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リアクション
2.
「メリークリスマス!ようこそ薔薇の学舎へ」
サンタ姿の緋布斗が、はきはきと来客を出迎えた。狼姿でサンタ帽子をかぶった白銀 昶(しろがね・あきら)も、自慢の尻尾をゆらしてお出迎えである。
薄暗くなりつつある喫茶室のテラスは、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が飾り付けたイルミネーションの淡い光が輝いている。
「レモさん、お久しぶりです」
「未憂さん、リンさん! それに、プリムさんも! ……来てくださって、ありがとうございます」
「こちらこそ、お招きありがとうございます」
以前の旅行で世話になった関谷 未憂(せきや・みゆう)、リン・リーファ(りん・りーふぁ)、プリム・フラアリー(ぷりむ・ふらありー)の三人を出迎えて、レモは嬉しそうだ。
「レモっち、メリークリスマス! 今年のクリスマスはよいクリスマスだねー」
元気に挨拶するリンの後ろで、プリムがレモに微笑みかけてぺこりと会釈をした。
「楽しんでいってくださいね」
「……ん? あれ、ねぇ。レモっち、もしかして背伸びた?」
怪訝そうにリンは前屈みになり、レモの視線の高さを確かめている。夏にはもっと差があったはずなのだが、かなり縮んでいるようだ。
「え、そうですか? そういえば、最近ちょっと制服きついかも……」
毎日一緒に過ごしている薔薇の学舎の生徒にはわからないかもしれないが、たしかにレモは少し大きくなっているようだ。
「まだまだきっと伸びますよ。そうそう、レモさん、プレゼント交換とは別に、今日のお礼に……私とリンとプリムからです」
さっそく未憂が差し出したのは、可愛らしい花や蝶の形の角砂糖が詰まったプレゼントだった。
「わぁ、いいんですか?」
「特別な日の一杯や、おもてなしに添えると素敵だと思います」
驚くレモに、にっこりと未憂は微笑む。
「じゃあ……さっそく、使わせてもらってもいいですか?」
「もちろんだよー」
「ありがとうございます」
「では、お嬢様方、どうぞこちらのお席へ」
サンタコスチュームの清泉 北都(いずみ・ほくと)が、丁寧な物腰で未憂たちを席へと案内する。
「ケーキは三種類。クリスマスサンドイッチもご用意があります」
「美味しそう!」
さっそく、コーヒーや紅茶の良い香りも漂いはじめる。
「メリークリスマス!」
サンタ姿の多い中、やや目立つ茶色のトナカイ風姿の鬼院 尋人(きいん・ひろと)も、そう笑顔で未憂たちに挨拶をする。
「尋人さん、よくお似合いですね」
「トナカイっぽく見えるかな? ……無理か」
「だいじょーぶだいーじょーぶ!」
リンが笑って太鼓判を押し、プリムも小さく頷いている。
トナカイフードの頭とフェンリルハインドの茶色の毛皮をなんとか加工して作ったものだが、それらしくはなっている。首には、黒崎 天音(くろさき・あまね)にもらったマフラーを巻いていた。
「メリークリスマス」
そのことに気づいたのだろう。やってきた天音は、やや頬を緩めて尋人に挨拶をする。
「黒崎、来てくれたのか」
「せっかくの機会だからね」
「ふむ。何となくうきうきするな」
そういうブルーズも尋人と同じのクリスマスフード姿だ。予想外のおそろい帽子に、天音はまた微笑んだ。その髪に、淡い綺麗な緑がかった石の髪留めが密やかに光っているのを見つけ、尋人もまた口元をほころばせた。
「楽しんでいってくれよ」
席へと案内して、注文を受けてから、ふと尋人は視線にレモをとらえた。今は、リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)となにやら楽しげに挨拶をしている。
……{SNM9998793#ウゲン・タシガン}のことについて、レモは何も言わない。知っているのかどうかすら、彼は口にしていない。尋人としては、今回のパーティには、ウゲンも呼びたかった。二人で直接話すことができれば、また関係も変わるのではないかと思うのだが……。
「焦ることはないよな」
そう、ひとりごちて、尋人もまた友人のララ・サーズデイ(らら・さーずでい)へと挨拶にむかったのだった。
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