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天下無双・超決戦!

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天下無双・超決戦!

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六章 終戦と未来の遺産


 戦場の奥で構えていたハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)
苦戦する味方の軍勢を見つめていると、総崩れとなった泉軍から桜葉 忍(さくらば・しのぶ)織田 信長(おだ・のぶなが)が上がっていく。
「まずは、周りにいる兵を片付る!」
「ふん、承知しておるわ!」
 信長は先陣を切ると、無双モード「天下不武」を発動した。
剣に黒い炎を纏わせ地面に突き刺し、地面から噴き出した黒い炎が広範囲で敵を焼き尽くす。
黒い炎は生き物のように敵兵の足下に絡みつくと、その身体を喰らうように頭の天辺まで覆ってしまう。のたうち回っても炎が消えることは無く、消えたときは兵士の命の灯火が消えるときだった。
「やるなあ、それじゃあ俺も!」
 ハイナ軍の兵が黒い炎に飲まれるのを見て、忍も追い打ちをかけるように無双モード「オーバーブレイク」を発動する。
忍は神速の動きで周りの兵を連続で斬り刻んでいく。剣閃だけが兵士の目に映り、それが身体に触れた瞬間には自身の身体が赤く染まる。
世界が赤と黒一色に染まってしまったような錯覚さえ覚えそうな中、忍は最後のトドメと言わんばかりに魔力を剣に込めて、周囲を薙ぎ払った。
黒の炎さえ切り裂く斬撃は兵士達の上半身と下半身を泣き別れにさせ、無残な死体が野に転がる。
 それでも、十万の歩兵の一割を切るのがやっとである。
「やれやれ、数だけは無駄におるわ」
「それでも、やるしかないよ」
 愚痴る信長を忍が抑えていると、
「大変そうネ。手伝ってやるネ!」
「私にもやらせなさい!」
 加勢に入ったのは第六式・シュネーシュツルム(まーくぜくす・しゅねーしゅつるむ)セイファー・コントラクト(こんとらくと・せいふぁー)だった。
「ふん、まさか骸に助太刀する日が来るとは思わんかったわ」
「それなら、今度はただの屍じゃないってことを思い知らせてやるネ!」
 シュネーシュツルムは不用心に敵に近づき袈裟斬りに切られるが、その刀傷は装備していた装備していた骸羅を切り裂くだけに終わる。
 それだけなら丈夫なイコンというだけで話しは済むが、シュネーシュツルムが装着しているイコンは自ら自己修復を始めた。
「ひっ……! な、なんだぁこいつ!?」
「ヒャッヒャッハー! オレが、オレこそが最強のスケルトンにして、不死者!! オレ様が出てきたからには、お前らはもうオシマイネ!!」
 甲高く叫ぶとシュネーシュツルムは敵を切り倒し、舞うように次々と敵に剣を振るう。その間も背中を斬られ、兜を斬られ、足を切りつけられているが、シュネーシュツルムは意に介さず敵を切り伏せ、イコンの傷を修復させていく。
「トドメをさすネ!」
 シュネーシュツルムは敵を切り倒し無双モードで手にした弓で槍を放ち、直線状の敵をぶっとばす。
 一騎当千の働きを見せるシュネーシュツルムを見て、セイファーは苛立たしげにため息をつく。
「今日、私の前に立った事、後悔しなさい!」
 半ば、というより完全に八つ当たりでセイファーは敵を駆逐していく。
切り伏せ、切り倒し、ねじ伏せる。その姿はまさに制圧前進を体現していた。
ただ、暴れれば暴れるだけ怒りの熱は上昇する。八つ当たりとはそういう性質を孕んでおり、敵を一人なぎ倒していく度にセイファーの怒りのボルテージは上がっていく。
セイファーはそんな状態から無双モードを発動させた。
「はあああああああああああああっ!」
