校長室
リアクション
● シュヴェルト13は迫りくるゴーストイコンや魔物たちを撃墜していた。 パイロットはサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)だった。サブパイロットにシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が乗っている。シュヴェルト13には部下イコン二機が配備されている。機体のコントロールはサビクに任せ、シリウスはそれら二機の小部隊の指揮を務めていた。 「うおおおぉぉぉ!」 サビクが吼え、シュヴェルト13はデュランダルを振るった。 ゴーストイコンや魔物が、次々と引き裂かれていく。高出力ビームサーベルの光は、敵イコンを物ともしなかった。 シリウスに指示される部下イコンのプラヴァーたちも、サビクに続くよう、ライフルを撃ちまくった。爆発音がいくつも響く。デュランダルの光がきらめいたと思ったとき、シュヴェルト13は敵に迫っていた。 が、いずれはそのエネルギーも尽きてくるだろう。限界に近づいてきたとき、サビクはヴィサルガ・プラナヴァハを使った。 「お願い……その力を解放して!」 金属の腕輪の形をしているプラナヴァハは、サビクが願いを込めると光の粒子になって散った。 瞬間、サビクの瞳に変化が起こった。まるで全ての時間が遅くなったようだ。それに、シュヴェルト13自体のエネルギーも自然回復し、起動速度が一気に増した。 ごうっ! スピードをあげたシュヴェルト13は、ライフル、マシンガン、ビームサーベル、全ての武器を操り、次々と敵を撃破していった。その勢いは、まるで流星が駆け抜けるようだ。 「やるじゃん、サビク」 シリウスは相棒の活躍に嬉しくなりながら言った。 戦いは終わらない。まだまだ、これからだ。 ● グランツ教のなんちゃらクイーンとかいう女王は、未来から来たという話だった。 未来において世界を救ったから、信仰を集めてた。そんなところらしい。は! 嘘っぽい! 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)は心のなかで笑った。 それやったら、なんで過去にわざわざ介入してくるのか、ようわからん。それに、未来のグランツ教ってのが世界を手にした経緯が、今回みたいな脅迫まがいの方法だとしたら、それこそ胡散臭さは二倍増しだった。 ズルっ子は気に食わん。なんてったって、ぽっと出なんやから。 「アルティメットクイーン……たいそうな名前じゃのぉ」 バンデリジェーロのサブコクピットに座る讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)がつぶやいた。 メインパイロットは泰輔だ。当然、サブパイロットは顕仁になる。 「いったい誰が名づけたんかのぉ」 「さあてね。そんなん、僕らが知るこっちゃないわ」 泰輔はバンデリジェーロを動かし、敵ゴーストイコンに突っ込んだ。ソウルブレードとダブルビームサーベルが、敵を切り裂く。ずがぁんっ! と、背後で爆発が起こった。 ルドルフ校長が任せてくれたいま、僕らが頑張るしかない。泰輔はそう思っていた。 通信機を通じて、戦艦の艦橋から連絡があった。相手はランダム・ビアンコだ。敵の陣形と位置情報。それから、ネフェルティティとかいう先代女王の妹を連れ、旧王都に向かおうとしている理子たちの情報も受けとった。 「いくのかの?」 顕仁が判断をあおぐようにたずねた。 泰輔はにまっと笑ってうなずいた。 「当然や」 ● 無限 大吾(むげん・だいご)と西表 アリカ(いりおもて・ありか)は、愛用のイコンアペイリアー・ヘーリオスに乗っていた。 メインパイロットは大吾。サブパイロットにアリカだ。二機の部下イコンであるプラヴァーを連れ、アペイリアーは戦場を飛ぶ。 目的は、ゴーストイコンと魔物たちの陽動、それに攪乱だった。命令では、「突っ込んで派手に暴れろ」とある。つまり、いつも通りぶっ倒せばいいってことだな? 大吾はそう理解した。 「アリカ、準備はいいか?」 「うん、もちろんだよ!」 アリカはコクピットの操作盤をいじりながら言った。 「行くぞ!」 大吾が叫び、アペイリアーは敵の間に突撃した。 