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爆弾魔と博士と恐怖のゲーム

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第3章 信頼と仲間

「ふっ、暗闇が私を包み込む。漆黒の征服者にふさわしい姿だな助手よ」
「……何を言ってるのかよく分かりません」
「助手よ今こそ隠された機能、エルモード発動するのだ!」
「……はあ?」
「ライト機能だ! ライト機能」
「……そんな機能は装着されていません」
「ぐぬ、使えない助手だ」
「……それを作ったのは貴方です、ペーパ・ドク博士」
 助手はため息をつく。そもそもロボってであるAI01にため息なんてつける必要は無い。
 だが、どうしてかそれが出来るのは、ペーパーの発明の賜物だろう。
 野望のためなら命令をただ聞く、戦闘に特化したものを作れば良いのにペーパーはそれをしない。
 助手は、そんな的外れなペーパーが嫌いではなかった。

「あ、ペーパ博士」
 暗い路地を通っていると、突然声を掛けられる。
 ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が、ペーパへと駆け寄ってくる。
「ほう、今日はやたら声を掛けられるものだな、助手」
「ええ、モテモテですね博士」
 実は、助手とテレパシーで連絡をとり、ペーパの場所へと駆けつけたノーンだが
助手曰く「それは言わないでください」らしかったので、黙り本題話すことにする。
「ペーパ博士、空京のみんなを助けるのに力を貸してくれたら嬉し――」
「断る」
 ノーンが言い切る前にペーパーは言葉を断ち切った。
 むぅと頬を膨らますノーン。
 助手は肩をすくめ、助言することにする。
「博士、ノーンさんは博士の発明品が素晴らしいと褒めておりました」
「なっ……んだとぉ!! 本当か」
「えっ、あ、う、うんっ! 凄いよね!」
 助手にテレパシーで話を合わせるように言われ、ノーンは慌てて相槌を打つ。
 ペーパはしかたないなぁとまんざらでもない様子だった。
「で、何をしたいのだ、ノーンとやらよ」
「歌をみんなに届けたいな〜」
「ふっ、容易い願いだ。おい助手、プランXZAに以降するぞ!!」
「……相変わらずわかりません」

 ペーパはにやりと笑みを浮かべたまま暗闇の町を歩き続けた。
 ノーンと助手もそれに続く。

 その時だった、突然声が空から響き渡った。
「おやおや、テレビ局に向かうのかな、ペーパ博士」
「その声は夕か。ふっ、よほど困るようだな?」
「もちろんだよ。あんたのせいでせっかくのゲームを壊されるわけには行かないんだ……だから」
 突然大きな轟音と共に、名状しがたい者達が空の裂け目から現れていく。
 そして、地面からも20、30と次々に名状しがたい者達が現れてくる。
「さあ、ここから中ボス戦だよ。果たして突破できるかな」
 笑い声を上げる夕の声は次第に小さくなっていく。

「……敵の勢力を確認、数100超えています」
「夕の奴、リソースを全部こっちに割いてきたか……作戦変更! ガンガン行け!」
「珍しく普通の作戦ですが、おそらくそれは無理です。私の演算によると間に合いません」
「うーん、でも戦うしかない……よね?」
 ペーパ達は周りの敵に圧倒されていた。
 時間にあまり余裕はなかった。周辺には住民達が居る。
 いくら、名状しがたい者達が全てペーパの所へ集まっていようとも、恐怖心が100%になるのは時間の問題だろう。
 そもそも、ペーパ達が絶望しない可能性だって無いとは言えない。

「まかせろであります!」
 突然、ペーパ達の目の前で、”破壊工作”による大きな爆発が巻き起こった。
 名状しがたい者達は、爆風であちらこちらへと散らばる。
 その爆発により、ど真ん中にぽつんと段ボールが照らされる。
 そして段ボールは大きく飛び跳ね、中から葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が現れる。
「戦友のピンチを助けにきたであ――」
 刹那、とてつもない大きな”滅技・龍気砲”が吹雪の横をかすめる。
 思わず直撃するところだった”滅技・龍気砲”に吹雪は口を開けたまま立ち止まった。

「こいつらを倒さないと、夕の所にたどりつかないんだよね!」
 後ろから現れたのは小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)だった。
 思わぬ手助けに、ペーパは目を丸くして驚く。だが、すぐににやりと笑みを浮かべた。

「おい、助手! この戦力ならどうなんだ?」
「計算中……問題ありません。夕のアジトまでたどり着けます」
「なら決まりだ!! 行くぞ、お前達!!」
「なんか、あまり気が進まないけど、手伝うよ」
 コハクは複雑な表情を浮かべながらも、”日輪の槍”を存分に古い目の前を塞ぐ名状しがたい者を切り裂く。