 怒りを口から吐き出すような勢いで叫び、一瞬にして敵兵に四つの斬撃を見舞う。
「これなら、充分に戦えそうだ」
「私たちも遅れは取らんぞ!」
 忍と信長も武器を構え、二人に続き敵兵を打ち倒していく。
 敵が四人に気を取られていると後方にいた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)が前に出る。
 唯斗が着ているイコンはエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)リーズ・クオルヴェル(りーず・くおるう゛ぇる)紫月 睡蓮(しづき・すいれん)魂剛を元に提案した第三世代型決戦用鬼鎧、桜呀だ。
「桜呀には剥離型推進装甲がついている。速度と耐久性を両立する為の強引な解決策だな、まあ突撃用と考えて欲しい。あと、これを持っていけ」
 エクスは大太刀を渡してくる。
「名を雪割という。鬼刀の単純な大型版。重さと斬れ味である程度振り回しても使えるようになっている」
「ありがとう。さっそく使わせてもらうよ」
 唯斗が受け取ると、リーズも武装を渡してくる。
「私は新式コーティングブレイドと単発式徹甲炸薬砲を用意したよ。実体剣とビームソードの複合武装と大口径HEAT弾を使用する対重装甲型用ライフルだよ」
「うん、ありがとう。それじゃあ、行ってくる」
 唯斗は兵士達の頭を飛び越えるほど高く跳躍すると剥離型推進装甲【翔星】を起動し、真っ直ぐにハイナのいる中心部を目指して飛んでいく。翔星は最初に追加装甲、次いで推進機事態をまるで宇宙に向かうロケットのようにパージしていく。
 だが、パージしたからと言って速度が急に減速するわけでは無く唯斗の身体はそのまま高速でハイナへと向かっていく。
 唯斗は空中で身体を制御しながら単発式徹甲炸薬砲を構えてぶっ放す。
 吐き出された一発はハイナの足下を穿ち、小爆発が発生する。唯斗は構えた武器を捨てて対神用大太刀【雪割】と新式コーティングブレイドを構えてハイナと切り結ぶ。
それと同時に勇平が陣をかき分けて二人の元へと駆けつけた。
「援護する!」
 勇平は重火力型の機晶ブレード搭載型ライフル二式を構える。ハイナは遠くからの殺気を察知して、そちらに向かおうとするが唯斗が道を塞ぎ斬りかかる。
「そう簡単にはやらせないさ!」
「ああもう! じれったい!」
 ハイナは刀を振るい唯斗を払おうとするが、唯斗は粘り強く正面に立ち続け、勇平は無双モードで二式のチャージを回復し、動き回るハイナに狙いを定める。それに呼応するように唯斗はハイナの足を止めるように連撃を見舞う。
「くっ!」
 動き回って的を散らしたいハイナの心理を逆手に取るような唯斗の連撃は確実にハイナの足を止め、焦燥がさらにハイナの動きを鈍らせ、唯斗と鍔迫り合ってしまう。
「くらえっ!」
 勇平は二式の引き金を引き、ハイナの横腹目がけてレーザーが伸びる。
 瞬間、唯斗と鍔迫り合っていたハイナは──背後に向かって倒れ込んだ。
「なっ!?」
 唯斗は突然のことに身体をつんのめらせそうになるが、何とか足を踏ん張らせ後方に飛ぶと、ハイナと唯斗の間を真っ白なレーザーが通過した。
 ハイナはにやりと笑うと、素早く立ち上がり勇平に斬りかかった。
「わっ!」
 勇平は新式の機晶エネルギーフィールドを展開し、ハイナの剣撃が薄く展開されたフィールドに止められる。
「こな薄いフィールド、いつまで持つか見物でありんす!」
 ハイナが叫び、唯斗が近づくまでの間の一瞬に剣撃が雨のように降り注ぎフィールドが破壊されそうになる。
 そこに割って入ったのは朝霧 垂(あさぎり・しづり)の拳と東 朱鷺(あずま・とき)の八卦符だった。
 咄嗟に後ろに飛んだハイナを垂が指さす。
「勝負だハイナっ! 俺が負けたら酒を奢ってやる! ただし、俺が勝ったら酒を奢ってもらうぞっ!!」
