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リアクション
ファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな) シャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ) 桜田門 凱(さくらだもん・がい) ヤード・スコットランド(やーど・すこっとらんど)
しばらくいって、もう完全にシャルちゃんたちには見えないところまできた、と確信したところで、僕は目を開けて、ようやく自分の力で歩きはじめた。
「ごめんね。ファタちゃん、助かったよ。
シャルちゃんの、私スゴイでしょ。オーラにあてられて、気を失っちゃったんだ。
あーゆー生徒会長で成績優秀、容姿端麗で、生きてるだけで周囲にプレッシャーをあたえていて、なおかつそれにも自覚的です、みたいな人は苦手なんだ」
「相手の長所をすべて欠点のように言うとは、さすがじゃな。
だが、シャルはシャルでおぬしに気をつかっておるようであったぞ」
「えーっ。それ、僕知らない。
まったく、聞えてないから。
今後、どこかであっても、ゼッタイ知らない人だからね」
「んふんふんふ。
それもおぬしらしくて、よかろう。
おやおや今度はその部屋へ入るのか」
僕はとりあえず、中から人の気配のする部屋のドアノブへ手をかけた。
さすが、マジェの職業犯罪者の大元締め、アンベール男爵の別宅だけあって、屋敷内には大中小、いろんな広さの部屋がいっぱいある。
できればルディ神父にあって、彼にうらみのある人物の心当たりを聞きたいんだけど、この家の場合、そのためには、山ほどあるドアを片っ端から開けるしかない。
で、開けてみた。
「どうも。スコットランドヤードのほうからきました」
「だ、そうじゃ」
小会議室とういうか、控え室っぽい洋室には、おおよそ十人くらいの人がいた。
僕らが部屋へ入るとほぼ同時に身をかがめ、そそくさとソファーの陰に隠れたのが一人。
僕は当然、まず、そいつに近づく。
だって怪しいんだもの。
注目してください、って言わんばかりすぎるよ。
本気で隠れたのだとしたら、どんな間抜けな人なんだろう。
「あのー僕らをみて隠れましたよね。
スコットランドヤードに見つかっちゃヤバイ事情でもお持ちですか」
「あっちへ行ってクダサイネ。
ワタシはチェルシー・ブリック(ヤード・スコットランド})。スコットランドヤードとは、すこしも関係ないデス」
チェルシーちゃんは、黒い肌をした高校生ぐらいの女の子だ。
しゃがんでソファーにしがみつきながら、うつむかれたら、僕としても放っておけないなぁ。
「警察官とあ会いたくない理由でもあるの」
「キミたちよりも、キミたちのすぐうしろからきた人と、ワタシ、あいたくないデス。
ワタシは、彼とは関係ないデス。そうデス。ヤードの人、あの人を追い払ってクダサイヨ。
カレは鬼、ケダモノ、デス」
チェルシーちゃんが指さした先には、顔全体を隠すように、頭部にすっぽり大型の紙袋をかぶり、フラフラしている怪人物がいた。
袋に2つあいた穴からは、尋常じゃない光を宿した瞳がこちらをのぞいている。
さっき、あんな人、いたっけ。
きっと、チェルシーちゃんの言葉通り、僕らの後からはいってきたんだね。
グレーのコートにズボン、性別は男性。
身長は190センチを超えてるはず。
かなりの長身で肉づきもいい感じ。
ぶつぶつとなにかをつぶやきつつ、室内をさまよい歩いてる。
「見るからに危なそうな人だね」
「どれどれ。維新もチェルシーもさがっておれ。わしが様子をみてきてやろう」
ファタちゃんは部屋にいる誰もが避けているミスター紙袋に、自分から近づいていくと、ジャンプして男の頭から袋を剥ぎ取った。
角刈りの黒髪、無精ヒゲ、油ぎった顔で、むさくるしさ満点の、東洋人っぽい青年だ。
紙袋が欲しいのか、男は、もがくように両腕を振り回したが、目の焦点があっておらず、ファタちゃんに手は届かない。
ファタちゃんは、紙袋をまるめて床に捨てると、今度はスタンガンを懐から取り出し、スイッチを入れて、ちょっとだけ待つと、再びジャンプして男の首すじにガンをあてた。
青い火花が散って、バチバチという音の後、男は顔からきれいに床に倒れ、のびてしまう。
「オー、素晴らしいデス。
凱をやっつけてくれて、アリガトゴザイマシタ」
チェルシーちゃんは、僕に早口でお礼を言い、すぐに部屋をでていった。
入れ替わりに、見事、怪人を退治したファタちゃんが僕の横へと戻ってくる。
「ファタちゃん。お見事。スタンガンってけっこう効くんだね」
「ふむ。こいつは警察用の超強力なやつじゃ。250万ボルトじゃったか。
おぬしも含めて、わしのかわいい幼女たちは常に変質者どもに狙われておるでのう。
いざという時のために各種、護身具を持ち歩いておる。
あの男は、薬物中毒ではなかろうか。
小声で、僕は、象じゃない。象じゃない。と、ひたすら繰り返しておったぞ。
象となると、紙袋は、もしかして、エレファントマンのコスプレか?
あるいは粗悪なクスリで脳をやられておるやもしれぬ」
エレファントマンが誰なのか僕は知らない。
アジアンの彼が、いまマネをしていたのがそうだとしたら、オリジナルの象男さんは相当、ヘンな人らしいので、知りたくもないです。
「へぇ。クスリはこわいね」
「心臓が弱いものなら即天国へゆける、合法範囲内では最強度の電撃をくらわせたので、ひとまず、わしらがここにいる間は、起きぬじゃろう」