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リアクション
第一章 太陽がおっぱい作戦
ここは葦原島B地区。
人里から離れ、手付かずの自然に覆われたこの辺りは、ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)によってエネルギー開発の特区になっていた。
開発の目玉は、ニコラ・ライヒナーム(にこら・らいひなーむ)が用意したパラミタ大陸型の巨大なコイル――世界コイルによる発電だ。
その名も太陽がおっぱい作戦【オペレーション・アマテラス】。中に引きこもった女神の魂を裸踊りでおびき出して、電力に変えるという作戦である。
「いちおう、皆に言っとくでありんすが。モロはダメでありんすよ」
集まった契約者に向けて忠告しながら、ハイナが上着を脱ぐ。
「――では。裸踊りをはじめるでありんす!」
そしてハイナは葦原島の財政危機など忘れたかのように、嬉々として、豊かな乳房を振り乱したのであった。
マントを羽織ったふたりの美女、神月 摩耶(こうづき・まや)とクリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)が上機嫌でにやついていた。
ハイナによる開始の合図と同時に、ふたりはマントを脱ぎ捨てる。その下につけているのは極細のスリングショットだ。
摩耶はピンク、クリームヒルトは白。セクシーすぎるふたりの水着は、もはや紐と形容してもよさそうなほどだが、見えちゃいけない処はギリギリ隠れている。
「あたし達の熱烈なる踊りを見せつけてあげましょうね、摩耶♪」
微笑むクリームヒルトが、高級日焼けオイルをぶちまけた。
ふたりの柔肌にキャラメルのような液体が降り注ぐ。彼女たちの弾けるような身体は、パラミタ一のパテェシエが作った極上のスイーツみたいになった。
「よぉし、行くわよっ」
「えへへっ。いっぱい気持よくなりたいなー♪」
互いの身体にたっぷりとオイルをすり込んでいく。指を絡め、脚を絡め、おっぱいを絡め合った。
彼女たちのパートナー董卓 仲穎(とうたく・ちゅうえい)と翔月・オッフェンバッハ(かづき・おっふぇんばっは)もまた、裸踊りに興じている。
「あられもない姿を晒しての乱痴気騒ぎ……。ふふ、何だか昔を思い出しますわね」
かつて中国漢末に暴虐を尽くしていたころの血がうずくのか。仲穎は、どことなくサディスティックな微笑を浮かべた。
「それでは愉しんで参りましょう、翔月様」
胸にサラシ、下腹部には黒い褌という刺激的なスタイルで、彼女は翔月の手をとる。対する翔月も同じように、サラシに赤い褌という格好をさせられていた。
「え、穎殿ぉ。此れは流石に恥ずかし過ぎるんだよ〜……♪」
局部がぎりぎり隠れる程度の衣装に、翔月は恥ずかしさのあまり頬を染める。自身の髪の色みたく赤面しながらも、その表情はとても嬉しそうだった。翔月は筋金入りのマゾなのである。
仲穎は、翔月の背後にまわると、手と腰を取って身体を密着させた。ワルツのような姿勢で、ふたりは妖艶に舞う。
「ほぉら。翔月様、もっと踊ってくださいませ」
「こ、こんなこと……恥ずかしい……。ああっ! 拙者の胸がぁっ」
ダンスに合わせて、仲穎が翔月の胸を搾り出すように揉んだ。やれ恥ずかしいだの、やれ観念してだのと言ってはいるが、いじられる度に翔月の口元は緩んでいく。
仲穎は追い打ちとばかりに、翔月の股間を脚で突き上げる。
「ああん……♪」
悦びの悲鳴をあげて、翔月はあたりをぴょんぴょん跳ねまわった。鼠径部に手を添えながら、前かがみになって仲穎をねめつける。
「う、うぬぬぅ。穎殿も、こ、こうしてあげるんだよ〜」
ついに翔月が反撃を試みた。彼女は仲穎に駆け寄ると、正面から力強く抱きしめたのだ。ぐりぐりと身体をよせつける翔月。
ふたりの豊満な乳房が、ぷにゅっと押しつぶされた。
わがままボディを魅せつけて楽しむ四人に、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)がぐいぐいと近づく。
「思う存分おぱーいを堪能しちゃるぜ! ぐふ。ぐふふふふふふふ」
不穏な――男ならばある意味で健全ともいえる笑い声を上げながら、アキラは堂々と盗撮!
