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女王危篤──シャンバラの決断

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女王危篤──シャンバラの決断
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リフル

「どこ行っちゃったのかな……」
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)は心配そうな表情で、テントの間を歩いていく。
 親友のリフル・シルヴェリア(りふる・しるう゛ぇりあ)を探しているのだ。ティセラ達の所にはいなかったし、ベッドにも食堂にも姿がない。すでに周囲は暗く、キャンプの外に行くとは思えない。
 やがてキャンプの外れにまで行って、沙幸はようやく見慣れた後姿を見つけた。
 リフルは月に照らされた大荒野を、じっと見つめているようだ。その方向は北東。遥か遠くに、エリュシオンの帝都ユグドラシルがある方角だ。
 リフルはうつむき、首のチョーカーにそっと指を添える。
(アムリアナ様……)
 突然、ふわりと彼女の背に毛布がかけらえた。
「沙幸……?」
 振り返った先で、沙幸が優しくほほ笑みかける。
「やっぱり、女王様の事が心配なんだね。
 でも、もう寒いから……風邪声でメッセージを送ったら、きっと女王様も心配するよ」「メッセージ?」
 沙幸はリフルに、アムリアナ女王へのメッセージが女王の力となる、という事を説明する。
「だ・か・ら! リフルが女王様にできる事、あるよ! 女王様を元気付けるためのメッセージを送ってみよう? ……?」
 リフルが沙幸に抱きついた。彼女の顔は見えなかったが、肩が小さく震えている。沙幸は優しくリフルの背をなでた。ずっと押さえ込んでいた不安が、あふれ出してしまったのだろう。

 リフルが落ち着くと、二人は暖かい場所に移動する。
 沙幸が彼女のメッセージ収録の為に、携帯電話のボイスレコーダー機能を確認した。その間にリフルは、ちーんと鼻をかんでいる。
 収録が始まると、リフルはボイスレコーダーに、アムリアナ女王への想いを切々と吹き込んだ。
 それに加え……
「リフル、何してるの?」
 厨房に移動して、大ナベで湯を沸かし始めたリフルに沙幸が聞く。
「お見舞いの品……」
「でも、お見舞いにラーメンを作っても、女王様の手元につく頃には、ものすごくのびちゃってない?」
 のびるどころではないが。
「…………」
 そこでリフルは、カップラーメンを取り出した。限定品のプレミアカップラーメンだ。
「OK! じゃあリフルのメッセージとカップラーメンは、私が責任を持って使節団の人に渡してくるよ!」
 沙幸は力強く言って、リフルからプレミアラーメンを預かった。