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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―
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リアクション

「さて、果たしてこの程度なのでしょうか? シャンバラと地球の契約者達は」
 【マリーエンケーファー?】の機内で、中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は戦いを観察していた。
 海京クーデターのとき以降、漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)を纏い、中願寺 飛鳥(ちゅうがんじ・あすか)に憑依されたままである。
 この機体の正規パイロットは、元F.R.A.G.第三特務だ。なぜ綾瀬が乗れたのかといえば、ノヴァ、ローゼンクロイツと交渉した結果、特務の補佐を任されたためである。
 その際、この機体をアニメイテッドイコン化出来ないかローゼンクロイツに掛け合ったものの、それは叶わなかった。
 元々の【マリーエンケーファー】が四人乗りだった影響で、内部のスペースにはかなりの余裕がある。
 第三特務も、綾瀬と同じように「一見すれば」一人であるように見える。しかし、その姿は異様なものだ。
 顔を含めた全身を黒い包帯で包み、さらにその上に仮面、コートという出で立ちだ。フラワシなのか式神なのか、どちらとも判別し難いものにコンソール類の操作補助をさせている。
 名前に関しても、『シン』という通称であること以外は何も知らされていない。
 だが、今一番重要なのは、この後に待ち受けている最大のイベントである「ノヴァと契約者達の最終決戦」だ。
 そこまでのお膳立て、「舞台作り」が【マリーエンケーファー?】に同乗させてもらった理由である。
「少し、私に任せて頂けませんか?」
 綾瀬はシンに代わり、【マリーエンケーファー?】の火気管制を行わせてもらうよう依頼した。
 戦場に出る前から頃合を見てとのことだったため、問題なく席に着かせてもらう。
「ちょうどいい位置におりますわね」
 ミサイルを放ちながら、ちょうど無人機との戦いを行っているイコンの姿を捉えた。
 綾瀬はこの機体について、ひと通り説明を受けている。シャンバラ勢の武器はマルチエネルギーシールドの前ではほとんど無力だ。だが、破られれば形勢逆転だ。
 【マリーエンケーファー?】の装甲は脆い。この巨体を飛行可能にするのと引き換えに、機体を軽量化する必要があり、装甲を薄くしたためだ。主砲がなくなったのはその理由に加え、膨大なエネルギーが機体を浮かせるためのフローターに必要だったからである。
 無人機と戦闘を行っていたケイオスMeteorの二機がわずかに隙を見せたため、そこに向かってワイヤーを放った。
 もちろん、直後にワイヤーを斬ろうと救援がやってくる。そこにミサイルを撃ち込み、さらにビームキャノンの照準を合わせた。
 ミサイルを落とし、煙幕が上がった瞬間が狙い目だ。当たる、当たらないはさほど重要ではない。ただ、脅威を与えて油断させないようにするためだ。
 イコンを拘束したことを確認すると、綾瀬はオープン回線を繋ぎ、戦場全体に向かって語り始めた。
『よくお出でになりましたね、契約者の皆様。私は……そうですね、元F.R.A.G.第三特務補佐とでも申し上げておきましょうか』
 その間も、攻撃が止むことはない。その対処はシンが行っている。
『さて、ノヴァ様の声をお聞きになったから、皆さんはここまで来られたのでしょう。ですが、あれが真意ではなく、もしノヴァ様が他者に討たれることを望んでいましたら……貴方方は喜んでその引鉄を引きますか?』
 無論、どんな理由があるにせよ、ノヴァを止めに来たのは確実だろう。
『考えても見て下さい。「回帰の剣」という絶対的な力があるのに、なぜ、すぐにその力を振るわないのでしょうか? なぜ、抵抗勢力である皆様方をときには助け、「成長」するまで待っていたのでしょうか? 「試されている」のだとは思いませんか?』
 もしこの程度で心が揺らいでいるようなら、所詮はその程度だ。
『もしも皆様方がノヴァ様の期待に応えられるほどの成長を成し遂げていないのでしたら……ここで沈んで下さいな?』
 その直後、ワイヤーを通して電撃を浴びせた。そして続けざまに、全方位に向けてミサイルを次々と発射する。
 二機のイーグリットが制御を失って墜ちていく。これで、向こうも少しは本気を出してくるだろう。
 あのノヴァと戦おうというのだ。この程度で苦戦しているようでは、【ジズ】はおろか、生身のノヴァにすら敵うまい。
「おや、どうやらこの戦場を抜け、中枢へと向かう者達がいるようですわね。ですが、そう簡単にここを抜けれるとは思わないことですわ」
 綾瀬は、モニターに映る【ナイチンゲール】の姿をじっ、と見つめた。