「私達が前を切り裂くから、みんなは周りをおねがい!」
 美羽はそう言うと、ペーパ達の前に立ち、”幸せの歌”を歌いながら滅技・龍気砲を振るう。
 歌は レゾナント・アームズ”と共鳴し、巨大な滅技・龍気砲を放つ。
 普通の人間が喰らえば跡形もなくなるのではないだろうか、というほどの大きな滅技・龍気砲だった。
 
「これの出番でありますな」
「まっ、それは私の発明品!!!」
 吹雪がどこからか取り出す円い物体にペーパは、怒りの篭もった声をあげる。
 それは以前、ペーパの家に侵入した際に盗んだ物だった。
「ぽちっとな」
 吹雪はペーパの声を無視し、円い物体に付いているボタンを♂。
 たちまち、ペーパ達の周りにハート型のバリアができあがる。

「バリア……って、どうしてハート型なの?」
 美羽の疑問の声にペーパは「ふんっ」とそっぽを向く。
 それを代わりに答えたのは助手だった。
「『ハート型のものだったら女の子に好かれる』っていう、下心丸出しの理由です。しかも、最初はシャボン玉製造器を目指して開発されてた発明品です」
「それって、思いっきり失敗作だよね?」
「え、ええいっ! うるさい! バリアもあるんださっさと行くぞ!」
 ペーパはさっさと前に歩き出した。

   §

 平助達はすでに夕のアジトへとたどり着いていた。
「ここだな……」
「テレビ局?」
「ああ、昔佐々木とここに来たことがある」
 古びたテレビ局を見上げる平助に、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)も同じように見上げる。 
 それは移転に伴い、廃墟となったテレビ局だった。

「怖い?」
「はっ、怖くない。と、言いたいところだが、混乱はしてるな」
 神妙な表情をしている平助にルカルカは声を掛ける。
「本当に一番怖いのは、生きてる人間なんだから! ああ、そうだ、泡銭さん怖かったらカルキが抱えて連れてったげるけどどうする?」
「馬鹿にしてるのか、俺だって刑事だ。このくらい何ともない!」
「その意気よ、さあ! 立ちふさがる物はすべて撃破するわよ!!」
 ルカルカは潔く扉のノブへと手を掛ける。
 だがルカルカの手をダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は止める。
 ダリルは”機晶技術”でドアに罠のようなものが仕掛けられていることに気がつく。
「開ければ、警報器が鳴るようになってるのか……」
 ダリルは手際よくそれを解除するとドアを開ける。
 ルカルカと平助は頷き合い、一斉にビルの中に入る。
 その間にダリルは自らの体を”電子変化”させ、電気信号へと変換させビル内へと侵入する。

「そうだ、これを使おう」
 夏侯 淵(かこう・えん)は持っていた”メス”で、自分の髪の毛を少し切ると、それを”魔精大殺刀『宿儺』”に当てると
瞬く間に髪の毛はなくなってしまう。
 何をするのかと、ルカルカ達は淵に注目する。
 突然、「私を使ってくれるの?」と、女性の喜ぶ声が魔精大殺刀『宿儺』から鳴り響く。
「んむ、頼んだぞ」
「わっ、剣が喋ってる、すごーい!」
 ルカルカが近寄り、淵の魔精大殺刀『宿儺』をのぞき込む。
 だが、魔精大殺刀『宿儺』は不機嫌そうに「なによ」とルカルカへ敵意を向けた。
「これ宿儺、皆とも仲良くせぬか」
 魔精大殺刀『宿儺』はぺっぺっ、と何かをはき出す音を響かせる。
 ルカルカはすこしむすっとした顔でを魔精大殺刀『宿儺』睨んだ。

「喋る剣か、まあ、俺はおどろかねぇがな」
「声が震えてるし、説得力がないわよ」
「おい、お出迎えだぜ」
 平助とルカルカ達の前を歩いていたカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が声をあげる。
 ルカルカ達が前をのぞき込む。そこには、名状しがたい者が待っていた。
 カルキノスは名状しがたい者に向け、”魔竜の輝眼”で睨み付ける。

「一瞬で決めるのだ!!」
 淵は魔精大殺刀『宿儺』と呼吸を整えるようにして、魔精大殺刀『宿儺』を振るう。
 覚醒した魔精大殺刀『宿儺』の力は強力だった。あっという間に名状しがたい者は真っ二つに切り裂かれ闇へと消える。
 これなら、この先苦戦することもなく進むことができそうだった。

「行くわよっ!!」
 ルカルカ達は一斉に階段を駆け上がる。