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リアクション
カメラを構えつつ飛空挺を操縦する色無美影。
「あっ! 怪しい人物発見っ!」
「え、どこですか?」
「あそこっ!」
銀枝深雪に応えつつ急いでデータをモバイルパソコンに接続、フリーメールで武来弥のアドレスへ送信。
「これであたしも役に立てた」
満足げに笑って、カメラをしまう色無美影。傍らでは銀枝深雪が双眼鏡を必死で覗きこんでいた。
『緊急連絡!』
学校敷地内で調査を続ける面々に、武来弥の切迫した声が響いた。
『噂のイルミンスール生らしき人物が発見された!
学校敷地外と池の堺付近に向かってくれ』
放送を受け、ソア・ウェンボリスと緋桜ケイが顔を見合わせた。
「ソア、行こうぜ!」
「そうですね。行きましょう!」
示された場所へ、駆け出す。同じく放送を聞いた渋井誠治が顔をこわばらせる。
「安心しろ。シャロの事はオレが守ってやるからな。だって友達だもんな!」
「お願いしますぅ。でも、大丈夫ですか? 渋井様」
「な、何?」
「声が震えているようですぅ。体調でも悪いのですか?」
「大丈夫だ、多分。いや、絶対っ!」
強がる渋井誠治と首を傾げるシャーロット・マウザーを背にソア・ウェンボリスと緋桜ケイは急ぐ。
しかし目的地にたどり着く前に、二つの小さな影が横をすり抜けた。
「いーやー!!」
「くるなぁ!!」
「止まるのです!」
箒で飛ぶ二つの小さな影をナターシャ・ホフマンが走って追いかけていた。
「加勢してやろうぜ。ソアは【雷術】を!」
「はい!」
「俺は【氷術】を水たまりに……!」
ソア・ウェンボリスに続き、呪文を唱える緋桜ケイだったが……。
「水たまりがねえ! っ、仕方ない。箒に【氷術】を……」
標的を変え、【氷術】を放つ……が。
「!? 【氷術】が、消えた!」
現れた【氷術】は、瞬時に姿を消した。
「なんでだよ!?」
憤慨していると、ソア・ウェンボリスの【雷術】が炸裂。眼の前に雷が落ちたことに驚いたのか、二つの箒がよたよたと立ち往生する。
「覚悟してください!」
ナターシャ・ホフマンがカルスノウトを振り上げて飛びかかり、詰め寄る。
「ちょ、話を聞いてくれよっ!」
「問答無用です!」
「おっ、あいつが犯人か!?」
「カガチ君、待って!」
東條カガチとマリー・ストークスが駆けてきた。箒の影が揺らぐ。
「くるみ、逃げろっ!」
「で、でもぉー尚(しょう)が……」
「いいから一人で逃げろ!」
イルミンスールの制服を着た少年少女が二手に分かれた。遅れて逃げようとする少年を、ナターシャ・ホフマンがとらえる。
「邪魔するなよっ!」
立ちはだかったのは少年。呪文を唱え始めている。
「どうして蒼空学園の周りをうろつくんだ?」
「ちょっと君、話を聞かせてくれないかしら」
高月芳樹とアメリア・ストークスが問いかけたその時、少年が放った【火術】が襲う。
「! 危ない!」
近距離からの攻撃に、身をよじってなんとか避ける高月芳樹。
「攻撃するなら容赦はしませんよ」
「おまえ、後悔するぜ!」
アルフレッド・スペンサー、デズモンド・バロウズがそれぞれ武器を構え、向かっていく。間を開けず呪文を唱えている少年の正面にアルフレッド・スペンサーがホーリーメイスを持って、背後からデズモンド・バロウズがエンシャントワンドを持って迫る。
「わっ!」
ぎりぎりで避けた少年の肩に血がにじむ。振り下ろした武器が掠ったのだ。
東條カガチは、残念そうにため息をついた。追いかけてきたマリー・ストークスを振りかえる。
「……子供か。マリーちゃん、他の奴に任せよう」
「え? あ、うん……」
「まだだっ!」
少年が箒を振りまわし、魔法を唱えなおした。【ファイアストーム】が紡ぎだされ、周囲に炎の嵐が広がる。
「マリーちゃん、危ない!」
「きゃ!」
カルスノウトで魔法を弾き、マリー・ストークスを守る東條カガチ。
「仕方ないですね」
小型飛空挺で乗り付けた六本木優希がランスを掲げ、少年に突っ込んでいく。
「うわ!」
なんとか避ける少年だが、六本木優希は立て続けにチェインスマイトを繰り出す。
「私も参戦します!」
ナターシャ・ホフマンもカルスノウトを振り上げる。逃げ場を失った少年が、その場に尻もちをついた。手に持った箒が転がる。
そこに二人の武器が迫る。
「わああっ!」
「観念しやがれ!」
楽しそうに笑いながらデズモンド・バロウズがエンシャントワンドを突き付ける。【光条兵器】を突きつけ、スティド・ハルパニアも詰め寄った。
「とりあえず服を脱ぎなよ。降伏のしるしに」
「え!?」
「脱がないなら、危険物を所持しているとして痛めつけるよ?」
緑の目を光らせ、スティド・ハルパニアがさらに【光条兵器】を突き出した。
「わ、わかった! わかったから武器を離してくれよっ!」
武器が離されるとすぐに少年は制服を脱ぎ下着一枚の姿になった。怪しいものはない。
ナターシャ・ホフマンと六本木優希は少し離れて武器を掲げる。
「君の名前は?」
「どうしてこのあたりをうろうろしていたのよ?」
高月芳樹とアメリア・ストークスが問うと、少年は突き付けられた武器に目をやりながらゆっくりと口を開いた。
「俺の名前は……津田尚(つだしょう)。俺は――」
武器から身を精いっぱい引き、津田尚は叫んだ。
「ただ、くるみの魔法の練習に付き添ってきただけだ!」
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