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リアクション
【2】新刀
――――――――ッッ!!
形容しがたい音が辺り一面に響く。
「むぅ、ちょっと元気良すぎ! それなら、こうだ!」
「ああん? ……ガアッ!? こ、の力は!?」
ベリアルが星辰の鎌を使い、結界を発動させ業魔の動きを止める。さすがの業魔も星辰の力には抗えないのか、身動き一つ取れないでいる。
「これでも、喰らえー!」
ベリアルが闇黒死球を発動させる。球状の巨大な魔力の塊がゆっくりと、業魔を引き付けながら向かっていく。
その速度は非常にゆっくりとしたもの。攻撃が届く前に、業魔が解き放たれる。が、魔力の塊は業魔の目前まで寄っていた。
……にも関わらず、業魔はうろたえない。
「ああ、わりぃな。すっげぇんだけどよ、効かねぇんだわ」
業魔がそういった途端、球体は真っ二つに切り裂かれ、力の形成がうまくいかなくなり、霧散する。
「うそー!? あうっ!」
「……ヤロウ、益々おもしれぇじゃねぇか!! ぐぅ!?」
「お前らも最高だったぜ? 血肉沸き踊る最高の闘争だ」
力を使い疲弊した二人の腹に拳を叩きつけ、両者を後退させる業魔。
強化に強化を施したベリアルの魔力の塊を両断したもの。
それはあの小太刀だった。
「……抜身ってんだ。こいつはどうにも斬れ味が良すぎて、何でも斬っちまって楽しくねぇ。魔法とかはこいつでぶった斬るがな」
【抜身】。蛇刀のようにオートメーションでもなく特殊な能力ももたない、“斬れ味が良すぎる小太刀”。
だが、シンプルな分厄介。下手な能力よりはよっぽど凶悪だ。
「は、反則だー!」
誰もがしたいツッコミを布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)が代弁してくれる。
佳奈子の叫びを聞いたエレノア・グランクルス(えれのあ・ぐらんくるす)慌てて近寄ってくる。
「ちょっと、そんなことで相手の気を逆なででもしたらどうするの!」
「で、でもでもあの武器すごすぎじゃない。ねえ、ポムクルさんもそう思うよね?」
「ずるいのだー」
「よこすのだーそいつ使っていい武器作るのだー」
戦闘に参加していたポムクルさんたちが好き放題言っている。
本来は対業魔のために来ていたのだが、業魔と契約者たちの戦いに割って入れず亡者の相手をしていた。
「ハーッハッハ! 面白れぇことを言う。だがこんなもん持ってても楽しくねぇぞ。やろうとすりゃ否応なく勝っちまうんだからな」
豪快に笑い飛ばす業魔。
「むぅ、でもマムだって負けないもん! ねえマム!」
「ええ、我が学園の校長を甘く見ないことよ。馬場校長、これを」
正子に対してパワーブレスをかけるエレノア。それを受けた正子は拳を握り締める。
「すまぬ。この力、有効に使わせてもらう」
「フレーフレーマ・ア・ム!」
「フレーなのだー」
佳奈子とポムクルさんはすっかり応援モードに入っていた。
「業魔よ。その強さ、比類なく感嘆に値する。わし一人では敵わぬと見る。が、わしもお前も戦える。なれば打ち合うのみよ」
両拳をゴツンと合わせ臨戦態勢に入る正子。
「わっちも侍、その刀、打ち破ってみたいでありんすよ!」
ハイナも臆することなく、どころか瞳を輝かせて攻撃態勢に入る。
「待て待て、あんたら一応学校を代表する二人だろう。そこら辺、配慮したらどうだ?」
いつの間にか背後にいた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)がそう告げる。
他にもエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)、マネキ・ング(まねき・んぐ)の姿があった。
「生徒が戦っておるのに、校長が逃げるわけにもいくまい」
「そうでありんすよ」
何言ってるんだお前はと言わんばかりに唯斗に突っ返す二人。これには唯斗もセリスも苦笑してしまう。
「いやまあ、そんなことだろうと思ってたがな」
「ここまで見事に、か……思わず、笑ってしまったよ」
二人は正子とハイナを止めようと言うわけじゃない。むしろ、最初から協力するつもりでいた。
「唯斗、使うのだな?」
「ああ。頼む」
「良い。妾とて剣の花嫁、汝の武器として振るうがよい。……すまぬが、妾の身を頼んでもよいか?」
近くにいた佳奈子とエレノアに自身の身を支えるように頼むエクス。それだけ強力な力を使うようだ。二人はそれを快諾した。
「フフフ……再び出会うとは……業の深き者よ、業魔だけにな」
「……邪魔だけはしてくれるなよ? ……通常の斬撃はあの蛇刀に止められ、拳打は空いている腕に止められるだろう。だからこそ、反撃できないようにしなくてならない」
セリスの言う通り。そうしなくては業魔に攻撃は届かない。
「そこで、セリスの持ってる星辰刀を使って動きを封じる。その数秒間にありったけをぶっ叩く。……それじゃ、行くぞ!」
同時に、唯斗の光条兵器が覚醒する。オーラ型の光条兵器が唯斗を包む。それをきっかけに五人が業魔に向かう。
「ハッハー! 今日は最高に、最高が重なるな!!」
開いている腕でもう一方の【抜身】を抜き、大口を開けて歓迎する業魔。
後退する気などさらさらなさそうだ。