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テロリストブレイク ~潜入の巻き~

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テロリストブレイク ~潜入の巻き~

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8.引き分けを一口ください


 三日後。

 葦原明倫館総奉行、ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)の前には、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の姿も、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の姿も無かった。
 代わり、と言うべきなのだろうか、ハイナの前には高崎 朋美(たかさき・ともみ)高崎 トメ(たかさき・とめ)高崎 シメ(たかさき・しめ)ルカルカ・ルー(るかるか・るー)朝霧 垂(あさぎり・しづり)らの姿があった。
「奉仕活動終了の報告になります」
 朋美が代表して、報告を行う。
 今回のテロ事件が武力によって片付いたあと、捕縛されたテロリストに刑罰として社会奉仕活動が課せられた。結構な人数がいたので牢屋が勿体無かったのと、汚れた下着を蓄積してばら撒こうとしたという罪に真面目に対応するのが嫌だったのもある。
「全部綺麗に洗濯させて、もちろん清掃活動もさせましたわ」
 奉仕活動の中心は町の美化作業だ。三人は何故か現地のテロリストを改心させて引き連れていたので、監督の白羽の矢が立った。
 奉仕活動に参加していたテロリストからも評判は良かったようだ。
「うむ。二度とこんな馬鹿げた真似をせんよう、しっかり言いつけたでありんすね」
「ええ、もちろんどすぇ」
 かくして、テロリスト達は再び野に放たれた。これから真っ当に生きていくのか、再び狂気に走るのかは誰にもわからない。
「次はこっちだね」
 ルカルカのした報告は、事件の後処理の報告だった。
 ミサイルの入手方法であったりとか、古城で発生した小火騒ぎだとか、残った汚物と反抗的なテロリストを利用した怪物再生産実験(これは不毛に終わった)だとか、そういった諸々の報告が行われた。
 ちなみに、下着の塊で構成された怪物は、取り込まれていたポータカラ人のナノマシンの影響によるものであるという形で結論になったが、一部の作戦参加者からは否定されており原因は謎のままである。
 今回のテロにおける中心人物であるリーダーを含む数名は、ちゃんと法で裁かれるために準備が進んでおり、これにはトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)らが主に担当している。とはいえ、既にリーダーの心は根元付近からへし折られているので、淡々とした聴取は滞りなく進んでいるようだが。
「あと、テロリストに協力していた愉快犯には全員逃げ切られちゃったみたい」
 一名、燃え尽きた怪物の中からイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)だけ確保されたが、それ以外には上手に逃げられてしまった。とはいえ、この協力者、恐らくコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)によって想定された被害が大きく軽減された可能性があったりするので、指名手配までして追いかけたりするかはハイナの気分次第といったところか。
「馬鹿どものしでかした事の後始末、ご苦労であった」
 もうあんまり関わりたくなくても、後始末をしなければいけないのが立場のある人間の辛いところだ。とりあえずこれで、気分を害する連中について考える時間を作る必要は無くなったわけだ。
「それで、そっちはどうなったでありんすか?」
 最後に、ハイナは垂に尋ねた。



 通称、種馬屋敷―――跡地。
 巨大な金属の塊と、それに搭載されていた男物の使い古された下着によって、もはや地獄絵図と化した場所には、KEEPOUTのテープがひかれ、その中への立ち入りはできない。
「押さないでくださーい。受付はあちらでーす」
 走り回るのはメイド達、お弁当を売ったり、飲み物を売ったりしてあくせくと働いている。
「現在のオッズは、吹雪さんが優勢でーす」
 そして行われるトトカルチョ、これもメイド達が販売、管理している。
 テープによって阻まれた跡地の中央では、二人のつわものが骨肉の争いを続けている。
 怒号をあげ、殴り、蹴り、吹っ飛び、立ち上がる。
 当初は、互いに技を尽くしたものであったが、精神力が枯渇し、小手先の技術を駆使する余裕はこの三日目には残っていないようで非情に原始的かつ単調な殴り合いになっていた。
 体力も互いにもはや残ってはいないだろうが、それでも立ち上がるのは執念か、怨嗟か、あるいは単なる意地かもしれないが、どちらにせよ何時決着が付いてもおかしくないと言われて三日目に突入してしまっている。



「凄い儲かってるな……」
 ハイナに対して、垂はそう返答した。若干申し訳なさそうである。
 現地で行われている物販とトトカルチョは、
「わっちの人選のせいで申し訳ないことをした。せめて屋敷を再建の手助けぐらいはせんとな」
 とハイナが申し訳なさそうにしていたので、既に見物客が集まっていた二人の戦いで再建資金を調達できないかとやってみたら、想像以上に大変な事になっているというのが経緯である。
 現地に居るメイド達は、汚れた下着の清掃活動のために垂が派遣したものだが、戦いが激しすぎて仕事できなかったので浮いた人員の有効活用である。
「屋敷の再建に必要な分を超えたのはどうすりゃいいかな……」



 パンツと屋敷とミサイルの残骸の上、二人の漢はのっそりと立ち上がる。
「そろそろ……終わりにしてくれませんかね……ちゃんと謝ってくれたら、許さなくも無いですよ」
「既に敗北しているのはどちらか……それを認めずに……情けないであります!」
 両者の心は折れるには遠く、時間はまだまだかかりそうである。


担当マスターより

▼担当マスター

蒼フロ運営チーム

▼マスターコメント

 ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
 なんだかとっても久々な気がする野田内です。

 パンツはともかくとして、「男物の下着」という単語をこれでもかと使った気がします。
 今年最も男物の下着という単語が使ったとして、ギネスに乗りませんかね?

 馬鹿なことはこのぐらいにしておいて、改めてご参加していただいた皆様ありがとうございました。
 そろそろ衣替えも本格的な時期ですし、着物はちゃんと洗濯してしっかりと収納しておきましょうね。
 動いたりはしないと思いますが、動かない保証もありませんし綺麗にしておいて悪い事はないです、たぶん。
 それでは、ご縁がありましたらまた何処かでお会いしましょう。
 ではでは