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リアクション
デヘペロの決意 1
「あれがいわゆる『ゆる族型起動歩兵』ですか。
が、ワタシの作った年末料理の香りに勝てるかなぁ」
佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は、
そう言いつつ、鳥の丸焼きを作り始めた。
「ナノダートリノマルヤキ!?」
「おいおい、何やってるんだこんな時に」
佐々木 八雲(ささき・やくも)も、
パートナーの行動にぽかんとするが。
「あ、超有名銘柄の日本酒もあるよぉ。
だから、そんな武装を解いて、一緒に忘年会しませんかぁ」
弥十郎が笑顔でポムクルさんたちに呼びかける。
日本酒を見て、八雲も、弥十郎の隣に座る。
「せっかくだ、酒盛りといこう。
つまみは鳥しかないのか」
「かんづめなら……これとか」
弥十郎の手にしているのは「変熊のかんづめ」であった。
「いや、お前の料理がいい」
「うーん、材料があればいろいろ作れるんだけどね」
「なら、このキノコでどうだ?」
八雲はおいしいキノコを取り出した。
「よし、じゃあ、キノコのあぶり焼きと、
鳥もむしって、キノコと和え物を作ろう」
弥十郎が手早く料理を始める。
「ナノダージュルリ……」
「折角だからお前らも。
そんなとこで見てないで来いよ。
というかお前らからもなんかだせよ。
何でもつくれるんだろう?」
八雲はポムクルさんを煽る。
「ナノダーリョウリタイケツナノダー!」
ポムクルさんは料理の手伝いが大好きである。
まんまと作戦にはまり、ゆる族型起動歩兵を飛び出して、
ポムクルさんたちが集まってきた。
「さぁ、デヘペロ。
ワタシたちが引き付けている間に最深部を目指すんだ。
無事返ってきたら、美味しいシーザーサラダ一緒に食べよう」
「ペロオオオオオ。
なんていいやつなんだ、これがパートナーの絆ってやつだぜえええええ。
お前らには感謝してもしたりねえ、必ず、目的を遂げて見せるぜええええ」
デヘペロが、通路を突っ切っていく。
「ちゃんと戻ってくるんだよー」
弥十郎がデヘペロの巨大な背中を見送る。
「わたくしたちも忘年会したいけど、
ここはデヘペロさんを助けるのが先です!」
マリー・ランチェスター(まりー・らんちぇすたー)が、
決意の瞳で宣言する。
「デヘペロさんの決意の声、確かに聞かせてもらいました。
パートナーロストの危険性?
そんなこと、デヘペロさんが考えていないはずがありません。
それでもパートナーの故郷を救いたいという
『絆』ゆえの行動、これは応援するしかありません」
「ペロオオオオオオオオオオ、
お前らにも感謝するぜええええ」
「マリちゃんはそう言ってるけど、
うーん、悪魔にはパートナーロストの危険性がないのかもねっ♪
だって悪魔だから」
ローリー・スポルティーフ(ろーりー・すぽるてぃーふ)も、
パートナー同様、デヘペロの言動に対し、勘違いして協力していた。
「デヘペロは悪魔だからそういうのはよくわかんない。
だけど、絆の力は本物だぜえペロオオ」
そこに、他の契約者たちが立ちふさがる。
「デヘペロ、倒させてもらうわ。
この年末年始の忙しいときに、本気で面倒くさいから」
クコ・赤嶺(くこ・あかみね)は、
デヘペロに怒っていた。
「家では子どもたちが待ってるのよ!」
「ペロオオオオオオオオオオオ!?」
「パートナーロストは本当に危険なんですよ。
って、このままだとクコに倒されてしまいそうですが」
赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)は、
観念して武器を構える。
「ペロペロオオオ、デヘペロはそういうの関係ないぜええ」
「やっぱり聞いてくれそうもないですね。
……行きます」
霜月が、クコと連携して攻撃を仕掛ける。
「ポムクルさんはかわいいから攻撃するの気が引けたけど、
デヘペロは別よ。
かわいくないから!」
クコは、一応、ゆる族型起動歩兵には手加減していたのだが、
デヘペロには全力で攻撃する。
「たしかにこれは力づくで
言うことを聞かせたほうがいいかもしれませんね」
鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)も、
デヘペロをギフト【覇龍刀】で攻撃する。
「おとうさん、がんばって。
でへぺろさんいないほうがくろうしなさそう?」
パートナーのギフト、鬼龍 愛(きりゅう・あい)は、
貴仁に自分の力をゆだねる。
「最深部まで待ちたかったですが、
しかたありません。
デヘペロさんを止めないといけませんし。
パートナーロストしたら
後輩さんが可哀想すぎますからねー……」
貴仁が、デヘペロに連撃を加える。
「ペロオオオオオオオッ!?」
もちろん、このくらいの攻撃では、
デヘペロは死なないと考えての行動だが。
「待って!
デヘペロさんの気持ちをわかってあげてください!
デヘペロさん、このマリーを盾にして、先に進んでください!」
「マリちゃんがそう言ってるし、
ロリちゃんも難しいことわかんないけど協力するねー」
マリーとローリーがデヘペロの前に出る。
そこに、ゆる族型起動歩兵の増援が現れる。
「ナノダーコロスー」
ゆる族型起動歩兵はバズーカで攻撃してきた。
「きゃあああああああああああっ!」
ローリーのスカートが爆風でめくれあがる。
「ロリちゃんも、全年齢向けエッチキャラとしての使命を果たすべく、
最後まで健全なえっちで活躍するよ!
さあ、みんな、ロリちゃんにちゅうもーく!」
「ペロオオオオオ、パンチラでの支援、感謝だぜええええええ」
「あっ、こら、デヘペロ!?」
「デヘペロさん、後は頼みましたよ……ぐふっ」
妨害するマリーはクコに倒されていたが、
ローリーのパンチラや、ゆる族型起動歩兵の攻撃の隙に、
デヘペロが突破してしまった。
「って、このままじゃ後輩さんが危険ですって。
待ってください、デヘペロさん!」
「でへぺろさん、おとうさんのいうこときいてー」
貴仁と愛に呼び止められるも、
デヘペロはぐんぐん進んでいく。
「デヘペロは絆の元、地球を守るぜえええええ」
「くっ、ゆる族型起動歩兵も数が多いですね。
こんな時に」
霜月も、ゆる族型起動歩兵を倒していくが、
その数により、足止めされていた。
かくして、デヘペロは、
単身で、イーダフェルト2号の最深部に向かって走って行ってしまったのだった。