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【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第1回/全2回)

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【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第1回/全2回)

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「ふっふっふ〜ん、ふふっふふ〜ん」
 西カナン北部の『ポート・オブ・ルミナス』、その工房内にて朝野 未沙(あさの・みさ)はメイド服姿でレンチを握りしめていた。
 4台もの『小型飛空艇』、外には『イコン』が2機。どれも破損した機体で、修理の依頼を受けたものである。
 先の戦いで破損したものばかりだが、その傷跡はどれも大きく、戦いの激しさが見てとれる。それを『くぅ〜やりがいがあるわ〜』と喜ぶ辺りが未沙らしくもあり、また西カナンのメカニックたちに慕われる理由でもあるようだ。
「未沙ちゃん、電話だよ」
「はぁい」
 工房の電話、その受話器をメカニックの一人から受け取った。相手はこの国の女神イナンナだった。
「電話でごめんなさい、そちらに行けるのは3日後になりそうだから」
「ううん、いいのいいの、電話してくれただけでも嬉しいよ」
 飛空艇を操りながらにかけているという。彼女が誰よりも忙しいことは未沙も知っている。
「それで、伝えたいことって?」
「あぁ、そうだ。修理してて分かったんだけどね」
 未沙は受話器を持つ手を変えてから話し始めた。
 ザナドゥで破損した飛空艇や兵器の表面には僅かながらに『錆』のようなものが付着しているのが発見された。もちろん実際に錆びているわけではない、しかし出力や駆動性が弱まっていたように感じるといった声もまた多かった。となると、
「おそらくザナドゥの空気中に含まれる何かが機体表面に付着した、それが機体の動きを妨げてたんだと思う」
「それを防ぐことは?」
「コーティングを施せばイケるかな。採取した錆をいま解析してもらってるから、これが分かればって感じ」
「そう。引き続き、頼むわね」
「まっかせてよ。整備・修理・改造はあたしの得意分野なんだから」
 声だけではあったが、2人で楽しく笑いあった。「それじゃあ、また」と言って切ろうとしたイナンナに「あ、待って!」と未沙が叫んだ。
「2つだけ」
「2つ?」
「ザナドゥに関するのデータが欲しいの。今回の錆の件もそうだし、ルミナスヴァルキリーとかエリシュ・エヌマとかをザナドゥで活動できるようにもしたい。ギルガメッシュだって、ちゃんと修理した上で、向こうでも活躍できるようにしてあげたいし」
「ありがとう。データは集めてる最中だけど、新しい事が分かったら報告するわ」
 2つ目は? と訊くイナンナに、未沙は小さく間を取ってから言った。
「無理をしないこと」
「え?」
「2つ目は『あんまり無理はしないこと』だよ。しっかり寝て、しっかり食べる、これ基本だからね」
 受話器のそこから「ありがとう」という声が聞こえた。
 離れているから電波を介した。それはとても温かい声と想いのやりとりだった。