「いいでありんす、が、私は簡単には負けんせん!」
 ハイナが刀を構え、垂は自分のイコン黒麒麟をその身に纏い、光の輪を四肢に纏わせて斬撃を受け流す。数手、わざとらしくハイナが隙を見せて誘うが、垂は徹底して守勢に回り、ハイナはそれならばとデタラメともとれる軌道で刀を振るった。
「ほらほら! 守ってるだけじゃ勝てんせんよ!」
 ハイナがオーバーモーションで垂のガードを打ち破ろうと刀を振り下ろそうとした瞬間──空中に玄武の幼生が刀を止めた。
「な!?」
 突然の横やりにハイナの連撃が止まると、垂はこの時を待っていたように反撃に転じた。
 ハイナは横目で八卦術・八式【兌】を駆使する朱鷺の姿が見えた。
「陰陽師専用イコンの実力。とくとご覧ください」
 そう言うと朱鷺は続いて白虎の幼生をハイナの前に出現させ、鋭い爪が素早きハイナに振り下ろされ、垂はその流れに乗るように朱鷺の式神と連携を取る。
「なんでありんす! ぬしたちのその示し合わせたような連携は!」
「俺が用意したパートナーシステムの力だ! 事前に決めておいた味方機とこのシステムを組む事で、お互いの連携行動をスムーズにしたんだよ!」
 垂は説明している間にも青龍と朱雀との連係攻撃が続く。まるでパズルを埋めるがごとく、垂の隙を完璧に朱鷺の式神がフォローしておりハイナは防戦を強いられていた。
「ならば……強引に流れを持っていくだけでありんす!」
 ハイナは刀を正眼に構えながら、垂の拳が届かないギリギリまで後ろに踏み込みながら刀を振るう。間合いは拳の垂と刀のハイナでは圧倒的な差が生じ、ハイナは一撃を狙わず細かく当てていく戦法にシフトしたのだ。
「この……!」
 今度は垂が強引に前に出ようとすると、合わせるようにハイナが右足を踏みだし突きを見舞う。自ら刺さりに行く格好となった垂を朱鷺の麒麟が弾き飛ばし、なんとか致命傷を避けることが出来た。
「くそ!」
 垂は攻撃に転じずに大きく後ろに飛ぶと、ハイナは一定の距離を保ちながら近づき、刀の切っ先が襲いかかってくる。
「逃がしんせんよ!」
 逃げる獲物を追うようにハイナは垂の間合いに入らず、追い回す。
 が、
「引っかかりましたね?」
 朱鷺は薄く笑みを浮かべ、横目にその表情が飛び込んできたハイナの心に不安の波が押し寄せた。
 その不安の正体は足下の八卦符にあり、ハイナは全てを悟ったように苦い顔をする。
「しまった……! 逃げ回っていたのはこのためでありんすか……!」
「その通り。でも、もう遅いです。……八卦術・壱式。受けてください!」
 朱鷺は無双モードを発動させると、ハイナの足下にあった八卦符が一斉に襲いかかった。
「仕方ないでありんす……!」
 ハイナは刀を鞘に収めると、鞘を持ち無双モードを発動させてから居合いのように刀を抜き放った。刹那、広範囲にわたり強力な斬撃が飛び、八卦符がバラバラに切り裂かれた。
 だが、それを見て朱鷺は、笑っていた。
「待ってたぜ……この瞬間を!」
 無双モードが終わって隙が出来たハイナに垂が近づき、無双モードを発動させた。エナジーバースト&嵐の儀式を周囲に纏い、紙吹雪が吹き飛ばされてハイナと垂の間の視界が晴れた。
 瞬間、垂は地面を蹴り攻防一体の弾丸となってハイナに突撃した。
「くっ!」
 ハイナは刀で防御態勢を取るが、垂は構わず激突する。金属がぶつかる鈍い音が周囲に響き、ハイナは地面を抉りながら弾丸となった垂を受け止める。
 やがて、垂の勢いは止まった。
 ハイナは笑みを浮かべる。
「これは……わっちの負けでありんす……」
 ハイナは砕けた刀を落とし、ボロボロになった鎧を見つめてそう言った。
 その声に周りの兵士達は歓喜し、ハイナの兵士達は膝を落とす。垂は周囲を見渡しながらハイナに手を差し伸べた。
「それじゃあ、約束。酒おごってもらうぜ?」
「仕方ないでありんす……約束は守りんすよ」
 ハイナが垂の手を取り、歓声は一層大きくなる。

