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女王危篤──シャンバラの決断

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女王危篤──シャンバラの決断
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ユーフォリア

 かつてアムリアナ女王の影武者を務めたユーフォリア・ロスヴァイセのもとを、土方 伊織(ひじかた・いおり)とそのパートナーたちが訪ねた。
「はわわ、ユーフォリアさん、すっごく大変なのです。一大事なのですよ。はうぅ」
「どうしました? そんなにあわてて」
 ユーフォリアは伊織に優しく笑いかける。アムリアナ女王の影武者というのもうなずける、暖かな笑みだ。
 伊織はちょっぴり心を落ちつけて、女王の為にメッセージが必要な事を説明する。
「ユーフォリアさんは女王さまに信頼されてたからこそ、女王器を託されていたと思うのです。そんな人からのメッセージなら、女王様の心にも響いてくれると思うのですよ」
 伊織の助太刀にサー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)も、ユーフォリアにみずからの想いを語る。
「私にも古き戦友がいます。あの遠き日々を共に駆け抜けた戦友……あの頃の事は今でも鮮明に思い出す事が出来ます。なればこそ、あの頃共に歩みし思い出を持つ戦友の声は、他の人達の声より心に響きます。女王様も同じだと思いますわ」
 ユーフォリアは笑顔でうなずいた。
「尊敬するアムリアナ様の為です。喜んでお受けしましょう」
「わあ、それではさっそくカメラを用意するのですぅー。カメラで撮って、ビデオレターにして持っていくのですよ。本人の声で励まされる方が心に響いてくれると思うです」
 伊織は張りきってデジタルビデオカメラを準備した。
 ユーフォリアはカメラの前で、アムリアナ女王への想いを語る。
「五千年が経った今も、御身に仕える気持ちに全く変わりはありません。
 それだけに、今この時代に目覚めてから、まだ一度も御身の御姿を見る事がかなわずに、悲しい思いをしております。
 アムリアナ様には早くお元気を取り戻し、五千年後の今、幸せになっていただきたいと願っています」
 彼女のメッセージをカメラに収める伊織も、自身の想いをそこにのせる。
(女王さまにも幸せになって欲しいですから、負けないでーっ)
 偶然にも、伊織の願いはユーフォリアの願いと同じものだった。
 収録を終えると、伊織たちはユーフォリアに礼を言い、ビデオレターを使節団に届ける為にとって返す。それぞれの箒や小型飛空艇で空京を目指した。
 サティナ・ウインドリィ(さてぃな・ういんどりぃ)は、前方の大空を見つめる。
「我らの想いが幾許かでも女王に届けば、運命を変える事が出来るやもしれぬ。
 人の可能性を、今は我も信じるとしようかの」