|
|
リアクション
ファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな) 清泉 北都(いずみ・ほくと) ソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと) シャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)
「こんにちは」
「きみは、かわい維新ちゃん、だね。どうかしたの。僕になにか用かな」
「用があるのなら、もったいぶらずに、なおかつ手短にしろ。俺たちは忙しいんだ」
館の一階、大ホールにいたのは、たしか、えっと、かわい家事件の時に麻美くんとお芝居をしていた清泉北都くんと、北都くんのパートナーのソーマ・アルジェントくんだ。
二人は、薔薇の学舎の学生さんだったと思う。
黒髪のジャギーで、表面上はやさしいけど、どこか冷たいというか、さみしい感じのする北都くんと、背が高くて赤い眼で、目線も口調も常に俺様のソーマくんは、相変わらずみたいだね。
「北都くん。ソーマくん。忙しいところ、ごめんなさい。
いきなり、ヘンな質問だとは思うけれど、幽霊を知らないかな」
「わしと維新は、この館を徘徊しておるとかいう女の幽霊を探しておるのじゃ。
霊、本体でなくとも、いわく因縁話も大歓迎じゃぞ。この館やアンベール男爵にまつわるそのテの話をなにか耳にしてはおらぬかのう」
「俺は知らんな。
つまり、維新のリクエストにはこたえられんという意味だ。
俺、個人としてなら、霊、悪魔の類の知り合いは、過去も現在も腐るほどいるが、そいつらをおまえらに紹介しろ、という話ではないしな。
紹介してやる義理もない」
ソーマくんが即答した。
この人と話すのは、ずいぶんふさしぶりの気がするな。キャラがぶれてないので合格ですよ。
「そうだねぇ。幽霊っていうのは、ルディさんが憑りつかれているとかって話だよね」
「ふん。あの神父がか。おもしろい。インチキな除霊でもして霊の怒りを買ったんじゃないのか。
なら、一つ俺が様子をみにいってやろうか。あいつに憑いてるものよりも、もっと強いやつを呼びだして、神父を脅かしてやってもいいぞ」
「やめておこうよ。ルディさんは、ああみえてまじめな人だからね。なにか事情があって、彼にほんとにそれがみえているとしたら、かなり悩んでるんじゃないのかな」
「だったら、なおさらだ。もともと死者の魂をいさめたりするのが、ルディの仕事のはずだろう。
それが、なんだ。
自分ではどうともできずに、こんな子供に助けを求めているとは、まったく話にならんな」
「言いすぎだよ。ソーマ」
二人の会話を聞いてて思うけど、北都くんの優しい言葉のあとにいつも、「でも、僕にはあんまり関係ないよね」って、さみしげな心の声がついてる気がするんだよね。
人とうまくかかわるのが苦手というか、北都くんは、そういう人なんじゃないかな。
他人との距離感って難しいものね。
近づきすぎも離れすぎもよくないし、僕もよくそれで苦しいおもいをするんだ。
感情の起伏がわかりやすいソーマくんのほうが、実は単純で普通の人っぽいかも。
吸血鬼や魔族って、ストレートで悩みなさそうだもんな。
グワァー。俺はおまえを喰ってやるぞー。キャー助けてぇー。フハハハハ。おまえはもうおしまいだぁー。
みたいな。
「どうした。おまえは俺になにか言いたいことでもあるのか」
空気を読まずにいつも自分のキャラを貫いててうらやましいなぁ、と思ってたら、ソーマくんににらまれました。
「ないです。まったくないです。ソーマくんは、人間じゃないのに、人の心の機微を読むことができて素敵なかただな、とずっと思ってました。
ソーマくんみたいな人といると北都くんも楽だろうな、って」
「幼いながらに修羅場をくぐって、おまえの虚言癖もだいぶよくなったようじゃないか」
理由は、よくわからないけどソーマくんに頭を撫でられました。
「それでは、わしらは行くとするかな。北都、ソーマ、邪魔をして悪かったな。
わしと維新は、さきほども話したように、幽霊の件の真相を探して、館内を調査しておるので、もしなにか気づいたことがあったら、いつでも声をかけてくれ。では、またな」
ファタちゃんに手をひかれて、場を離れかけた僕の肩を北都くんがそっとつかんだ。
「維新ちゃん。あのね、ルディ神父さんによろしく伝えて欲しいんだ。あの人には、僕、そのう、自分で言うのも恥ずかしいんだけど、神の子とか呼ばれてて、でも、なにもしてあげられなかったと思うんだ。
僕とソーマはある殺人事件のことで人と会わないといけないから、きみたちと一緒にはいけないんだけど、だけど、ルディさんの心配はしているから」
「ようするに手が空けば、俺たちも、神父の力になってやってもよいと言っているんだ。そうだな、北都」
「うん。まぁ、たいしてなにもできないだろうけどね」
またまた自信なさそうな顔をして。
あのね、役に立たないとか、そんなこと全然なくて、きみが近くにいったら、BL神父は元気100倍になるに決まってるよ。
北都くんのほうが僕よりもルディさんのことを考えてる気がするな。
気のせいかもしれないけどね。
「了解。じゃ」
僕らは、北都くんたちと別れて、十歩も歩かないうちに次の聞き込み相手に出会った。
クールな彼女は名探偵で、いつでもなんでも知ってるようなフリをしてる、僕の大キライなタイプだ。