リアクション
* * * 桐生 景勝(きりゅう・かげかつ)は【アスモデウス】の姿を見つけ、メアリーにテレパシーを送った。 (メアリーちゃん、やっほー。相手してくれよ) (あらあら、わたくしの「攻撃対象」にあなたは入ってませんのに……) F.R.A.G.第一特務ミス・アンブレラことメアリー・フリージアから残念そうな声が返ってくる。 (それってどういうことだ?) (本来ならば、劣勢になったときに部隊を撤退させる時間稼ぎがわたくしの役目ですの。ですが、追加で「超能力を使う黒い機体を優先的に排除」という指令が下ってしまいまして) (ウクライナでのことがあるから……ってことか) (おそらくそうでしょう。今戦っても分かりましたが、あなたのその機体以上に厄介ですわ) メアリーからすれば、第二世代機よりもヤバいということらしい。 とはいえ、景勝からすればメアリーの方が遥かにとんでもないわけだが。レイヴンと【アスモデウス】の戦いに割り込みはしたものの、その戦いは目視で追いきれるものではなかった。 (やっぱり、任務だから退けない……よな?) (ええ、今はまだ) あくまで彼女の狙いはレイヴンだ。だが学院の仲間が乗っている以上、見過ごすわけにはいかない。 彼女をここで食い止める。 「ニーバー、エナジーウィング展開」 「はい!」 リンドセイ・ニーバー(りんどせい・にーばー)がエナジーウィングを展開させ、メインスラスターを全開にする。 ビームシールドと新式ビームサーベルを構えて、メアリーに接近戦を挑む。 機動性ならこちらに分がある。また、覚醒で緩急をつければタイミングを誤魔化すことが出来る。 だが、そう簡単にはいかなかった。 【アスモデウス】は新式ビームサーベルの刃ではなく、柄と鍔の部分をレイピアの先で受け止めている。 (遅いですわ) そのままサーベルを払い、突きを繰り出してくる。それを覚醒、補助スラスターを全開にして回避。 そこからエナジーウィングの角度を調整し、機体を安定させる。 が、一瞬だけ速度を緩めた瞬間に【アスモデウス】が眼前に迫ってきた。今度は咄嗟にシールドで受け止める。 一旦距離を置く。今度は新式ビームサーベルで正眼の構えを取る。【アスモデウス】との間合いを詰めてからが勝負だ。 メインスラスターをフルにして斬りつける……と見せかけて、ワイヤーを放つ。狙いは相手の腕だ。 (そんな小細工が通用すると思いまして?) が、フェイントには引っかからない。ワイヤーが切断される。 今度こそ、サーベルによる攻撃だ。 しかし、先ほどと同じく受け流される。そのままレイピアは喉元を捉えた。人間だったら急所である。 ここでまた覚醒を使い、補助スラスターを全開にして回避。そのまま機体を回転させて、回し蹴りを食らわせようとする。 さすがにこればかりは予測してないだろう、と思いきや、右脚が綺麗に切断されていた。 メアリーは異常なまでに強い。シミュレーターで格闘特化、スピード型の指揮官機とも互角に戦えるようになっているにも関わらず、【アスモデウス】の前には成す術がない。 (メアリーちゃんってさ、もしかして心が読めたりする?) 思わずテレパシーを飛ばしてしまう。 (人の心なんて、読めませんわ。「なぜか」わたくしの直感が当たってるだけですわよ) それだけではなく、まるで人間のような精密な運動性能を持っていることから、機体にも何らかの秘密がありそうだった。 しかし、そのとき女王の加護が【アスモデウス】以上に危険な何かの存在を告げていた。 「レーダーには何の反応もありません。まさか……」 それこそ、直感だ。 すぐ近くに、あの「青」がいる。 |
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