ビデオカメラを構える彼は、会場を盛り上げるため【五人囃子】にBGMを奏でてもらった。ノリの良い音楽に合わせて、お供の【ミャンルー隊】も踊りだす。にゃーにゃーとじゃれあう猫の獣人たちはとっても可愛らしい。
「まだまだぁっ♪ 踊りってのは、もーっと情熱的にいかないとね」
「うん。クリムちゃん……もっとイイコト、しよっ♪」
音楽に乗って、摩耶とクリームヒルトの動きが激しくなる。背中合わせで手を繋ぎ、オイルまみれ身体を上下に擦りつけた。
肉感的に揺れ動く、胸とお尻と太もも。
「あはっ♪ 此のヌルヌルがたまらないわ」
「もっともっと気持ちよくなりたいなっ」
「望むところよ、摩耶。まだまだ激しくイクわよ♪」
クリームヒルトは胸をつきだして、おっぱいを強調する。摩耶は脚を大きく開き、股間を強調した。
「うっひょー!」
思わずアキラも急接近。はじけるふたりの汗が、ビデオカメラのレンズを濡らす。
あまりにも激しく動くので、ふたりの紐水着はだんだんずれていく。これは危険だ!
しかし、ふたりは水着を直すどころか、むしろ見せつけるように踊りつづけた。見えそうで見えないギリギリのラインを保ちつつ、ふたりのダンスはまだまだ続く。
とびちるサンオイルが、妖しく光っていた。
「ハイナ校長直々のお達しなんだ。皆もさあ脱げ! ほれ脱げ!! やれ脱げ!!!」
アキラは、おとなしく見学するだけのルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)とセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)を煽った。
露出度が急上昇していく会場のなかで、彼女たちは普段着のままだ。周囲が裸同然なので逆にちょっと浮いていた。
そんなパートナーたちに、アキラが詰め寄る。
「この場所は裸であることが正しいんだ。つまり、服なんて着ている方がおかしいんだよ!」
「おかしいのは貴様の理屈じゃ!」
激高したルシェイメアにぶっ飛ばされるアキラ。仰向けに倒れたまま鼻血を流す彼を、セレスティアは困ったような憐れむような、何とも言えぬ顔で見つめていた。
「……踊ると言っても、運動には変わりないですものね。激しく動けば喉が渇くし、お腹もすくかと思います」
セレスティアは裸踊りには参加せず、裏方に回って食事の準備にとりかかった。
食材や器具はあらかじめハイナに打診して、明倫館校のものを用意してもらっている。
「ポムクルさんもてつだうのだー」
「あら。ありがとうございます」
お供のポムクルさんたちが、セレスティアの料理を手伝いはじめた。
キャンプみたいに楽しげな雰囲気のなか、ルシェイメアはあくまでも周囲の警備に徹する。
不審者がおかしな行動をとらないか目を光らせているのだ。――その不審者とは、主にアキラのことであるが。
「おぱーい祭りじゃああ!」
復活したアキラが、懲りずに盗撮をつづけていた。ルシェイメアはもう一発ぶん殴ってやろうかと思ったが、参加者のなかには見られて興奮する人も多いようで、アキラがビデオカメラを向けるたび踊りが激しくなった。
盛り上がっているならしょうがないと、ルシェイメアは見過ごすことにする。
「ぐふふっ。いい絵がとれたぜぃ」
あらかた撮影すると、アキラは一息つく。
撮ってばかりだったので、そろそろ自分も踊りたくなっていた。
ぽんぽんと服を脱ぎ捨ててパンツ一丁になったアキラが狂乱しているあいだ、ルシェイメアはすかさずビデオをチェック。えっちぃ映像を検閲していった。
多少きわどいものでも大目にみてあげたが、あれやこれがちょっと見えちゃってるデータは、迷いなくThis video has been deletedしておいた。
