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リアクション
【2】一撃
五人と業魔の距離が縮まっていく。だが、まだ遠い。
まだ。
まだ。
少し。
あと少し。
ほんの少し。
―――――今。
「動き、奪わせてもらうぞ!」
業魔の攻撃が開始されるかされないかのギリギリの間合いから星辰刀の力を使い結界を発動させるセリス。
「ぬおっ!? まだ、もって、やがった、かっ……!?」
どうやら、【抜身】でもこの力ばかりは斬れぬようだ。
ハイナが誰よりも早く動く。
「とりあえず、邪魔な刀は捕らえるとしようかの!」
自動防御を無力化させるため、ハイナはわざと愛刀の先端を蛇刀の前にちらつかせる。案の定、蛇刀が喰らいつく。
「助かる。……刀での戦闘が分が悪いのは重々承知。それでも生き方は曲げられない。刀を振るい、戦うこの生き方だけは、曲げられん!」
刀に強力な魔法をのせて業魔へと放つセリス。しかし運悪く、片方の抜身の切っ先がセリスに向いていた。
“良すぎる斬れ味”は刀にのせた魔法の一部までもを切り裂く。
「押し斬るッ!」
だがそれでも斬撃を止めることなく、業魔に鋭い一太刀を浴びせるセリス。
「我が必殺の、己酔百獣拳を喰らうがいい……!」
更に己に酔い更なる力を増したマネキから、獣たちの力を借りた拳が荒れ狂い放たれる。
「ぐおっ!」
業魔が呻く。
「剣技の後は、拳技を味わうがいい!」
「わっちの体術もとくとご覧あれ!」
拳を固めた正子の一撃は業魔の外部を強打し、手のひらを広げたハイナの掌底は業魔の内部に重くのしかかる。
「おおうっ!?」
業魔が驚く。
「……葦原明倫館陰陽科、紫月唯斗、いざ参る!」
続けざまに霊気剣、インペリアルイディクトを発現させ業魔に攻撃をする唯斗。
「させる、かあ!」
しかし、結界の力が弱まっているのか、業魔の小太刀が二つの攻撃を斬り払う。
それでも唯斗は止まらず、覚醒させた光条兵器を業魔へと思い切り放つ。
「この攻撃だけは、届かせる!!」
「があぁっっ!!」
業魔に迫るは特大の三連撃。
どうにか腕を動かし一撃目を右の抜身、二撃目を左の抜身で受けて斬り払う業魔。
だが残りの一撃は遠い。受けるために腕を無理に動かしても、遠すぎる。
必然、最後の一撃だけは当たる。そう確信した唯斗が、腹の底から叫ぶ。
「当たれぇぇー!!」
最後の一撃。その一撃だけは。
「ガア、アアアアア、ゴフっ!?」
業魔に、届く。さすがの業魔も直撃を受けて、苦しむように咆哮した――――――。