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リアクション
1.ある日のマレーナさん
2月・某日――。
ある晴れた朝のことだった。
夜露死苦荘・管理人のマレーナ・サエフ(まれーな・さえふ)は、下宿からやや離れた荒野の絶壁の上に来ていた。
そこは緩やかな坂を上がりきったところにあり、シャンバラ荒野を一望できる。
「ここから、あなたは永遠に私達を見守り続けるのですね?
ドージェ様」
マレーナはそっと跪く。
小さな石碑には、真新しい文字が刻まれていた。
『シャンバラと共に生き、荒野に散った男。
ドージェ・カイラス、ここに眠る』
風が吹いて、少女の銀色の柔らかな髪をたなびかせる。
「私、もう荒野をさすらう事は有りません。
さる下宿の管理人になりましたの。
それから妙な縁で、妙な青年と、また御一緒させて頂くことになりましたわ……」
すうっと両眼を細める。
「後田 キヨシ(うしろだ・きよし)――」
青年の名を呟く。
ふふっと笑みを漏らした。
「いつだったか。
気まぐれに私がお守り致しました、気弱な青年ですわ。
覚えていらして? ドージェ様?」
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