 こうして、シミュレーター内の大合戦は契約者軍の勝利で幕を閉じた。


 戦争が終息し、だれもいなくなったシミュレーター内をイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)長谷川 真琴(はせがわ・まこと)と共に歩いて行く。
「やはり、実際に合戦の戦果を目の当たりにするのが一番ですね。データや要望もかなり溜まりましたし、帰ったらさっそくいくつか制作プランを練りましょう」
 真琴は頷いた。
「ええ、イコンのプロとしてしっかり開発を進めましょう」
 二人は周囲を見渡す。
 怒号が響き渡り、剣がぶつかり合う音も砲撃音も聞こえなくなったが、えぐれた地面と折れてあちこちにささった剣、砕けた鎧の欠片、鼻につく硝煙の匂いが先ほどまでここが戦場であったことを思い出させる。
「……実際にこれだけの被害が現実で起きたら……と考えると少し怖いですね」
「でも、だからこそ新型のイコンは必要だわ。いつか来る巨大な敵に出会ったとき、戦える武器は揃えておかないと。ここにあるものは戦闘の残骸だけど……未来への遺産でもあるのだから」
「……そうですね」
 イーリャは微笑んで見せる。
「それじゃあ、一度シミュレーターから出ましょうか。ひとまず全部のアイデアの改善点や修正箇所を洗い出しからですね」
「今夜は徹夜になりそうですね」
 真琴はそんな言葉を口にするが、表情はそれとは裏腹にこれからする作業に胸を躍らせて嬉しそうな顔になっている。
 二人が戻ろうとすると、ジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)が呼び止める。
「それならさ、あたしのアイデアも聞いてよ。第三世代相当の次世代バーデュナミス。
それが無理ならフィーニクスやスフィーダへのBMI搭載でもいいわ! そろそろ機体性能がきついのよね……フィーニクスも」
 それに続いてクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)も喋り始める。
「それならあたいは重火力型支援機の大型機晶カノンとそれを運用できるように追加装甲及び対反動用の脚部ユニットに冷却システムとか提案するよ」
 真琴とイーリャは顔を見合わせて吹き出すように笑った。
「分かりました。それなら、しっかりと考えさせてもらうわ」
「もちろん、二人にも手伝って貰いますけどね」
 二人に続くようにジヴァたちも歩き出す。


 この戦いで得た物が未来への遺産になると信じて。


 ──了──

担当マスターより

▼担当マスター

西里田篤史

▼マスターコメント

・リアクションに書かれている内容は全てシミュレーター内のできごとです。
・そのできごとはコリマや、長曽禰、渡部がちゃんと見ていて、有用なアイデアはもちかえっています。

※今回のシナリオで送られたアイデアを検討し、採用のものが反映されたイコン・PSは10月下旬頃に購入可能となる予定です。
 天学専用機については、高機動型をベースに、サクシード専用機と汎用機の二種類の方向とし、汎用機体については重火力要素も予定しています。
 また、パーツについては、10月中に順次入手可能となる予定です。
(機体のアイデアとして送られましたものにつきましても、一部パーツのアイデアとさせていただくものもございます)


 どうも、西里田篤史です。
 約二ヶ月ぶりにシナリオを投稿しているように見えて、実は一ヶ月前によそのGMさんのシナリオを代筆して髪を真っ白にしながら書き終えて「さて、そろそろリハビリ的な頭の軽いシナリオでも書こう」と思った矢先に、この仕事が舞い込み再び髪を真っ白にしてリアクションを書き上げました。
 やはり、一から自分で考えてないシナリオを担当するのは大変ですね。
 次こそは本当に頭の軽いシナリオを作りますので機会がありましたら皆さんも何も考えずに気軽に参加していただけると幸いです。

 短くも愚痴に近い挨拶となりましたが、今回のシナリオにご参加いただきありがとうございました。

 それでは、失礼致します。