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チェシャネコの葬儀屋 ~大切なものをなくした方へ~

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チェシャネコの葬儀屋 ~大切なものをなくした方へ~

リアクション


エピローグ

 精霊流しを終えてしばらく。
 偶然、街中まで出かけてきた音井 博季(おとい・ひろき)は、葬儀屋のあった場所で足を止めた。
「やっぱり、ないなぁ……」
 所狭しと店舗が立ち並び、葬儀屋の入る隙などないようにすら思えた。
「(けれど、確かにあった)」
 大切なものを振り返って立ち止まり、想いを護ったあの空間は今日はどこに繋がっているのだろう。


「今日はおつかれさま」
「今日はありがとう」
「精霊船は出航したよ」
「大事な相手に届くよう、祈ります」
 声をハモらせながら、チェシャネとコがぺこりとお辞儀する。
「儀式はこれでおしまい」
「あとは、あなたたちの心にかえすね」
「私たちも、私たちの場所へ還ります」
 手を繋ぎ、当然のように寄り添い、葬儀屋の兄妹は笑った。
 何もできないことを悔いながら、けれど大切に想う気持ちは止めどなく、今日も見送る。
「ごきげんよう、大切なものをなくした人たち」
「これからも、大切なものを手にし、幾度となく失う人たち」
「どうか時々想い出して」
「あなたがたの幸いと不幸は常に裏と表」
「幸せの裏には辛いこと、悲しみの裏には嬉しさが」
「僕はチェシャネ」
「私はコ」
「あなたの表裏が翻るとき、また会うことになるでしょう」
「「どうかそれまで、お元気で」」


 ――まぁきっと、どこかで胡散臭く歌でも歌っているのだろうな。

「博季ー!何してるの?行くよー」
 呼ぶ声に我に返り、博季はそこで振り返るのをやめた。
「ごめん、今行きます」
 パートナーの元に駆けていきながら、世界に喧騒が戻ってくる。
 
 ふと大切なものを想って足を止めた人たちは、そうして再び冒険の最中へと駆けだしていった。
 記憶の中に、どこか懐かしく優しいメロディを抱えながら。


担当マスターより

▼担当マスター

はまもさき

▼マスターコメント

 はい、どうもこんばんは。ごきげんよう、はまもさきです。
 執筆が遅延し、本当に申し訳ありませんでした。「チェシャネコの葬儀屋 〜大切なものを失った方へ〜」ここにようやくお届けすることができました!! お待ちいただきましたみなさま、本当にありがとうございます。
 なんとも情けないことに執筆期間中にガチンコで体を壊しまして、うっかりはまもさきが精霊船で流されるところでした。危ない、危ない。人間、アイスばかり食べていてはいけませんね。季節の変わり目でありますれば、みなさまもどうぞご自愛なさってくださいませ。

 今回のシナリオは「大切なものとその想い」について。
 まずはたくさんのご参加ありがとうございました!どの方も読みごたえのあるアクションで、一人ひとりに一冊くらい描きたい勢いという……。
 愛情だったり、憎悪だったり。けれど、どういう形をとっていても、みんな大切なものへの優しい気持ちで溢れていたので、書いている間中はまもさきも愛おしい気持ちでいられました。本当にありがとうございます。
 みなさまにも、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

 それでは今日はこの辺で。またどこかのシナリオで再会できる日を楽しみにしております。
 それまでどうかお元気で。