな。
あれは、特例じゃ。しかも、あれはああして過去作を分類した後、前例のないトリックを作品内でみせるという大ケレンの一部でもある」
よくわかんないけど、面倒になってきたから、もういいや。
仕切りなおそうっと。
世間では天才少年探偵と呼ばれているが、正体は稀代の犯罪者、変態少年弓月くるとの陰謀によって、血族殺しの罪をきせられた僕、九歳の少女、かわい維新は、移動少年院コリィベルでのつらい獄中生活をどうにか乗りこえ、出所して、ステディのファタ・オルガナ}ちゃんと一緒に、今日も真実を求めて冒険してる。
今回の僕らの使命は、なんと幽霊の正体探しです。
マジェスティックの黒幕、アンベール男爵が所有する真実の館に出没する謎めいた女の幽霊の正体は、はたしてなんなのか。幽霊はやっぱり幽霊なのか。
勇気と探究心を武器に今夜も僕はがんばるよ!
「大スジはあっているにしても、いろいろデタラメじゃな」
「なんだ、やっぱり、読んでるじゃないか」
「んふんふんふんふ。おぬしのことをいつも気にしておるのじゃ。愛情のあらわれじゃよ」
「愛なら反則も許されるのかな」
「あたりまえじゃ」
さも自信ありげに頷くファタちゃんは放っておいて、僕は歩きだす。もちろん、ファタちゃんはついてきた。
「どこへ行くのじゃ」
「館にいるみんなに話をきくんだ。
例によって、話が錯綜してるみたいだけど、幽霊専門で動いてるのは、僕らだけじゃないかな」
「なるほどな。おぬしがなにをするにしても、わしは維新についてゆくだけじゃ」
一人だとそれこそトイレ掃除から公共料金の支払いまで全部、自分でやらなくっちゃならないし、側に手伝ってくれる人がいるのって助かるよね。
素直にお礼を言っておくね。
ファタちゃん、いつも、ありがとう。