「踊るおっぱいに見るおっぱい! 同じおっぱいなら揉まにゃ損損!!」
などとイカれた歌が聞こえてきたので、ルシェイメアはすぐに声のする方を見た。すると、全裸になったアキラが、女の子のおっぱいを揉もうとしているではないか。
「馬鹿ものー!」
ルシェイメアが光の速さですっ飛んでいき、アキラを星の彼方までぶっ飛ばした。
「あっ。流れ星」
セレスティアが葦原島の蒼空を翔ける、おっぱいハンターの残像を見上げていた。彼女は昼間の流れ星にお願い事をする。――アキラさんがもう少しだけ真人間になりますように、と。
「さて、調理も一段落したことだし……。ちょっと参加してみますね」
ポムクルさんに後を任せると、彼女は水着にお着替えした。露出度は高くなく、いたって普通のワンピース水着だが、控えめなセレスティアにすれば頑張ったほうである。
彼女の向かった先には、ぬりかべ お父さん(ぬりかべ・おとうさん)が景気良く踊っていた。
葦原に住んでるのは人間だけではない。妖怪代表とばかりに、お父さんがはりきっている。
お父さんはわざわざ妖怪の山まで足を運んで、同族に声をかけていた。人間と妖怪のあいだにはいざこざもあったが、こうしたところから、少しでも仲良くなればいいなという配慮だった。
「裸になってしまえば皆平等。まさに、異文化コミュニケーションの極地でありんす」
人も妖怪もこぞって踊る様をみて、ハイナが感心したように言う。
体の大きなぬりかべお父さんは、いつのまにやら妖怪たちの中心になっていた。まわりの人にぶつからないようにしながらも、みんなと一緒に楽しく踊っている。
ちなみにお父さん、全裸のまま踊っているが、彼にとってはそれが普段通りなのでなにも問題はない。
『ただの壁』にしか見えないお父さんを見て、ハイナがまたしても感心していた。
「まさに、貧乳はステータスでありんすな!」
コイルの中に引きこもる女神は巨乳好きらしいが、貧乳にも興味があるという。
それならばと、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)はその可愛らしいちっぱいを露わにしていた。
「あたしもキャストオフしちゃうよ!」
一見すると全裸のようだが、彼女は肌にしか見えないストッキング生地のタイツを着用しているのだ。さらに両胸にはニプレス、股間には絆創膏でガード。
「真っ裸(マッパ)じゃないから恥ずかしくないもん!」
ネージュは堂々と胸を張った。そり返ったつるぺたボディを舐めまわすように見ながら、ハイナが満足そうに言う。
「うむ。おっぱいは、貴賤貧富の別なしでありんす」
大きいものから小さいものまで、よりどりみどりなおっぱいの祭典に、さぞかし女神も満足していることだろう。
「よーし! あたしの歌唱力でもっと盛り上げちゃうぞっ!」
ネージュが得意の歌唱をはじめた。
アキラの【五人囃子】が奏でる音楽にあわせて、歌声を響かせる。ときに可愛らしく、ときにエモーショナルなネージュの声。会場はますます盛り上がった。
「なかなか、良いすじをしてるでありんすな」
「えへへ。ありがとーっ」
「いや本当に、良いすじをしているでありんす!」
ハイナがしきりにネージュを褒めていた。
ちなみにハイナの言う『すじ』とは、あくまでもネージュの歌の才能のことなので、誤解なきよう。
ネージュの歌声に惹かれて、いっしょに歌い出す者もあらわれた。会場のボルテージが上がっていく。
――世界コイルが、もぞもぞと動き始める。
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