肩と脚部が開き、アヴァランチミサイルが発射された。無数のミサイルポッドは煙を吐き出しながら敵へぶつかり、爆発を起こす。ずごぉんっ! と、激しい爆風が巻き起こったところで、右手のビームアサルトライフル『エルブレイカー』と、左手のガトリングガン『ケルベロス』が放たれた。 隙を突き、プラヴァー二機も援護した。アサルトライフルの光が、アペイリアーの周囲に光線を描いた。 そして、アペイリアーは最後に大形ビームキャノンの『ノヴァブラスター』を発射した。巨大な光の光線が、一直線に魔物とゴーストイコンをのみ込んでいった。 アペイリアーの周りに、ゴーストイコンの残骸が漂う。 「さぁ、来い! まだまだ……このアペイリアーが相手になるぞ!」 大吾の叫びとともに、アペイリアーは次の敵へと立ちむかった。 ● アルシェリアは戦場を駆け抜けた。 乗っているのは佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)。それにアルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)だった。メインパイロットはルーシェリア、サブパイロットがアルトリアだ。それに二機の部下イコンもついている。 アルシェリアはその高い機動力と遠距離攻撃性能を活かし、戦場のさまざまな場所におもむいていた。 「ルーシェリア殿。サポートは自分に任せてくださいね」 アルトリアが引き結んだ表情で言った。 「わかっているんですぅ。信用してるですぅ」 ルーシェリアは独特の口調で話し、アルシェリアを動かしてライフルを発射した。 ライフルに貫かれたゴーストイコンは爆発し、魔物は地上に落下していく。二機のプラヴァーもライフルを放ち、アルシェリアの部隊はさながらライフル隊だった。 イコン部隊は、決して戦力が多いわけじゃない。だから、一点でも突破されれば負ける。ルーシェリアはそう考え、一箇所に留まらず、次の場所、次の場所と、各部隊の支援に回った。 果たしてグランツ教が戴冠するのが正しいのか? いや、そんなことはきっとない。長く続いた国のトップは、だいたいは崇拝ではなく、尊敬を集めてきたものなんだから。ルーシェリアは、ネフェルティティに戴冠してもらいたかった。 「上手くいくことを、願ってるですぅ」 ルーシェリアはつぶやいて、アルシェリアが持つライフルの引き金を引いた。 ● 及川 翠(おいかわ・みどり)とミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)はイコンシルフィードに乗っていた。 ミリアがメインパイロットを務め、翠はサブパイロットだ。もっとも、翠のコクピットにボタンやスイッチはなかったが。放っておくと勝手にいろいろなものをいじくるので、ミリアが撤廃したのだった。 部下イコンの二機のプラヴァーが、後ろからついてくる。担当は狙撃。そしてサポート。先陣切って戦うシルフィードの支援を命じられていた。 ミリアは遠くにのぞむ旧王都を見つめた。どうも、かなり複雑な話になってるらしい。ミリアはどちらの味方とも言えない。ただ、百合園の生徒として、しっかり役目をこなすだけだ。もし上手くいけば、グランツ教を出し抜いて欲しいとは思うが。 「ねーねー、お姉ちゃん」 翠が通信を通じて声をかけてきた。 「ん−? なに?」 「やっぱり私の席って、スイッチ禁止なの?」 落ち込んだように翠は言った。すこし同情を覚える。 が、本当になにをしでかすかわからないのが、翠だ。ミリアは首を振った。 「悪いけど、禁止よ。こっちはいまそれどころじゃ……」 いきなり、ゴーストイコンのライフルが飛んできた。 かろうじて光を避け、ミリアはシルフィードを動かした。艦載用大型荷電粒子砲なんつー馬鹿でかい兵器を、ぶっ放す。光にのみ込まれた敵イコンは一斉に爆発した。 もちろん、その隙に射程内に入ってくる敵もいる。が、それらはプラヴァーがライフルで撃破した。 こっちにだってプライドはある。百合園生徒としても。シルフィードのパイロットとしても。 シルフィードはゴーストイコン目がけ、スーパー・オリュンポスキャノンを発射した。 |
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