リアクション
●18
一行は集団となって退避し、安全な地点まで山を下ることができた。
それまで黙々と下を向き、沈痛な表情で歩いていたある蒼空学園生に、バロウズ・セインゲールマンが駆け寄って話しかけた。
「あの……七枷陣さんですよね……? バロウズ・セインゲールマンと言います」
「なんや……? 俺、今ちょっと機嫌が悪いんや、今度にしてくれるか……?」
「知ってますよ」
「え?」
バロウズはそっと、陣のショルダーバッグを指さした。「知ってます」
「な、なんの話やろか?」それは正確にはクーラーボックスだった。陣はこの荷物を抱きかかえるようにして、唐突に明後日の方角を向いた。
「信じてくれないかもしれませんが、僕の心の中にいた『父さん』が教えてくれたんです」小声でバロウズは語った。「戦闘中に。記憶という形で……だからあれを見ても、僕、全力で戦えたんです……爆発が大きくて見えたわけじゃありません。でも、あのとき最も近くにいて、救えた可能性がある人を考えると、七枷陣さんがそうかと……あっ、変なことばかり口走ってすみません」
バロウズは深々と頭を下げて、一言だけ言い加えた。
「お願いしますね。僕にとっても大切な人なんです」
「任せとけ、超一流の機晶技師の知り合いがおるんや! ……って、ごほん」
今のは聞かんかったことにして、と言って、陣はふたたび足元に視線を移した。
そうすればなんとか、沈痛な表情のふりをすることができるから。